見出し画像

まいにち易経_0831【潜龍元年:01䷀乾為天】

潜龍という言葉は、ただ潜んでいる龍のことではない。才能を秘め、聖人の徳を持ちながらも、最下層に隠れている人物を指す。これは、時代が移り変わっても主義を変えず、名声を求めずに生きる人のことだ。

世の中がどうであろうと、潜龍は悶え苦しむことはない。誰にも認められなくても、不満を抱くことはない。平和な時代にはその安らぎを楽しみ、乱世になれば世間から身を引く。こうして、確固たる志を持ち、それが動じることはない。このような人物こそが真の潜龍である。

確乎不抜の精神を持ち、自分の道を揺るぎなく進む。この精神は現代でも見習うべきものであり、時代や社会の変動に左右されず、自分の信念を貫く力が求められる。潜龍とは、まさにその象徴だ。

このような考えを持ち続けることは、簡単ではないが、その姿勢こそが本物の強さであり、真の徳である。潜龍の生き方は、現代の喧騒の中でも静かに輝く道標となる。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

まず、「潜龍」とは何か、ご存知でしょうか? 簡単に言えば、将来大きく飛躍する可能性を秘めながら、今はまだ世の中の表舞台に出ず、じっと力を蓄えている存在のことを指します。龍は東洋の神話では非常に力強く、神秘的な生き物として描かれますが、その龍が今は水中に潜んでいる状態なのです。

皆さんの中には、「今の自分には大したことはできない」とか、「まだ実力不足だ」と感じている人もいるかもしれません。でも、そんな時こそ「潜龍」の教えを思い出してほしいのです。

潜龍の状態にある時、最も重要なのは「志」です。大きな志を持つことで、未来への扉が開かれるのです。志がなければ、何も変わりません。成長も進化もありません。ですから、皆さんにはぜひ、大きな志を抱いてほしいと思います。

古代中国の思想家である孟子は、「志は気の帥なり」という言葉を残しています。これは、志が私たちの心や体のエネルギーを導く指揮官のような役割を果たすという意味です。つまり、強い志を持つことで、私たちの潜在能力が引き出されるのです。

さて、「潜龍」の教えで特に注目してほしいのは、志を抱くのは若い世代だけではないということです。年齢に関係なく、新たな変革を起こす志を養うことが大切なのです。私自身、長年ビジネスの世界で生きてきましたが、今でも「いつも潜龍元年」という言葉を自分に言い聞かせています。

これは何を意味するのでしょうか? それは、常に初心に立ち返り、新たな志を培い続けるということです。私たちは、年を重ねるごとに、「もう遅い」とか「今さら新しいことを始めても」と思いがちです。しかし、そんな考えこそが成長を妨げるのです。

皆さんは、ケンタッキーフライドチキンの創業者であるカーネル・サンダースをご存知でしょうか? 彼は65歳で年金生活に入った後、自分のレシピを持って全国を回り、1009回も断られた末に、ようやくフランチャイズ契約を結ぶことができました。そして、その後世界的なファストフード・チェーンを築き上げたのです。これこそ、まさに「潜龍」の精神そのものだと言えるでしょう。

また、日本の歴史を振り返ってみると、幕末の志士たちの多くも、若くして大きな志を抱いていました。例えば、坂本龍馬は27歳で脱藩し、日本の未来を変える大きな夢を抱いて行動を起こしました。彼らは、まさに「潜龍」の状態から、日本の歴史を動かす大きな存在へと変貌を遂げたのです。

しかし、志を持つことは簡単なようで難しいものです。現代社会では、すぐに結果を求められたり、失敗を恐れたりする風潮があります。そんな中で、大きな志を持ち続けるのは勇気がいることかもしれません。

でも、考えてみてください。皆さんの周りには、きっと応援してくれる人がいるはずです。家族、友人、先輩、後輩。そういった人々の存在を心の支えにしながら、自分の志を育てていってほしいのです。

また、志を持つことと同時に大切なのは、その志を実現するための努力です。潜龍の時期は、まさにその努力をする絶好の機会なのです。目立たない場所にいるからこそ、失敗を恐れずに挑戦できる。そして、その経験が将来の大きな飛躍につながるのです。

さて、「潜龍」の教えを現代社会に当てはめると、どのようなことが言えるでしょうか。例えば、新しい技術やアイデアを持っていても、すぐには認められないかもしれません。しかし、その時こそ「潜龍」の時期だと捉え、自分の信念を貫き、努力を続けることが大切です。

また、会社に入ったばかりの新入社員の時期も、まさに「潜龍」の時期と言えるでしょう。この時期は、自分の能力をフルに発揮できないもどかしさを感じるかもしれません。しかし、この時期こそ、様々な経験を積み、自分の志を育てる絶好の機会なのです。

一方で、「潜龍」の教えは、すでにキャリアを積んだ人にも当てはまります。新しいプロジェクトを始める時、新しい部署に異動した時、あるいは転職した時。そういった時こそ、「いつも潜龍元年」の精神で、新たな志を抱くことが大切なのです。

最後に、皆さんに伝えたいことがあります。人生は長いようで短いものです。その中で、常に「潜龍」の精神を持ち続けることは、決して容易ではありません。しかし、そうすることで、私たちは常に成長し、新たな可能性を見出すことができるのです。

ですから、皆さんには、今この瞬間から「潜龍」の精神を持って、大きな志を抱いてほしいと思います。そして、その志に向かって一歩一歩前進してください。たとえ今は目立たない存在だとしても、いつかきっと大きく羽ばたく時が来るはずです。

そして、成功を収めた後も、「いつも潜龍元年」の精神を忘れないでください。常に新たな志を抱き、挑戦し続けることで、皆さんの人生はより豊かなものになるでしょう。

今日のお話が、皆さんの人生の指針となれば幸いです。これからの皆さんの活躍を、心から期待しています。ありがとうございました。


参考出典

潜龍元年
潜龍とは、将来大きく飛躍する大志を抱きながら、世の最下層に潜み隠れる龍のことをいう。重要なのは志であり、志を抱くことがなければ、何も変化は起こらず、成長や進化もない。
また、志を抱くべきは何も若い世代だけに限らない。年齢に関係なく、新たな変革を起こす志を養うことが大切である。
私は「いつも潜龍元年」と自分に言い聞かせている。この言葉を糧に、初心に帰り、志を培い続けたいと思っている。

易経一日一言/竹村亞希子

#まいにち易経
#易経 #易学 #易占 #周易 #易 #本田濟 #易経一日一言 #竹村亞希子 #最近の学び #学び #私の学び直し #大人の学び #学び直し #四書五経 #中国古典 #安岡正篤 #人文学 #加藤大岳 #乾為天 #潜龍

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集