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まいにち易経_0121【貧者の一燈:質素倹約で未来を拓け】二簋をもって亨るべし。[41䷨山澤損:卦辞]

損。有孚。元吉。无咎。可貞。利有攸往。曷之用。二簋可用享。

損は、孚あれば、元吉げんきつにして咎なし。ていにすべくして、往くところあるに利あり。なにをかこれ用いん。二簋にきを用てまつるべし。

「損卦」は、下を減らして上を増やす形で、人民の富を減らし君主の収入を増やすことを示している。ただし、この「損」とは単なる損失ではなく、国を治めるために必要な減少であり、損失を惜しまずに喜んで受け入れることが重要だ。たとえば、税金を納めることや、困っている人に私財を提供することがその例。
『孚あり』とは誠意があり信頼されることを意味し、損する側が納得するように行われれば、結果的に大きな善となって吉となる。また、損をする行為が持続可能であり、誠意があれば問題なく前進しても利益をもたらすとされる。
なにをかこれ用いん云々……損ということの特殊な例、礼を損す場合を示す。
」は竹でできた皿で、神に供える食べ物を入れるための祭祀用の器。「享」は、神に供物を献げることを指している。
礼を損するここでは「孚(まこと、誠実さ)」があれば、供物の量や形式が減らされても神に対する敬意は失われないとされている。具体的には、本来は八つの供物を用いるのが正しいが、二つに減らしても、誠実な心がこもっていれば、神はその敬意を受け入れるということ。
この考え方は、「貧者の一燈」という有名な言葉で表される。貧しい人が持っている少ない財産から精一杯の捧げ物をすることで、その真心が尊ばれるという意味。つまり、供物の量や形は重要だが、それ以上に大切なのは心のこもった誠意であるということ。

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「山澤損」という言葉を聞いて、どんなイメージが浮かぶでしょうか? 「損をする」というと、あまり良いイメージはないかもしれませんね。でも、実はこの「損」には深い意味があるのです。
この卦が教えてくれているのは、「質素倹約の努力」の大切さです。つまり、今は我慢をして、将来のために備えるということです。

具体的に説明しましょう。昔、祭祀という儀式で使う「」という器がありました。通常は8つ使うところを、2つに減らすというのです。これは、最も大切なものさえも減らすほどの覚悟で質素倹約に努めなさい、ということを表しています。
これを現代の私たちの生活に置き換えてみましょう。例えば、新社会人の皆さんが、初任給をもらったとします。「やった!これで好きなものが買える!」と思うかもしれません。でも、その時に「山澤損」の教えを思い出してください。

初任給の大部分を貯金に回す。趣味や娯楽にはほんの少しだけ使う。そんな生活を始めてみるのはどうでしょうか。最初は辛いかもしれません。でも、これこそが「質素倹約の努力」なのです。

さて、ここで皆さんに考えていただきたいことがあります。「損して得を取る」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? この言葉の意味を、「山澤損」の観点から考えてみましょう。
例えば、会社でプロジェクトを任されたとします。そのプロジェクトを成功させるために、休日返上で働くかもしれません。自分の時間を犠牲にして、睡眠時間を削って頑張るかもしれません。これは一見すると「損」をしているように見えます。
でも、そのプロジェクトが成功すれば、会社に大きな利益をもたらすでしょう。そして、その結果として自分自身も評価され、昇進や昇給につながるかもしれません。これこそが「損して得を取る」ということなのです。

ここで、皆さんに問いかけてみたいと思います。
「今の自分にとって、最も大切なものは何でしょうか?」
「それを一時的に手放すことができますか?」
「そうすることで、将来どんな利益が得られると思いますか?」

これらの質問に答えることは、簡単ではないかもしれません。でも、こういった問いを自分に投げかけ、真剡に考えることが、「山澤損」の教えを実践する第一歩になるのです。
この「山澤損」の教えは、単に個人の利益のためだけのものではないということを強調しておきたいと思います。社会全体、あるいは地球規模で考えたとき、この教えはより重要な意味を持ちます。

例えば、環境問題を考えてみましょう。私たちが今、便利さや快適さを少し我慢することで、将来の地球環境を守ることができるかもしれません。これも「山澤損」の考え方と言えるでしょう。
また、社会貢献活動においても同様です。今、自分の時間やお金を社会のために使うことは、一見すると「損」のように見えるかもしれません。でも、そうすることで社会全体が良くなれば、結果的に自分自身も住みやすい社会で生きることができるのです。

このように、「山澤損」の教えは、個人のレベルから社会全体のレベルまで、幅広く適用できる深い智慧なのです。これからの人生で、困難に直面することもあるでしょう。そんな時は、この「山澤損」の教えを思い出してください。今は苦しくても、それが将来の大きな利益につながるかもしれません。そう信じて、粘り強く頑張ってください。

そして、成功したときには、今度は自分が「与える側」になることも忘れないでください。自分の経験や知恵を、次の世代に伝えていくのです。それこそが、真の「リーダー」の役割だと私は考えています。


参考出典

質素倹約の努力
損する時は、収入が少なく支出が多いために困窮する。そういう時にどうするべきなのかを教える言葉。
」とは祭祀の器。通常、八つ用いるがこれを二つに減らして供物を捧げる。つまり、最も大切な供物を減らすほどの質素倹約に努めて時を待て、というわけである。
「損して得を取れ」というが、損をしたり削減をするのは、後に自らの利益になると山沢損の卦は教えている。

易経一日一言/竹村亞希子

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