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古内一絵さん『最高のアフターヌーンティーの作り方』のポルボロンをつくってみた

今回は古内一絵さんの『最高のアフターヌーンティーの作り方』に登場するお菓子を作ってみました。

書き始めたら少し長くなってしまいましたので、お時間ある方はどうぞ~☺️

あらすじ

物語の舞台は広大な庭園を持つ老舗・桜山ホテル。遠山涼音は新規採用から7年を経て、憧れのアフターヌーンティーチームに配属された。

今までにない斬新なクリスマスアフターヌーンティーを提案したい。そんな思いで作った初めての企画書は、シェフ・パティシエの達也に却下されてしまう。

落ち込む涼音だったが、桜山ホテルでお客様や先輩たちと過ごす日々のなかで”最高のアフターヌーンティー”について考え始める。


アフターヌーンティーとは

小説の題名にもなっているアフターヌーンティーは19世紀、大英帝国最盛期のビクトリア時代に始まった貴婦人たちの習慣が起源となっています。

当時、イギリス貴族の食事は1日に2回。朝食の後、夜の8時頃から始まる夕食まで何も食べることができませんでした。

特に1日中コルセットをつけていなければいけない女性たちは、男性貴族のように気軽に間食をすることも許されず空腹と共に長い午後の時間を過ごしていました。

そんな生活に耐え兼ねて第7代ベッドフォード公爵夫人、アンナ・マリアが人目を忍び、ベットルームに紅茶とお菓子を持ち込んで、秘密のお茶会を楽むようになったことがアフターヌーンティーの始まりです。

誰にも邪魔されず、甘いお菓子と紅茶を思う存分楽しむ。

アンナ・マリアのひとりだけの楽しみだったお茶会は、次第に華やかな貴婦人の社交の場へと移り変わり、アフターヌーンティーと呼ばれるようになりました。

幸せを呼ぶお菓子「ポルボロン」

物語のなかでポルボロンが登場するのは最終章。

主人公である涼音が憧れのアフターヌーンティーチームに配属されて1年が経った頃。

フェアウェルアフターヌーンティーで、”旅立ち”をイメージするお菓子を取り入れることになり選ばれたのがポルボロンでした。

ポルボロンはスペイン・アンダルシア地方の伝統菓子。修道院の厨房で生まれました。

ポルボロンという名前の由来はスペイン語の「polvo(ポルボ)」。

直訳すると「ほこり」という意味ですが、この言葉には「ほろほろと崩れる」という意味も含まれています。

材料に煎った小麦粉とアーモンドプードルを使うポルボロンは粘りのもとになるグルテンが少なく、口に入れた瞬間柔らかく溶けていくような繊細な口当たりが特徴。

口の中で溶けてしまう前に

「ポルボロン、ポルボロン、ポルボロン」

と3回唱えることができれば願い事が叶うという言い伝えがあります。

アンダルシア地方ではクリスマスや誕生日などのおめでたい日にポルボロンを食べて将来の夢の成就を占うのだそう。

そのおまじないのような唱え事と将来を占う要素が”旅立ち”にぴったりだということで選ばれたお菓子がポルボロンでした。

それでは早速、ポルボロンを作ってみまーす🙋

作り方

今回、参考にさせていただいたレシピはcottaさんのレシピです。(作り方を少しだけアレンジさせていただきました🙇)

材料

薄力粉……50g
アーモンドパウダー……50g
無塩バター……50g
粉糖……30g
*粉糖……適量

*は最後にまぶす用の粉糖です

① 薄力粉を炒る

まず薄力粉を炒る作業から。

cottaさんのレシピではオーブンで加熱していますが、今回はフライパンを使用しました。

フライパンに薄力粉を広げて弱火で炒る

ほんのりきつね色になればOKです。

取り出しておく

② 材料を混ぜる

ゴムベラを使って常温に戻した無塩バターをクリーム状にし、粉糖を入れてよく練ります。

薄力粉とふるったアーモンドパウダーを加えて全体をなじませたら、ラップに包んでぎゅっとひとまとめにしておきます。

ぽろぽろとした生地でも大丈夫

ラップに包んだ後、冷蔵庫に入れてしまうと生地が固くなり扱いにくくなってしまうので、常温で30分ほど休ませておきました。

見学

③ 型を抜き、オーブンで焼く

1㎝くらいの厚さに伸ばしたら丸い型で生地を抜き、150℃のオーブンで15分~20分ほど焼きます。(オーブンの機種によって焼き時間は調整してください)

約3cmの型で28個できた🙄

型抜きするときと焼き立ては崩れやすいので気をつけてくださいね。

焼き上がったら天板の上で少し冷ましておきます。

取り出すときにちょっと崩れてしまった子がいます探してみてください😭

最後に茶こしなどを使いさらさらと粉糖を振りかければ完成です!

ポルボロン

クリスマスやお正月などお祝いの日に食べられるポルボロン。丸くて可愛らしい見た目のクッキーです。粉糖が降り積もる雪のようでこれからの季節にもぴったり。ほろほろと溶けていく口当たりと素朴な甘さにとても幸せな気持ちになりました。

ところでポルボロンに似たお菓子といえばブール・ド・ネージュとスノーボールがありますが、ブール・ド・ネージュはポルボロンがフランスに渡って生まれたお菓子なのだそう。

ブール・ド・ネージュはフランス語で「雪の玉」。英語とフランス語の違いだけでブール・ド・ネージュとスノーボールは同じお菓子です。

念のため青柳がやらかしそうになったきなこスノーボールの記事も載せておきますね😚こちら (念のためって何だ)

古内さんが描く小説の魅力

『最高のアフタヌーンティーの作り方』は刊行されたときからずっと読みたいと思っていた作品でしたが、なかなか手に取る機会がなく今になってようやく手に取りました。

元々アフターヌーンティーに憧れがあり(ヌン活はしたことありませんいつかしてみたいです😭)読み始めてみると、クリスマスが近づく今の季節にぴったりな小説で驚きでした。

事前に公式サイトや書評ブログなどで内容を確認したわけではなかったのですが……本との巡り合いって不思議ですね。これだから読書はやめられない。

古内さんが描く小説の魅力は登場人物に対する温かい眼差しではないかと個人的に思っています。

それは例えば『マカン・マラン』シリーズの悩める登場人物たちであったり、『フラダン』の震災を経験した高校生たちであったり。

普通に生活していても心のなかにはそれぞれの思いを抱えている人たちが描かれています。

特に古内さんの作品は弱い存在の人たちへの眼差しが温かくて。

『最高のアフターヌーンティーの作り方』のなかでは非正規社員であることや識字障害ディレクシアであることによる複雑な心情も描かれています。

わたし自身、正社員よりも非正規社員だった時期のほうが長く、仕事柄非正規社員が多い環境に属していたので共感できる部分がありました。

生きづらさを感じている人たちの心に寄り添いながら、そっと背中を押してくれる。

そんな心温まるストーリーを読めば前向きな気持ちになることができますよ。

最高のアフターヌーンティーとは

この物語のなかで印象的だったのは、職場の人間関係に悩む京子がアフタヌーンティーを楽しんでいるところを同じ非正規社員である職場の同僚たちに見られてしまう場面です。

節約したお金でひとり優雅な時間を楽しんでいた京子に対し、同僚たちは「友達がいない」とか「アフターヌーンティーって社交だよね」だとか「一人ってありえない」とかいう言葉を投げつけます。

このとき涼音がアフターヌーンティーについて説明するシーンは印象的でした。彼女の物腰の柔らかさが素敵で見習いたくなります。

アフターヌーンティーは、決して社交だけのものではありません。お一人でじっくり楽しんでいただくこともまた、アフターヌーンティーの本来の在り方なんです

〈社会からの解放〉と〈社会生活を営む上での交友〉。その両方が、アフターヌーンティーの神髄である。

ご褒美であるお菓子をひとりで楽しむことも、みんなで楽しむことも、どちらもアフターヌーンティーの楽しみ方でそれぞれの楽しみ方があっていい。

この場面にはそんなメッセージが込められているような気がしました。

そして、この出来事がきっかけで涼音は最高のアフターヌーンティーについて考えることになり、涼音だけでなく涼音と対立していた達也の心も少しずつ変わっていきます。

最終章で涼音がポルボロンを食べるシーンは少し切なさも感じますが、涼音と達也のこれからをそっと応援したくなるような……そんなラストでした。

🍰

古内一絵さんの『最高のアフターヌーンティーの作り方』はお菓子やアフタヌーンティーが好きな方や日常にちょっと疲れてしまった方におすすめです。

心温まる物語で、クリスマスの季節にぴったりですので是非読んでみてくださいね。

今年はどんなクリスマスになるのかな?

最後まで読んでいただきありがとうございました🎄



アフターヌーンティーについてもっと知りたい方、ヌン活が好きな方はこちらの本もおすすめです🍰

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