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まいにち易経_1122【過ちを繰り返さない者が未来を創る】不善あればかつて知らずんばあらず。これを知ればいまだかつてまた行わざるなり。[繋辞下伝:第五章]
子曰。顔氏之子。其殆庶幾乎。有不善。未嘗不知。知之未嘗復行也。易曰。不遠復。无祇悔。元吉。
子曰く、顔氏の子、其れ殆んど庶幾からんか。不善あらば、いまだ嘗て知らずんばあらず。これを知れば、いまだ嘗て復た行わざるなり。易に曰く、遠からずして復る。悔に祗るなし。元吉、と。
孔子はいった。顔回はほとんど聖人に近い存在であると。顔回は、もし自分に不善、つまり悪い行いがあったとしても、すぐにそれに気付き、そして気付いた後は、絶対にその不善を繰り返さない人物であった。24䷗地雷復:初九に「遠からず復ってくる。悔いに至ることはない。大いに吉」とあるが、これは顔回が道を外れたとしても、すぐに正しい道に戻ってくる性格を持っていることを示している。
顔回は、孔子が最も愛した弟子であり、徳行(道徳的な行い)に非常に優れていた人物だった。魯国の哀公が孔子に、弟子の中で誰が学問を好むかと尋ねたとき、孔子は「顔回という者がいた。彼は学問を非常に好み、怒りを他の人に移すこともなく、同じ過ちを二度と犯さない者であった。しかし、残念ながら短命で亡くなってしまった。今では学問を好む者を見つけることができない」と答えたという(『論語』「雍也」篇)。
「庶幾」について、唐の孔穎達は「庶」を「近い」と解釈し、「幾」を前述の「幾」と同じように「ほとんど」を意味すると解釈した。したがって、「庶幾」は「ほとんど聖人に近い」という意味になる。
ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る
さて、今回お話しするのは、「過ちを繰り返さない」というテーマです。簡単に言えば、同じミスを二度と犯さないようにする、ということです。しかし、この教えにはもっと深い意味が込められています。
過ちを認識することの重要性
まず、皆さんに考えてほしいのは、「過ちに気づくことの重要性」です。人は誰しも過ちを犯します。完璧な人間はいません。しかし、そこで重要なのは、自分の過ちに気づくことです。気づくということは、自分を見つめ直し、冷静に振り返る力を持つことです。この力はリーダーとして非常に大切です。例えば、プロジェクトが失敗に終わったとしましょう。その原因が自分にあるかどうか、あるいはチーム全体の問題か、まずは冷静に分析することが求められます。感情的になって他人のせいにするのではなく、事実を見極め、自分の中に何か改善すべき点がないかを見つけることが大切です。
ここで、古代ギリシャの哲学者ソクラテスの言葉を思い出してみてください。彼は「無知の知」を説きました。これは、自分が何を知らないかを知ることが、知恵の始まりだという考え方です。自分の過ちに気づける人は、すでに一歩リーダーとして成長していると言えるでしょう。
過ちを繰り返さないための方法
次に、「過ちを繰り返さない」ためにどうすればいいかを考えてみましょう。気づいた過ちをそのまま放置してしまうと、同じミスを何度も繰り返してしまいます。それを防ぐためには、自分自身に厳しくあり続ける必要があります。例えば、スポーツの世界を見てみると、トップアスリートは常に自分の弱点を見つけ、そこを克服するために努力を重ねています。彼らは、失敗した試合のビデオを何度も見直し、どこで何が間違ったのかを徹底的に分析します。そして、次の試合では同じ過ちをしないように戦略を練り直します。
リーダーとしても同じです。失敗をただの経験として流してしまうのではなく、その原因を突き止め、どうすれば次に同じミスをしないかを考えることが重要です。これは簡単なことではありませんが、これを続けることで、少しずつリーダーとしての器が大きくなっていくでしょう。
さて、ここで一つ面白い例を挙げてみましょう。
皆さんは「破れ窓理論」というものをご存知でしょうか?これは、小さな問題を放置すると、やがて大きな問題に発展するという理論です。例えば、建物の窓が一つ割れているのを放置すると、やがてその建物全体が荒れ果てていくというものです。この理論は、私たちの人生や組織の運営にも当てはまります。小さな「不善」や間違いを見過ごしてしまうと、やがてそれが習慣化し、大きな問題に発展する可能性があるのです。
だからこそ、「気づいたら二度と不善を繰り返さない」という姿勢が重要になってきます。これは単に「間違いを二度としない」という意味ではありません。むしろ、自分の行動や考え方を常に見直し、改善し続けるという積極的な姿勢を意味しています。
皆さんの中には「そんなに完璧を目指すのは重荷だ」と感じる方もいるかもしれません。確かに、常に自分を見つめ、改善し続けることは、時に大変な労力を要します。しかし、これは決して重荷ではありません。むしろ、自分自身を成長させ、より良い人生を送るための素晴らしい機会なのです。
想像してみてください。自分の弱点や課題に気づき、それを一つずつ克服していく過程を。その度に、あなたは一歩ずつ成長し、より強く、より賢明な人間になっていくのです。これこそが、真の意味での「自己実現」と言えるのではないでしょうか。
また、この「過ちを繰り返さない」という姿勢は、個人の成長だけでなく、組織や社会全体の発展にもつながります。リーダーである皆さんが、この姿勢を持ち続けることで、周りの人々にも良い影響を与え、より良い組織文化、社会文化を作り出すことができるのです。
この教えの実践には「謙虚さ」が欠かせません。自分の間違いや弱点を認められる勇気、そして常に学び続ける姿勢が必要です。これは、古今東西の偉大なリーダーたちに共通する特質でもあります。
皆さん一人一人が、この「過ちを繰り返さない」という姿勢を心に刻み、日々実践していくことで、必ずや素晴らしいリーダーへと成長していくことでしょう。そして、その成長が、皆さんの周りの人々、組織、そして社会全体をより良いものに変えていく原動力となるのです。
今日お話しした内容を、ぜひ日々の生活の中で意識し、実践してみてください。そうすることで、皆さんはきっと、自分自身の中に大きな変化と成長を感じ取ることができるはずです。
参考出典
過ちを繰り返さない
道をほぼ体得した者は、身に不善があれば必ず気づき、気づいたら二度と不善を繰り返さない。
過ちを二度繰り返さない。これを徹底して行うことは、道を極めたに近い。
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