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まいにち易経_1003【微細な変化を見抜く力】幾を知るはそれ神か。[繋辞下伝:第五章]

子曰。知幾其神乎。

子曰く、を知るは其れしんか。

言霊では、身体は神の宿る場所、つまり神体とされている。身体に神が宿るという考えだ。我々の魂が神(天)と繋がっているからこそ、学びを深め、心を磨き、純粋で無垢な心を持つことで、真実の「幾」を理解できるようになるのだ。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

まず、「幾を知る」という言葉についてです。「幾」というのは、わずか、微妙な、機微を意味します。つまり、物事が大きく動く微細なきっかけであり、別の言い方をすると兆しです。これを知るということは、物事の萌芽を見て未来を予測することではなく、まだ現象として現れていない、眼に見えないものを察することを意味します。

皆さん、ビジネスの世界でもこの「幾を知る」力が非常に重要です。例えば、桐の一葉が落ちるのを見て天下の秋を知るという表現があります。これは、わずかな変化から大きな結果を見通す能力を示しています。ビジネスの現場でも、例えば市場の小さな動きや顧客の微細な反応から、大きなトレンドや将来の変化を予測することが求められます。

私が経営者として経験した一例を挙げましょう。ある時、売り上げが徐々に減少していることに気付きました。その時、多くの人はまだ大きな問題とは捉えていませんでしたが、私はその微細な変化に注目しました。そして、市場調査を行い、顧客のニーズが変わりつつあることを発見しました。その結果、商品の改良や新サービスの開発を迅速に行い、競合他社に先んじて市場の変化に対応することができました。このように、小さな兆しを見逃さずに大きな戦略を立てることが成功への鍵となるのです。

また、「幾を知る」ためには直観力も重要です。これは単なる感覚ではなく、経験と知識に裏打ちされた洞察力です。例えば、スポーツ選手が試合の中で瞬時に最適なプレーを選択するように、ビジネスリーダーも日常の中で多くの情報を処理し、最適な判断を下す必要があります。これを養うためには、日々の経験を積み重ね、過去の成功や失敗から学ぶことが大切です。

少し雑学を交えてみましょう。皆さんは、カナリアが炭鉱の中で使われていたことをご存知でしょうか。カナリアはガスの変化に敏感で、危険なガスが発生すると鳴き声が変わるため、炭鉱労働者たちはその兆しを見て安全を確保していました。このように、私たちも日常の中で微細な変化に敏感になることで、危険を回避し、チャンスを掴むことができるのです。

皆さんがこれからリーダーとして成長していく中で、「幾を知る」力を養うことは非常に重要です。そのためには、常に周囲の変化に敏感であり、自分の直観を信じつつ、データや経験に基づいた判断を行うことが求められます。また、他人の意見に耳を傾け、多様な視点を取り入れることも重要です。これによって、より広い視野で物事を捉えることができ、的確な判断を下すことができるでしょう。


参考出典

幾を知る
「幾」とは、わずか、微妙な、機微を意味する。物事が大きく動く微細なきっかけであり、別の言い方をすると兆しである。
「幾を知る」とは、萌芽ほうがを見て春を知ることではない。まだ現象面に表れない、眼に見えないものを察することをいう。
たとえば、「桐一葉落ちて天下の秋を知る」(桐の一葉が落ちるのを見て、天下衰亡の時と腑に落ちる)という句のように、一瞬にして結果を知る。これは常人には及ばない直観力であると易経はいう。

易経一日一言/竹村亞希子

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