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禅とアートの親和性はアリ? 神勝寺 禅と庭のミュージアム【名和晃平・藤森照信】 広島県福山市
古刹と呼ばれるにはどれぐらいの年月が必要なのでしょうか。紛れもない古刹、比叡山延暦寺や高野山金剛峯寺の歴史は約1,200年。また鎌倉や室町時代の創建寺院も古刹でしょうか。大切なのは長く続いているということ。その一方で「檀家さん減少による寺院経営の苦境」というニュースも近頃は耳にします。
一部の雑誌で取り上げられるようになった、テーマパークのようなお寺があります。瀬戸内海に面した地方都市の郊外にあり、比較的歴史の浅いお寺です。単なる客寄せなのか、それとも大真面目なのか。行ってみないと分かりません!
広島県福山市の人口は456,000人、県内第2の大きな都市。工業の町といった印象(地理の授業で叩き込まれた瀬戸内海工業地域の1つ)。目的地は福山駅から南西に10km程の距離。東に鞆の浦、西に尾道の中間あたりにあって、福山市街地とは違ってのんびりした山の中。
天心山 神勝寺
パンフレットによると「この地で長年にわたって確固たる活動を重ねてきた天心山神勝寺・・・」とあります。そして「神原秀夫(1916-1977)を開基、益州宗進を開山に1965年に臨済宗建仁寺派の寺院として建立」と。
昭和とは感覚的にはけっこう新しいお寺です。寺院を建立するのは財力も含め上級の公家や大名、つまりは江戸時代以前の話と思っていましたが。
神原家は福山をベースに海運、造船業を手掛けた地域の名士。現在は商社やエネルギー、ホテルと幅広く事業展開している常石グループに。地図を眺めると福山市の沿岸にかけてグループ企業の名前があちこちに見えます(なかなかの面積)。
お寺には修行道場もありますが、白隠さんの書画を展示する美術館や現代アーティストによるインスタレーション施設、食事に喫茶、禅体験(日帰り、宿泊)となんだかテーマパークのよう。パンフには浴室も写真付きで紹介されていますが、禅宗では食事や入浴も大切な修行の場です。インバウンドの方々の興味も引くような構成です(広島市周辺はインバウンドを多く見かけます)。
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広島県福山市沼隈91
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受付の建物は、多分あの人の設計じゃないかなと思いつつ先を急ぎます。インスタレーションの開始時間の関係で。
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松堂から少し斜面を登って橋を渡ります。
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橋を渡るとなんとも表現しにくい建物が。インスタレーションの施設はガレ場に浮いています。
洸庭【名和晃平】
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地面から浮いていて、まあ宇宙船ですね。舟をモチーフとした形状らしい。もしかすると宗教は違いますが、ノアの箱舟的な。
冷静な目でじーっと見ると色も形もフィナンシェか?(違いがよく分かりませんが、マドレーヌみたいなヤツ)
洸庭は現代アーティストの名和晃平(1975- )さんとその仲間たち(Sandwich)による作品。
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入口へは橋から。飛び立ちそうな雰囲気は否定できない。
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橋の下にトイレが隠されています。教えてもらわないと気がつかない人も。
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全身こけら葺き。経年変化はどうなるのでしょう、興味がわきます。
中に入ると真っ暗。座席に座ってしばし待ちます。気分が悪くなった方は退出可能と説明があります。
チャプンチャプンと水の音がして、水面に光がゆらゆら。視覚はほぼ遮断されています。ちょっと時間が長ーいかなと思っていると、耐えられなかったのか1人退場。よく分からないというのが率直な印象(笑)
禅の修行と言われれば「そうかもね」と思えますが、やはり何かのアトラクション的。禅といえば自身の内側に意識を向けるイメージなのですが、外側からの恣意的な刺激により何かを感じるのも禅なのでしょうか?
お寺は洸庭をアートパビリオンと表現しています。
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一段落ついたら、広い境内を進みます。
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千利休ゆかりの一畳台目茶室を中村昌生さんの設計で復元。
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あまりにも広すぎる枯山水。
そして白隠の作品群を展示する荘厳堂へ
荘厳とは「智慧や福徳などの善美をもって、身やその住む国土を飾ること」。飾るものはいわゆる金銀のようなモノではありません。
白隠さん
白隠慧鶴(1686-1769)は臨済宗のお坊さん。42才で悟りを得て精力的に布教。多くの書画は布教の過程で生まれています。迫力あるものやユーモラスな作品も、布教のために真剣に描かれたもの。民衆に教えを分かりやすく説くための手段だそうです。
そして形骸化してしまったもの(一部の禅宗のしきたり等)への批判的精神が強かったそうです。臨済宗中興の祖と呼ばれています。
荘厳堂に所蔵される白隠作品は約200点
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神勝寺の白隠コレクションは充実していました。
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こういうテイストも
ちなみに常設ではありませんが、白隠のまとまったコレクション(約300点)は永青文庫(東京都文京区)でも見ることができます(大燈国師像や虚堂智愚像など)。
境内に戻ります。
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松堂 【藤森照信】
設計はやはりあの人藤森照信(1946- )。プリミティブで手工業的な建築の人。屋根のてっぺんによく木が生えています。
藤森建築3選
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社務所の松堂は、このあたりが有数のアカマツの産地で禅のイメージと合うことから松を建物のテーマにしています。柱は見ての通りで工業化や規格化とは無縁。
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比較的新しいお寺に名僧の水墨画や書。そして現代のアーティストによる凝ったしかけ。それぞれの相性が良いかどうかを判断するには、もう少し時間が必要でしょう。建物も古色蒼然となってこそでしょうか。