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佐佐木政治

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神へ捧げるソネット 抄 #12

神へ捧げるソネット 抄 #12

佐佐木 政治

詩は単に 言葉の組合せであるというよりも
より断絶の空間に 身を焼きつくす炎であった
詩はひとを 希望に誘うというよりも
より孤独をかけのぼる 破滅の深渕であった

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ミュトスの雨<神へ捧げるソネット>#9

ミュトスの雨<神へ捧げるソネット>#9

佐佐木 政治

眠りの国への門扉には 何時も印の楔が打込まれたためしがない
「死」と同系の無意識の霧が 素手でぼくらを攫ってゆく
この世で機能するもののあらいざらいを 価値の埒外に放り出して
まこと無防備なベッドが 夜毎あなたが仕掛ける闇の中へ いとも易々と持込まれる

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ミュトスの雨<神へ捧げるソネット>#8

ミュトスの雨<神へ捧げるソネット>#8

佐佐木 政治

たった十四行の畝を持つ一枚の畑の上で わたしはしばしば立ち往生する
しかし仕掛けられたあなたの美しいわなには たえず言葉のかげろうが揺らめき
仄見える幻の 色彩や薫煙の筋が 血走っている
わたしの言い尽くせない思いの丈は たえず空の鳥籠となってぶらさがるのだ

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ミュトスの雨<神へ捧げるソネット>#6

佐佐木 政治

世界中がことごとくしぐれている すでに思い残す砦もないほど
あなたの峰々から降りてくる霧が すべての距離を埋め尽くし
ひらきかける灰色の傘の中へと ぼくらを引き寄せる
あなたの灰色に煙る傘の中では ぼくらの腕時計の針が かすかに光るばかりだ

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昭和の文学青年。南信州に生きて仏文学を愛した亡き父が、麻痺の残る手で編んだ最後の詩群を読んで欲しい!

昭和の文学青年。南信州に生きて仏文学を愛した亡き父が、麻痺の残る手で編んだ最後の詩群を読んで欲しい!

七〇歳で亡くなった父は晩年、脳梗塞から認識障害を患い、一時は娘の私の顔も分からないほどでした。目の前の物体が何かは分かっても、言葉が上手く出てこない、左手の麻痺が残る。そんな中で自分の最後の詩集を編もうと、それまでの作品や手紙、資料を拾い集め、切り貼りして本当に手作りの詩集を作りました。

父は高校を卒業後、仏文学を学びたいと大学進学を希望したものの、長男の責務から東京への進学を断念。地元の印刷屋

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