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まいにち易経_0302【永遠に巡る道:変わり続ける世界の哲学】易は窮まれば変ず。変ずれば通ず。通ずれば久し。[繋辞下伝:第二章]
神農氏没。黄帝堯舜氏作。通其變。使民不倦。神而化之。使民宜之。易窮則變。變則通。通則久。是以自天祐之。吉无不利。黄帝堯舜垂衣裳而天下治。蓋取諸乾坤。
神農氏没して、黄帝堯舜氏作る。其の変を通じ、民をして倦まざらしむ。神にしてこれを化し、民をしてこれを宜しとせしむ。易は窮まれば変ず。変ずれば通ず。通ずれば久し。是を以て天よりこれを祐く、吉にして利あらざるなし。黄帝堯舜衣裳を垂れて天下治まる。蓋しこれを乾坤に取る。
神農氏が没した後、黄帝、堯、舜の時代が訪れた。彼らは大きな変化を通じて統治したが、民を疲弊させることはなく、むしろ変化に自然と順応させるように導いたのだ。まるで神々のように変化を操り、民を円滑に治めていた。
『易経』の教えによれば、行き詰まりがあれば変化し、変化すれば道が開け、道が開ければそれは永続するという。そして、天の助けを受け、吉兆を招き、利益を得ないことはない。黄帝や堯、舜が行ったのは、ただ静かに衣を垂らして天下を治めること。特別な努力をすることなく、自然の流れに任せた統治だった。
この方法は、天地の働きを象徴する乾坤の理に基づいていたのだろう。天地の作用とは、常に変化を続けながらも、無為自然の状態にあることを意味している。
ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る
易経の中でも特に重要な概念の一つに「窮まれば変ず」というものがあります。これは、物事が行き詰まったときこそ、変化のチャンスが訪れるという意味です。皆さんも、困難に直面したとき、「もうダメだ」と思ったことがあるのではないでしょうか。しかし、易経の教えによれば、そういった状況こそが新たな展開の始まりなのです。
たとえば、スマートフォンは、実は「窮まれば変ず」の良い例です。かつて携帯電話は通話とメールしかできませんでした。そこで行き詰まりを感じた技術者たちが、新しい可能性を模索した結果、今や私たちの生活に欠かせないスマートフォンが生まれたのです。
易経では、陰と陽の概念を用いてこの原理を説明しています。陰が極まれば陽に、陽が極まれば陰に変化する。これは自然界の循環にも当てはまります。冬が最も寒い時期を迎えると、そこから少しずつ春に向かっていきます。夏の暑さが極まると、やがて秋の涼しさがやってきます。
ビジネスの世界でも同じことが言えます。私が経営者だった頃、会社が危機に瀕したことがありました。しかし、その危機こそが、私たちに新しい事業モデルを考えさせるきっかけとなったのです。結果として、会社は以前よりも強くなり、新たな成長を遂げることができました。
易経の教えは、変化を恐れず、むしろ積極的に受け入れることの重要性を説いています。「変化したら必ず新しい発展がある」というフレーズがありますが、これは皆さんのキャリアにも当てはまるでしょう。新しい環境に飛び込むことは不安かもしれません。しかし、そこには必ず成長のチャンスがあるのです。
明治維新は、まさに「窮まれば変ず」の原理が働いた出来事と言えます。江戸時代末期、日本は欧米列強の圧力に直面し、存亡の危機に立たされました。しかし、この危機が日本を近代化へと導き、わずか数十年で世界の列強と肩を並べるまでに成長したのです。
易経が最も重視しているのは、新たな変化です。皆さんが将来、リーダーとして活躍する際、この点を忘れないでいただきたいと思います。現状に満足せず、常に新しい可能性を探求する姿勢が重要です。それは、製品開発かもしれませんし、組織の改革かもしれません。あるいは、自己啓発かもしれません。
変化は時に痛みを伴います。しかし、その痛みを恐れずに受け入れることで、私たちは成長できるのです。易経の「通ず」という言葉は、まさにこの成長を意味しています。新たな変化なくして成長発展はありません。
皆さんにぜひ覚えておいてほしいのは、困難は成長のチャンスだということです。行き詰まりを感じたとき、それは単なる終わりではなく、新たな始まりの予兆かもしれません。そんなとき、ぜひ「窮まれば変ず」という言葉を思い出してください。
また、この原理は個人のレベルだけでなく、組織や社会全体にも適用できます。例えば、環境問題という人類が直面している大きな課題。これは確かに深刻ですが、同時に新しい技術やビジネスモデルを生み出すきっかけにもなっています。再生可能エネルギーの発展や、サーキュラーエコノミーの概念など、これらは危機を変化と発展の機会に変えた好例と言えるでしょう。
さらに、この「窮まれば変ず」の考え方は、皆さんの日々の仕事にも活かせます。例えば、困難なプロジェクトに直面したとき。行き詰まりを感じたら、それは新しいアプローチを試す絶好のチャンスかもしれません。従来の方法にとらわれず、創造的な解決策を探ることで、思わぬブレークスルーが生まれるかもしれません。
易経の教えは、変化と成長が終わりのない循環であることを示しています。「それが幾久しく通じて行って、それがまた生々流転する」というフレーズは、まさにこのことを表しています。つまり、変化と成長は一度きりのものではなく、常に続いていくプロセスなのです。
皆さんの前には、長い人生と輝かしいキャリアが広がっています。その道のりには、きっと多くの困難や行き詰まりがあるでしょう。しかし、そんなときこそ「窮まれば変ず」の教えを思い出してください。困難は必ず変化のチャンスをもたらし、その変化は新たな成長の機会を生み出すのです。
変化を恐れず、むしろ積極的に受け入れる。そして、その中に潜む可能性を見出す。それこそが、これからの時代に求められるリーダーシップの本質ではないでしょうか。皆さんが、この易経の叡智を胸に刻み、素晴らしいリーダーへと成長されることを心から願っています。
参考出典
窮まれば変ず
陰が極まれば陽になり、陽が極まれば陰に変化する。冬が極まれば夏へ、夏が極まれば冬へ向かう。
同様に、物事は行き詰まることがない。窮まれば必ず変じて化する。変化したら必ず変じて化する。変化したら必ず新しい発展がある。それが幾久しく通じて行って、それがまた生々流転する。
「通ず」とは成長を意味する。新たな変化なくして成長発展はない。易が最も尊ぶのは新たな変化である。
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