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まいにち易経_0521【動に生ずる】吉凶悔吝とは、動に生ずる者なり。[繋辞下伝:第一章]

吉凶悔吝者。生乎動者也。剛柔者。立本者也。變通者。趣時者也。
吉凶悔吝(きつきょうかいりん)は、動より生ずる者なり。剛柔(ごうじゅう)は、本(もと)を立つる者なり、変通(へんつう)は、時に趣く者なり。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

人生には必ず良いことと悪いことがあります。幸せな時期もあれば、苦しい時期もあるでしょう。しかし災いや幸運は天から降ってくるものではありません。これは、自分の行動や態度によって決まるものです。自分の考え方、行動・やり方次第で良いことも悪いことも起こるということです。

例えば、あなたが仕事で良い結果を出して上司に褒められたとします。それで自分がすごいと思い込み、他の人の意見を聞かなくなるとどうなるでしょう?周りの人たちは「この人、偉そうで嫌だな」と感じ始め、協力してくれなくなります。その結果、次の仕事がうまくいかなくなることがあります。

仕事がうまくいかなくなったとき、「あの時、ちゃんと他の人の意見を聞いていればよかった」と後悔することになります。でも、その時点で後悔しても遅いのです。ですから、災いも幸運も、自分の行動が原因なんです。良いことが起こるか、悪いことが起こるかは、あなたがどう行動するかで決まります。自分自身の行動が招いた結果なのです。

例えば、会社で出世して役職につくと、プライドから上司の忠告を聞かなくなり、そのためにミスを重ねて失脚してしまう。そして、ようやく後悔の念に駆られる。このように、幸運と不運、後悔と慢心は、全て自分の行動に由来するのです。易経ではこれを「吉凶悔吝(きっきょうかいりん)」と表現しています。吉凶とは幸不幸のこと、悔吝とは後悔と慢心のことを指します。この言葉は、人間の営みや行動が生み出す結果を指し示しているのです。

ここで、少し例え話をしましょう。
アメリカの著名な企業家、スティーブ・ジョブズの話を聞いたことがあるでしょうか。彼は一度、自分が創業した会社を追放されるという経験をしました。しかし、その経験を通じて彼は多くを学び、後にAppleに復帰して素晴らしい成果を上げました。彼の成功の背景には、失敗から学び、それを次の行動に活かしたことがあるのです。
このように、私たちの行動が未来の吉凶を決定するのです。ですから、常に自分の行動に責任を持ち、誠実であることが大切です。

さて、それでは人生でうまくいくためにはどうすればよいのでしょうか。易経はその答えを「剛柔」と「変通」の二つの言葉で教えてくれています。

まず「剛柔」について説明します。
剛とは強く固い性質のこと、柔とはそれに対して柔らかく弾力のある性質のことを指します。人生には、しっかりとした原理原則が必要です。これが剛です。一方で、状況に応じて柔軟に対応できる力も求められます。これが柔です。剛と柔を適切に使い分けることが成功への鍵なのです。
例えば、会社経営においては、経営理念や倫理観といった揺るぎない原則を持つ必要があります。しかし一方で、時代の変化に合わせて柔軟に対応できる戦略も肝心です。堅物すぎても、風に靡きすぎても良くありません。剛と柔のバランスが大切なのです。

次に、「変通」についてです。
これは時宜を得た変化や機転を意味します。ある一定の原理原則を守りながらも、常に機会や好機をとらえ、柔軟に対応することが大切だということです。例えば、会社経営者が新しいビジネスチャンスを見逃さずにとらえることができれば、大きく飛躍できるチャンスがあるかもしれません。一方、環境の変化に気づかず硬直化すれば、どんなに優れた企業でも衰退の道を辿ってしまいます。変化に通じ、機会をとらえることが重要なのです。
このように、状況に応じて変化し適応することの重要性を説いています。時代や環境は常に変わります。リーダーとして重要なのは、その変化にどう対応するかです。

ここでもう一つ、歴史的な例を挙げましょう。
ナポレオン・ボナパルトは、戦場での状況変化に非常に敏感でした。彼は敵の動きを素早く察知し、柔軟に戦術を変えることで多くの戦いに勝利しました。彼の成功は、まさに「変通」を体現したものと言えるでしょう。

昔からの格言に「賢者は常に変化に通ずる」というものがあります。この言葉の意味するところは、まさに「変通」なのです。世の中は刻一刻と変化し続けています。その変化に気づき、うまく乗り移れる人こそが成功を収められるのです。このように、易経の教えは人生の原理原則を分かりやすく示してくれています。「剛柔」と「変通」、つまり原則を守りつつ柔軟に変化に対応することが、人生を有意義に過ごすコツなのだと言えるでしょう。

以上を踏まえて、リーダーとして成功するためには、自分の行動に責任を持ち、強さと柔軟さをバランスよく持ち、変化に対応する能力が必要です。これらの教えは、易経から学べる重要なポイントです。皆さんも、この知識を活かして、将来のリーダーとして大いに活躍してほしいと思います。

最後に、易経の言葉をもう一度お伝えします。「吉凶悔吝は、動より生ずる者なり」。自分の行動が未来を作ることを忘れずに、日々の行動に責任を持ってください。ありがとうございました。

(了)


参考出典

禍や幸福の吉凶は、天から降ってくるかのように錯覚している人がいるかもしれないが、決してそうではない。地位を得ると慢心して諫言(かんげん)を厭がり(吝)、地位を失い(凶)、ようやく後悔する(悔)。
吉凶悔吝は自らの行動から生ずるものである。

易経一日一言/竹村亞希子

易の卦爻辞に見える吉、凶、悔、吝といった判断は、天下の人事の動きから生ずる『(周易折中』)。
人事の動きはすなわち卦爻の動きである。剛爻と柔爻とは、それぞれ九六の定まった数、定まった形を有し、卦の基本を成すものである。けれどもそれはいつまでも固定してはいない。剛が柔に、柔が剛に、変化し流通するが、それも各々が動くべき宜しき時に即応してのことである。人が然るべき時に乗じて豹変するのも、これに倣う(清の王夫之)。

易(朝日選書)/本田濟

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