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まいにち易経_0118【修辞:伝える技術で未来を切り拓け】辞を修めその誠を立つるは、業に居るゆえんなり。[文言伝:第二節(人事)/乾為天九三]

九三曰、君子終日乾乾、夕惕若、厲无咎、何謂也。
子曰、君子進徳脩業。忠信所以進徳也。脩辭立其誠、所以居業也。知至至之、可與幾也。知終終之、可與存義也。是故居上位而不驕、在下位而不憂。故乾乾。因其時而惕、雖危而无咎矣。

九三に曰く、君子終日乾乾けんけんし、夕べに惕若てきじゃくたり、厲けれども咎なしとは、何の謂いぞや。 子曰く、君子は徳に進みぎょうを修む。忠信は徳に進む所以なり。辞を修めその誠を立つるは、業に居る所以なり。至るを知りてこれに至る、ともに幾を言うべきなり。終わるを知りてこれを終わる、ともに義を存すべきなり。この故に上位にりておごらず、下位にりてうれえず。故に乾乾す。その時に因りておそるれば、危うしといえども咎なきなり。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

伝える力の大切さ
まず、「修辞」という言葉に注目しましょう。現代では「修辞」と聞くと、難しい言葉や美しい表現を思い浮かべるかもしれません。しかし、ここで言われている「修辞」は、そんな飾り言葉ではありません。本来の意味は、簡潔で明瞭、そして力強い言葉を指します。つまり、いかに効果的に、そして説得力を持って人に伝えるか、ということが重要なのです。
リーダーとして、あなたたちは多くの人と接し、導く立場に立つことになるでしょう。そのとき、言葉が持つ力を軽視してはいけません。黙っていても、自分の考えが周りに伝わると考えるのは、単なる怠慢です。人は、明確に伝えられたことしか理解しませんし、共感もしません。言葉を選び、相手にわかりやすく伝える努力を惜しんではいけないのです。

言葉は誠実さを伝える
「誠実に思いを伝えられるのは、自分の業にしっかり身を置いているからである」と、易経は教えています。自分の信念や価値観をしっかり持っていれば、その言葉は自然と誠実さを帯びます。誠実な言葉は、相手に届き、心を動かします。
私の経験をお話ししましょう。私が若い頃、ある大きなプロジェクトのリーダーを任されたことがありました。そのプロジェクトは多くの課題を抱えていて、メンバーの士気も低下していました。そのとき、私は彼らに自分の考えを正直に伝えました。「今のままでは、このプロジェクトは失敗に終わるかもしれない。でも、全力を尽くせば、必ず乗り越えられると信じている」と。誇張も飾りもなく、ただ自分の心に正直になって言葉を選びました。
結果、その言葉がチームに火をつけました。皆が一丸となり、最終的にプロジェクトは大成功を収めました。この経験から学んだことは、言葉は自分の心を映す鏡であり、誠実さを持って話せば、その力は何倍にもなるということです。

リーダーは伝える技術を磨くべき
さて、あなたたちも将来、リーダーとして多くの人に影響を与える立場になります。そのときに大切なのは、「伝える技術」を磨くことです。ただし、これは一朝一夕で身につくものではありません。日々の経験の中で、意識して言葉を選び、どうすれば相手に伝わるかを考えることが重要です。
一つのテクニックとして、「簡潔さ」を心がけるといいでしょう。冗長な説明や飾り立てた言葉よりも、シンプルで力強い言葉のほうが、相手に響きやすいです。例えば、何かを指示する際も、「この方法が一番効率的だからやってみてほしい」と、理由を簡潔に添えることで、相手に納得感を持たせることができます。
また、相手の立場に立って考えることも大切です。相手がどんな情報を必要としているのか、どう伝えれば理解してもらえるのかを常に意識してください。これが「伝える技術」の基本です。

最後に、もう一度強調しておきたいのは、リーダーにとって「伝える力」は不可欠なスキルであるということです。易経が示す通り、言葉には力があります。しかし、その力を最大限に引き出すためには、誠実さを持ち、日々その技術を磨くことが求められます。

これから皆さんが歩むリーダーとしての道は、決して平坦なものではないでしょう。しかし、あなたたちが持つ言葉の力を信じ、誠実に、そして効果的に伝え続けることで、多くの人を導くことができるでしょう。皆さんの成長を心から楽しみにしています。

この話が、少しでも皆さんの役に立つことを願っています。


参考出典

修辞
誠実に思いを伝えられるのは、自分の業にしっかり身を置いているからである。
「修辞」は饒舌に飾り表現された言葉という意味ではなく、本来、「簡潔明瞭で力強い言葉」、効果的で分かりやすく、適切で説得力のある、生きて伝わる言葉をいう。
特に、上に立つ者はこの「修辞」=「伝える技術」を身につけなければならない。「黙っていてもわかってくれる」と考えるのは怠慢である。

易経一日一言/竹村亞希子

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