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まいにち易経_1111【柔順と自己の確立:巽為風に学ぶリーダーの資質】巽いて牀下に在り。その資斧を喪う。[57䷸巽為風:上九]

上九。巽在牀下。喪其資斧。貞凶。 象曰。巽在牀下。上窮也。喪其資斧。正乎凶也。

上九は、したがって牀下しょうかに在り。其の資斧しふを喪う。貞に凶。 象に曰く、巽って牀下にあり、上に窮まるなり。其の資斧を喪う、凶なるに正しきなり。

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未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

そん」という言葉は「したがう」という意味を持っています。つまり、他人や状況に対して順応すること、柔順であることを示しています。しかし、上九の段階では、その「順応」が行き過ぎてしまう危険性があるのです。順応することは時に大切ですが、度を超えてしまうと、結果的に自分を見失ってしまうことになりかねません。

具体的な例え話として、「寝台の下に伏す」という表現があります。これは、あまりにも過剰に自分を低くし、他人に従おうとする行為を指しています。寝台の下に伏すような姿勢は、もはや謙虚さを超えて、自己を卑下しすぎている状態です。これが何を引き起こすかというと、自分の判断力や資質を失い、最終的には自分という存在そのものを失ってしまう可能性があるということです。

ここで皆さんに考えてほしいのは、「順応すること」と「自己を捨てること」の違いです。リーダーとして、他人の意見に耳を傾け、柔軟に対応することは必要不可欠です。しかし、その一方で、自分の軸をしっかりと持ち、必要な時には自分の意見や信念を貫くことも大切です。媚びへつらうことで、一時的に状況がうまくいくかもしれませんが、長期的には必ずしも良い結果を生むわけではありません。

ここで少し、歴史的なエピソードを交えましょう。皆さんは、太平洋戦争中の日本海軍の「山本五十六」という人物をご存知でしょうか?山本五十六は、海軍の中でも特に柔軟な考えを持ち、アメリカとの戦争に反対していました。しかし、当時の政治的圧力や軍部の強硬な姿勢に屈してしまい、最終的にはアメリカとの戦争を主導する立場に追い込まれました。山本は戦局が不利になることを予見していましたが、組織の中で自分の意見を貫くことができなかったのです。これが、自己の判断を放棄してしまった一例と言えるでしょう。

もちろん、リーダーが常に自分の意見を押し通すべきだとは言いません。しかし、重要なのは、何が正しいかをしっかりと見極め、その上で行動することです。自分の意見が正しいと確信したならば、それを曲げることなく進む勇気も必要です。これが、巽為風の上九が示す教えの一つです。

また、巽為風の卦には「資斧しふ」という言葉が出てきます。これは、財産や身を守るための武器を意味しています。リーダーとして、何が自分を守る武器になるのかを理解し、それを大切にすることが求められます。ここで言う武器とは、必ずしも物理的なものだけではなく、知識や経験、そして信念も含まれます。これらをしっかりと持ち、正しい判断を下すための基盤とすることが、リーダーとしての資質を磨くことにつながるでしょう。

巽為風の上九は、柔順であることの重要性を説きつつも、その柔順さが行き過ぎてしまうと、自己を失う危険性があることを教えてくれます。これはリーダーとして非常に重要な教訓です。柔順さと自己の確立、そのバランスをいかに保つかが、リーダーとしての成功を左右するのです。


参考出典

媚び諂い
寝台の下に伏すように身を低くして従うのは行き過ぎであり、へつらいになる。そのように諂い過ぎては、自分の資質と物事を判断する能力をなくし、自分というものを失ってしまう。
したがう」は柔順を表す。「しょう」は寝台。「資斧しふ」は財産と身を守り、物を割る武器。
この巽為風は、順う時、遜る時を説いている卦。

易経一日一言/竹村亞希子

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