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配(はい)

気を配りすぎた心は、
ひび割れた空に映る鏡のように、
揺れる光に怯えながら、
自分の影を追い求めた。

分け与えるたびに薄れていく自分、
空っぽの器を抱きしめる夜は、
他人の笑顔に溺れるように、
自らの声をかき消していた。

見えない糸に縛られて、
誰かの配下にあるような日々、
それでも自由を夢見て、
遠くへ手を伸ばす。

誰にも気づかれず
誰の目にも止まらぬ
そんな自分の存在に
息が苦しくなるのを感じながら
それでも空っぽの笑顔で

はい、心を配って
はい、気を配って
はい、時間を配って
はい、力を配って

はい、光を配って・・・

あれ、光を配って・・・
夢を配って
涙を配って

配って
配って・・・

何やってんだ僕は

ようやく過ぎ去った苦しみは、
まるで一瞬の幻影のように溶け、
青い風に包まれたその先で、
本当の自分が息をした。

はい、僕を配る必要なんてなかったんだ


「はい」シリーズ

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