真実の愛と親密圏
以前からお聞きしたかったんです。
タカーシーさんの専門とされているジェンダー哲学について。
でも昨日の日記の中で「ジェンダーともちょっと違う」と書いておられましたね。「親密圏」を研究することによってそれが紐解かれるというのも非常に興味が湧きます。
最近映画が公開されましたが、ゲイの方が自伝的に書かれた「エゴイスト」という本を読んだばかりなので、余計にジェンダーについてはこのところ考えることが多いです。
この本を読んで、著者である主人公を演じた俳優の鈴木亮平さんは、ゲイという役どころを表現するにあたり非常に悩まれたとインタビューで仰っていました。いわゆるステレオタイプのゲイ(オネェ言葉や仕草)を演じてしまうことで偏った表現になることによる偏見や反感。また、その時々で対峙する相手(カミングアウトしていない親や勤め先などに対する態度と恋人やゲイ仲間に対する態度の違いなど)によって巧みに自分という人間を演じ分けることが日常である当事者の苦しみや辛さ。そして周りへの体裁を意識することで、逆に愛する人を蔑ろにしたり傷つけたりしているかもしれないという心情を身をもって実感したと仰っていました。
これはなかなか側から見ているだけでは想像がつかないことですよね。
好きでそうなった人もいれば、気がついたら自分自身のジェンダーに違和や疑問を持って苦しみ続けている人もいる。
例えば最近はメディアにも多く登場している、いわゆる「ドラァグクイーン」という方達の、楽しそうで突き抜けた華やかな姿を見るにつけ、その裏側には想像のつかない葛藤や、人には理解されにくい経験がおありなのだろうなと想像します。
親密圏における家族としての構成についても以前から興味はありました。
2014年に公開された、映画「チョコレートドーナツ」をご存知でしょうか?
https://eiga.com/movie/79764/
実話を元にされたこの映画を観て、私は非常に考えさせられました。
母親に育てられるのが一番幸せだ、という世間一般の常識とされる考え方。たとえそこに愛があろうがなかろうが。
いえ、母親が子供を想う心はあるのでしょうが、その愛の量というかレベルの違う深い愛が、血縁関係にない間柄、つまりゲイのカップルが母親に蔑ろにされている不幸な子供を自分たちで愛情深く育てたいという希望が親密圏の関係性の中に成立していても、それを証明し正当化することの難しさ。そして法律で裁かれる一般常識的な「普通の家族の形」をよしとする結論に対する憤り。
いくらお互いに愛し合っていたとしても、そして子供への愛情がいかに深く双方の信頼関係が出来上がっていたとしても、ゲイのカップルに育てられるのは「よくないこと」と当たり前のように断言される常識という名の理不尽。そこに愛があろうがなかろうが「こうあるべき」と定義されることの違和感。それらの無情に虚無感を感じざるを得ませんでした。
誰もが涙なくしては見られないラストシーンは、「人間にとっての幸せとは」というシンプルな問いを強く意識させられました。そしてジェンダーに対する偏見や、親密圏という繋がりを認識、理解することの重要性など、いろんな角度から考えさせられることがたくさんありました。
大好きな映画で、初見は映画館でしたが、今は配信サービスがありますから何度も観ることができます。この映画を繰り返し観ることで、私の中でクィアの世界の純粋で美しい愛情を描いてみたいという思いが自然と湧き上がりました。
真実の愛とは。
そこには性別や年齢、その他のあらゆる“壁”は何も存在しないし、そうあるべきだという思いは私の中に昔からあります。それはこの世に存在する一番ピュアで曇りのない、打算やエゴや嘘のない、真実の愛であろうと想像します。それを文章という形にすることできっと私の根底にある、生きる目的である「自由」を重ねて表現したかったのだろうと思います。
同性愛の物語は男女の恋愛と何が違うのか。
何も違わないし、人と人とが愛し合うこと以外に何も重要なことなどないと私は思っています。
それを“クィア”という、偏見を伴った表現で言葉にすることは、マイノリティに対するマジョリティの単なるエゴに過ぎないのかもしれません。
考えると結論の出ない迷路に入り込んでしまうので、今日のところはこの辺で。
タカーシーさんのように宇宙の果てまで飛んでいってしまいそうですww
この映画「チョコレートドーナツ」を観てインスパイアされた掌編小説と連載小説を過去に書いたことがありますのでここに貼っておきます。
稚拙な表現でお恥ずかしいのですが、私なりの切なくも愛しい「真実の愛」を描きました。よろしければ読んでいただけると幸いです。
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#交換日記 *ジェンダー *哲学 *親密圏 *クィア *偏見 *愛 *とは
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