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まいにち易経_0811【トライアルアンド エラー】或いは躍りて淵に在りとは、自ら試みるなり。[01乾為天/文言伝:第三節(時と位)]

或躍在淵、自試也。

あるいは躍りて淵に在りとは、みずから試みるなり。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

さて、今日お話しする「乾為天」の教えは、リーダーとしての成長と行動について、とても示唆に富んだものです。簡単に言えば、「時には跳躍し、時には内省する」ということです。これはどういうことでしょうか?

人生というのは、常に前進だけではありません。時には大きく飛躍する時期もあれば、立ち止まって自分を見つめ直す時期もあるのです。これは、ちょうど潮の満ち引きのようなものかもしれません。潮が満ちる時には、波に乗って大きく前進できます。でも、引き潮の時には、一度立ち止まって次の波を待つ必要があります。

この「跳躍」と「内省」のバランスが、リーダーにとって非常に重要なのです。常に前進ばかりしていては、自分の行動が正しいのかどうか、見失ってしまうかもしれません。かといって、内省ばかりしていては、チャンスを逃してしまうかもしれません。

ここで重要なのが「試行」という考え方です。「試行」とは、自分の能力が少し足りないかもしれないと思うことにも、敢えて挑戦してみるということです。これは、ちょうど料理人が新しいレシピに挑戦するようなものです。最初から完璧な料理ができるわけではありません。何度も試作を重ね、味を調整し、最終的に素晴らしい一皿が完成するのです。

リーダーとしての成長も同じです。最初から完璧なリーダーになることはできません。むしろ、多少無理だと思うことにも挑戦し、そこから学んでいくことが大切なのです。

皆さんも、これから多くの挑戦の機会があるでしょう。その時、「自分にはまだ早いかも」と思うかもしれません。しかし、そう思った時こそ、挑戦のチャンスかもしれないのです。

ただし、ここで注意してほしいのは、闇雲に挑戦すればいいというわけではないということです。挑戦の後には必ず「省みる」時間が必要です。自分の行動を振り返り、何が良かったか、何が足りなかったかを冷静に分析することが大切です。

これは、スポーツ選手が試合後にビデオを見て自分のプレーを分析するのと同じです。良かった点は伸ばし、悪かった点は改善する。そうすることで、次の挑戦に向けてより強くなれるのです。

リーダーとしての成長も同じです。挑戦し、省み、また挑戦する。このサイクルを繰り返すことで、少しずつですが確実に成長していくことができるのです。

ここで、もう一つ重要なポイントがあります。
それは、「自分を試験・評価する」ということです。これは、他人からの評価を待つのではなく、自分自身で自分を評価するということです。

これは、ちょうど学校のテストのようなものかもしれません。テストを受けた後、答案を見直して自己採点をします。そして、どこが間違っていたか、なぜ間違えたのかを分析します。この過程が、実は学習において非常に重要なのです。

同じように、リーダーとしての行動も、自分自身で評価することが大切です。「今日の判断は正しかっただろうか?」「チームメンバーとのコミュニケーションは適切だっただろうか?」など、常に自問自答することが成長につながります。

しかし、自己評価には落とし穴もあります。人間は往々にして、自分に甘くなりがちです。ですので、時には信頼できる人に意見を求めることも大切です。メンターや先輩、同僚など、客観的な意見を聞くことで、自分では気づかなかった課題が見えてくることもあるでしょう。

さて、ここまでのお話をまとめてみましょう。易経の教えは、リーダーとしての成長に非常に示唆に富んでいます。

  1. 時には大きく跳躍し、時には深く内省する

  2. 自分の能力以上と思えることにも挑戦してみる

  3. 挑戦後は必ず振り返りの時間を持つ

  4. 自分自身で自分を評価する

  5. 必要に応じて他者の意見も聞く

これらのポイントを意識しながら行動することで、皆さんはより優れたリーダーへと成長していくことができるでしょう。

最後に、私からのアドバイスを一つ。リーダーシップの成長には時間がかかります。一朝一夕には身につきません。しかし、日々の小さな挑戦と省察の積み重ねが、やがて大きな成長につながるのです。

皆さんには、焦らず、でも着実に成長していってほしいと思います。時には大きく跳躍し、時には立ち止まって省みる。そのバランスを取りながら、自分なりのリーダーシップスタイルを見つけていってください。

そして、失敗を恐れないでください。失敗は成功の母と言いますが、まさにその通りです。失敗から学ぶことこそ、最も価値ある学びなのです。


参考出典

試行の時
ある時は跳躍し、ある時は深く内省して自らを試みる。
目的達成のためには、必ず「試行」が必要である。「試行」とは、多少力足らずと思うことにも取り組んでみること。自分を試し、ここまでやって来たことが間違っていなかったかと省みる。それによって自分自身を試験・評価し、足りないところを補っていくのである。

易経一日一言/竹村亞希子

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