読書記録(2023/7)
●何もしない
ジェニー・オデル (著), Jenny Odell (著), 竹内要江 (翻訳)
noteでフォローしている方がおすすめているのを気になって読みました。カリフォルニア在住のアーティストが書いた、私たちが守るべき「注意力」についての話。SNSが発展して私たちはテックカンパニーに束の間の注意力を取り合いされるようになってしまい、その結果もとある思考力が大きく奪われていると彼女はいいます。現代に完全に背を向けることなく、自分で自分の注意力、思考力を守るためにどう意志を持って生きていくべきかを提案していて、すごく沢山考える時間を持つことが出来ました。定期的に読み返したい本です。
●罪の轍
(著) 奥田 英朗
大学が夏休みで、本を読むことが楽しいってことを改めて思い出すために小説を沢山読むことにしました。私にとって読書が楽しいと思えることが自学を続けるキーになっているような気がする。この本は礼文島(北海道の果て)で、不幸な家庭環境で生まれ育った青年が小さな罪をどんどん重ねていって殺人まで起こしてしまう経緯を青年・警察両サイドから描いています。「悪い」ってなんだろう、と考えさせてくれるきっかけになります。戦争についてメディアの報じ方は大概片方を絶対悪としがちだけど、本当は多面的な理解が必要と最近思っていて。本書はそのことを理解するのにぴったりな物語でした。
●コメンテーター
(著) 奥田 英朗
親子で大ファンの精神科医伊良部先生シリーズ。刊行されてすぐ、父が早速読んで、そして日本から本を送ってくれました。東京で暮らしているなんでもない人たちが突然精神の不調をきたして冷や汗を書きながら精神病の扉を叩くまでは、他人事と思い切れないリアルな話。
だけど、そこで伊良部先生の提案する行動療法があまりにも破天荒で神経質になりがちな私たちの気持ちのネジを緩めて笑わせてくれる。何度読んでも大好きな本です。
●象工場のハッピーエンド
(著) 村上 春樹×安西 水丸
村上ラヂオファンとしては彼の初期のエッセイも読まなくては、と思って年末に沢山日本で買ってきた本をようやくゆったり読みました。ストーリーとしてもフォーマットとしても洗練されきったたラヂオを比べると実験的にいろんな書き方を試しているし、文章に若い色気があるような気がする。こうやって人はマチュアになっていくんだなと、完全なファン目線で味わった。絵もすごくかわいくて、いつかイラストレーターの友達と文章でコラボしたら楽しそう、なんて夢も抱いた。