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まいにち易経_0225【王道を歩む者の未来図】憂うるなかれ。日中に宜しとは、宜しく天下を照らすべしとなり。[55䷶雷火豊:卦辞]

豐。亨。王假之。勿憂。宜日中。

豊は、亨る。王これにいたる。憂うるなかれ。日中にっちゅうよろし。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

雷火豊らいかほう」という言葉を聞いて、どんなイメージが浮かびますか? 雷が鳴り、火が燃え盛る様子を想像されたかもしれませんね。実は、この卦は「勢いが豊かな時」を表しているのです。
皆さんは今、人生の春を迎えています。可能性に満ち溢れ、これから大きく飛躍しようとしている時期でしょう。そんな皆さんに、この「雷火豊」の教えは、とても大切なメッセージを投げかけています。

まず、覚えておいていただきたいのは、「豊かな時こそ、衰える時のことを考えるのが賢明だ」ということです。これは、ビジネスの世界でもよく言われることですね。例えば、スマートフォンの世界を見てみましょう。かつて、ノキアという会社が携帯電話市場を独占していました。しかし、スマートフォンの台頭により、あっという間にその地位を失ってしまいました。
ここで注意していただきたいのは、「衰える時のことを考える」というのは、単に悲観的になるということではありません。むしろ、現在の成功に慢心せず、常に新しい可能性を探り、変化に対応する準備をしておくということなのです。

次に、「日中に宜し」という言葉について考えてみましょう。これは、「陰で動いたり、裏で策略を練ったりするのではなく、すべてを明るみに出して行動しなさい」という意味です。
皆さんは、組織の中でリーダーシップを発揮していく立場になっていくでしょう。そんな時、この「日中に宜し」の教えを思い出してください。透明性を保ち、オープンなコミュニケーションを心がけることが、真のリーダーシップにつながるのです。

古代中国の伝説的な帝王、堯帝という方がいました。彼は、自分の子供ではなく、徳のあるという人物に帝位を譲りました。これは、まさに「日中に宜し」の精神を体現した行為と言えるでしょう。自分の利益だけでなく、国全体の利益を考えて行動したのです。

さて、この「雷火豊」の教えの中で、最も重要なポイントは「すべてを成し遂げながらも、地位の衰退や謀反を憂いて不明を働き、滅びた王は多い」という部分です。これは、成功を収めた後の落とし穴について警告しています。成功すればするほど、それを失うことへの不安が大きくなります。その不安から、疑心暗鬼になったり、権力にしがみついたりする。そんな行動が、かえって自分の地位を危うくしてしまうのです。

歴史上の例を挙げてみましょう。ローマ帝国の初代皇帝アウグストゥスは、長期にわたって安定した統治を行いました。しかし、その後継者たちの多くは、権力への執着から残虐な行為を繰り返し、最終的に暗殺されるなどして、短命に終わっています。

ビジネスの世界でも同じことが言えます。例えば、アップルの共同創業者であるスティーブ・ジョブズは、一度は自身が作り上げた会社から追放されました。しかし、彼は自分を見つめ直し、新たな視点を得て再びアップルに戻り、会社を大きく成長させました。これは、「雷火豊」の教えを体現した好例と言えるでしょう。

では、私たちはどのように行動すべきなのでしょうか?

まず、成功している時こそ、謙虚さを忘れないことです。自分の成功が永遠に続くと思わず、常に新しいことを学び、成長し続ける姿勢が大切です。
次に、オープンで透明性のある行動を心がけることです。隠し立てをせず、誠実に行動することで、周りの人々からの信頼を得ることができます。
そして、長期的な視点を持つことです。目の前の利益だけでなく、将来にわたって持続可能な成功を目指すことが重要です。
最後に、自分自身と向き合う勇気を持つことです。時には、自分の弱点や間違いを認める必要があります。それが、真の強さにつながるのです。

皆さん、人生には浮き沈みがあります。今、皆さんは上昇気流に乗っているかもしれません。しかし、いつかは必ず下降局面が訪れます。その時に慌てないよう、今のうちから準備をしておくことが大切なのです。
ただし、それは決して悲観的になることではありません。むしろ、どんな状況でも対応できる強さと柔軟性を身につけるということなのです。

「雷火豊」の教えは、まさにこのことを私たちに伝えています。豊かな時こそ、謙虚さを忘れず、誠実に行動し、将来を見据えて準備をする。そうすることで、どんな時代の変化にも対応できる真のリーダーになれるのです。


参考出典

王道を往く
雷火豊の卦は勢い豊かな時を説く。豊かな時に衰時を考えることは明知である。しかし、いたずらに憂いてはならない。
「日中に宜し」とは、陰で動いたりはかりごとを働いたりせずに、日の下に明らかにすること。天下のすべてを明るく照らすことは、王の王たるものが到達できる王道である。
すべてを成し遂げながら、地位の衰退や謀反を憂いて不明を働き、滅びた王は多い。そうならないように、という教訓である。

易経一日一言/竹村亞希子

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