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まいにち易経_0112【真理を見抜く羅針盤:易経の奥義を解き明かす】その言曲にして中り、その事肆りて隠る[繋辞下伝:第六章]

夫易。彰往而察來。而微顯闡幽。開而當名。辨物正言。斷辭則備矣。其稱名也小。其取類也大。其旨遠。其辭文。其言曲而中。其事肆而隱。因貳以濟民行。以明失得之報。

れ易は、おうあきらかにしてらいを察す。けんにしてゆうあきらかにす。開いて名に当て、物を弁じげんを正すこと、辞に断ずれば備われり。其の名を称するや小、其の類を取るや大。其の旨は遠く、其の辞はかざる。其の言はつぶさにしてあたり、其の事はほしいままにしてかくる。りて以て民の行いを済い、以て失得の報を明らかにす。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

易経は、約3000年前の中国で生まれた古典で、自然や人間の営みの中に潜む法則を説いた書物です。64の異なる状況を示す卦があり、それぞれが異なる人生の局面を象徴しています。その中でも特に重要なのは、「変化」という概念です。世界は常に変化し、私たちもまたその変化に対応していかなければならない。易経は、そうした変化の中でどのように選択し、行動すべきかを示してくれる道しるべなのです。

ここで一つ例え話をしましょう。皆さんが船のキャプテンだと想像してください。海は時に穏やかで、時に荒れ狂います。その変化を予測し、適切に舵を取ることがキャプテンの役目です。しかし、海図を持たずに航海に出れば、どれだけ経験豊富なキャプテンでも、嵐の中で迷子になってしまうでしょう。易経は、まさにその海図のようなものです。状況がどう変わろうとも、進むべき道を示してくれるのです。

易経の中には、奥深い真理が隠れています。これは、表面的な現象だけを見て判断してはならない、という教えでもあります。例えば、あるビジネスの状況が悪化しているとしましょう。多くの人は、この状況をただの失敗と捉えがちです。しかし、易経の視点から見ると、この失敗の裏には成功への兆しが隠れているかもしれません。重要なのは、その兆しを見逃さずに、どのように次の一手を打つかです。

これに関連して、かつて私が経営していた会社での経験をお話ししましょう。当時、我々の業界は激しい変革期にありました。新しい技術が次々と登場し、既存のビジネスモデルが次第に陳腐化していく中で、私たちは困難な状況に直面していました。多くの社員が不安を抱え、会社全体が動揺していた時期でした。しかし、私は易経を信じ、その教えを実践することにしました。

まず、状況を冷静に分析し、その変化の本質を見極めました。そして、あえてリスクを取り、新しいビジネスモデルへの移行を決断しました。その結果、初めは不安視されていたその変化が、後には大きな成功をもたらし、会社を再び成長軌道に乗せることができました。もし、その時に変化を恐れて旧態依然とした方法に固執していたら、おそらく会社は衰退の一途をたどっていたでしょう。

易経の教えを実践することで、大切なのは「柔軟性」と「洞察力」です。状況がどう変わろうとも、それに適応し、新たな可能性を見出す柔軟な姿勢。そして、表面的な現象の裏に潜む真理を見抜く洞察力。これらがあれば、どのような困難な状況に直面しても、適切な判断を下し、進むべき道を見つけ出すことができるでしょう。

もう一つ、興味深い話をしましょう。アメリカの大企業、アップル社の創業者であるスティーブ・ジョブズも、実は易経の教えに共感していたと言われています。彼は、常に変化を恐れず、革新的な製品を世に送り出してきました。その背景には、易経の「変化を受け入れ、それを力に変える」という思想があったのではないかと私は考えています。ジョブズが手掛けた製品の数々は、まさにその象徴と言えるでしょう。

さて、話を元に戻しましょう。易経は、ただの古い教えではありません。現代のビジネスやリーダーシップにも十分に通用する普遍的な知恵が詰まっています。だからこそ、皆さんにはこの教えを自分のものとして取り入れ、日々の判断や行動に活かしてほしいと心から思います。

最後に、易経を読む際に心に留めておいてほしいことがあります。それは、「変化はチャンスである」ということです。変化を恐れるのではなく、むしろその中に新たな可能性を見つけ出し、自分自身を成長させる機会と捉えてください。皆さんはこれから、様々な困難や試練に直面するでしょう。しかし、その時こそが成長のチャンスであり、リーダーとしての真価が問われる瞬間です。

どうか、易経の教えを心に刻み、どんな状況においても冷静に、そして勇気を持って前に進んでください。皆さんが未来のリーダーとして、輝かしい道を歩んでいくことを、私は心から期待しています。


参考出典

奥義を知る
易経の言葉は原理原則の幹から多様に伸びる枝のようである。そこに書かれていることは状況の変化に応じるため紆余曲折するが、内容は的を射ている。また、あれこれと物事をいい表しているが、その裏には奥義が隠れている。
現象の裏側に潜む真理に気づき、正しい選択をし、よりよき人生を生きるための羅針盤とすることに易経を読む意味がある。

易経一日一言/竹村亞希子

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