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あなたの人生に書名をつけるとしたら?

今回は、一見そうは見えないのに「これ、本を書く人のために書かれているのでは!?」と思えるような、本づくりにドンピシャな一冊を読んだので、ご紹介しますね。

ちなみに、ここで対象とする「本」とは、自分の経験の集大成を過去の自分に似た人(同じ壁にぶつかっている人)に届ける本のことです。

ご紹介するのは、コピーライターである梅田悟司さんの『きみの人生に作戦名を。』(日本経済新聞出版)。

読んでみたら、「作戦名」を「書名」に変えてもいいくらい、作戦名を考えるプロセスが本のタイトル(書名)を考えるプロセスと似ていました。

『きみの人生に作戦名を。』(略して、ここでは「作戦本」と呼ばせてください)では、人生に作戦名をつけるまでのステップを、大まかに

☑️経験の棚卸しをする
☑️価値を再整理する
☑️作戦名をつける

の3段階に分けています。

本づくりになぞらえつつ、それぞれの段階でやることをご紹介していきますね。


経験の棚卸しをする

経験を本にするには、「経験」という目に見えないもの「文字」という目に見えるものに落とし込む作業が必要です。

自身にある「経験」というコンテンツを「文字」に変換して吐き出す作業ですね。

どんどん文字にしていくうちに、おそらく複数の経験を貫いているのようなものが見えてきます。

本を通じて読者に伝えるべきコアメッセージというのは、その軸のようなものです。

しかし、著者さん自身が今まで認識していた場所とは違うところに軸が通っていたり、著者さんがそれまで重視していなかった軸こそ読者に響くものだったりします。

経験をひたすら言語化していくと、そのことにふっと気づいたりするんですよね(第三者である編集者が気づくことも)。

やってきたことはバラバラでどれも長続きせず、一貫性がないように見えても、その奥にある「信念」には一貫性がある。

それを「見えない一貫性」と、作戦本では呼んでいます。

「見えない一貫性」は、自分の内面と向き合い、「内なる言葉」を丹念に紡がないと自分で認知できません。

(「内なる言葉」については、 梅田さんの『言葉にできるは武器になる。』を読むと、より理解が深まると思います)

作戦本では、経験を棚卸しして内なる言葉を見出す方法として、「9マス思考法」を紹介しています。

ただ、経験の棚卸しに関しては、言葉になっていなかった自分の「価値観」「方向性」を言語化できるものであれば、どんなフォーマットやワークシートを活用してもいいし、時系列に書き出してもいいと私は思います。

自分がアウトプットしやすい方法であれば、なんでもありです。

価値を再整理する

経験を棚卸ししたら、次に取り組むのがそれを「価値の3階層」に再整理すること。

ここでいう「価値」とは、自分が提供できる価値のことです。

【価値の3階層】
1層目:「できること」→機能的ベネフィット
2層目:「誰かの役に立てること」→情緒的ベネフィット
3層目:「社会に貢献できること」→社会的ベネフィット

これを本に応用する場合(ちょっと意訳しましたが)、次のような感じになるでしょうか。

【あなたの本の価値の3階層】
1層目「できること」
本で紹介するノウハウやメソッドによって日々の生活が便利になる、心が軽くなる、頭を整理できるなど

2層目「誰かの役に立てること」
ノウハウやメソッドを活用することで、読者がよりよい自分になれる、元気になれる、自信がつくなど

3層目「社会に貢献できること」
読者が変化することで、社会がよりよい方向へ変化する

それぞれの本で扱うテーマに沿って、より具体的な言葉に落とし込んでいくと、その本を書く意味、つくる意義の解像度がぐんと上がると思います。

この「価値の再整理」は、今後本をつくるにあたって、私もぜひやってみようと思いました。

作戦名をつける

さあ、いよいよ作戦名を考える段階まで来ました。

作戦名の考え方に関しては、ぜひ実際に作戦本を読んでいただければと思いますが、ひとつだけ触れておきたいことがあります。

著者である梅田さんは、人生の作戦名を次のように定義しています。

本書のテーマである作戦名は、内なる言葉と外に向かう言葉の中間的な位置に存在するものと捉えることもできる。

内なる言葉ほど散漫ではないが、外に向かう言葉ほど他者の理解を必要としない。

自分がどのような道を歩いていくべきかを、自ら指し示す言葉である。思考と行動の間、自分と他者の間に存在する言葉である。

中間的な位置にある中途半端な存在ではなく、中間的な位置にあるがゆえに重要な存在なのである。

『きみの人生に作戦名を。』
梅田悟司(日本経済新聞出版)

梅田さんが定義するところの「作戦名」は、あくまで自分の背中を押し、行動を促すための言葉であり、他者の賛同を得たり、他者を動かしたりすることがいちばんの目的ではありません。

自分の中で納得感が持てるかどうかがいちばん。

人生の作戦名であれば、それでいいし、それがいいと私も思います。

しかし、本の書名を考える際は、中間的な位置にある「作戦名」を「外に向かう言葉」に変換する必要があります。

なぜなら、本を出すということは、外の世界(他者)に向かって言葉を放ち、影響を与えるのが目的だから。

ただ、本づくりを進める際に「内なる言葉」から「作戦名」を紡ぎ出すプロセスをすっ飛ばして、

「今これが流行りだから」
「このテーマなら売れるから」

と、「外の世界に迎合した言葉」を書名にした、はりぼてのような本をつくるのは、ちょっと違うかなと思います。

書く人が「内なる言葉」をじっくり紡ぐプロセスはどうしても必要だし、そこからいったん中間的な位置にある「作戦名」(仮タイトルのようなもの)を導き出す必要がある。

その「作戦名」をさらに「外の世界にうまく接続できる言葉」(最終的なタイトル、書名)に変換するわけです。

たとえるなら、人生の作戦名は、

自分と接続したときに最大の電流が流れる言葉

であり、本の書名はそれをさらに

外の世界と接続したときに最大の電流が流れる言葉

に昇華させたものといえるかもしれません。

「いつか本を書きたい」という方は、ぜひこの作戦本を参考にして、「内なる言葉」「作戦名」「書名」を考えてみるといいんじゃないかと思います。

自分の商品・サービスを考えている方も、参考になる点がたくさんあるのでおすすめです。

短くとも人の心の響く言葉は、いくらでも話せ、語り尽くすことができないほどの内容を、どうにか一言でまとめようとするときに生まれるものである。

一言で言えることを、一言で言うことに意味はない。一言で言い表せないことを、一言で言おうとすることに意味があり、そのときにのみ言葉の力が最大化するのだ。

言葉はどうしても、わかりやすさ、伝わりやすさ、奇抜さ、強さといったものが判断基準になりやすい。

しかし、言葉は言葉そのもので価値が決まるものではなく、その言葉が生まれるに至った伝えたい思いや経験の総量によって価値が変わる。

『きみの人生に作戦名を。』
梅田悟司(日本経済新聞出版)

気になる方は、ぜひ手に取ってみてください!

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