まいにち易経_1220【危機からの転機:剥と消息盈虚の教え】君子の消息盈虚を尚ぶは、天の行なればなり。[23䷖山地剥:彖伝]
彖曰。剝。剝也。柔變剛也。不利有攸往。小人長也。順而止之。觀象也。君子尚消息盈虚。天行也。
ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る
「山地剥」という卦についてお話ししたいと思います。この「剥」という字は、まさに「剥ぎ落とす」という意味を持っています。皆さんも、今までに何かを失った経験があるかもしれません。
それは、人間関係だったり、ビジネスの機会だったり、もしかすると、自分自身の自信や信念であったかもしれません。この「剥」という卦は、まさにそういった状況を示しています。物事が崩れ落ち、陰の勢いが強くなり、陽が衰える、そんな時を指しています。
しかし、ここで重要なのは、この「剥」という状態が永遠に続くわけではないということです。易経には「消息盈虚」という言葉があります。
これを少し解説しますと、「消えるものは再び息吹き、満ちるものはまた虚しくなる」という意味です。朝が来れば必ず夜が来るように、夜が過ぎればまた朝が訪れる。つまり、陰と陽という二つのエネルギーが常に入れ替わり、変化していくということを指しています。
皆さん、人生やビジネスの世界でも、この「消息盈虚」を感じたことがあるでしょう。成功を手にしたかと思えば、次の瞬間には困難が訪れたり、逆に絶望の中で新たなチャンスが見えてきたり。これは、決して偶然ではなく、自然の摂理であり、易経が教えてくれる「変化」の大切さなのです。
私が若かった頃、あるプロジェクトで大きな失敗を経験しました。その時は、まさにこの「剥」の状態でした。自分が築いてきたものがすべて崩れ去り、どうしていいか分からない。まるで、陰の勢いが自分を飲み込んでいくように感じました。しかし、その時、私はこの「消息盈虚」の教えを思い出し、変化を恐れず、次の機会に向けて自分を立て直すことを決意しました。そして、その経験があったからこそ、後に大きな成功を収めることができたのです。
ここで皆さんに伝えたいのは、変化を恐れないでほしいということです。
変化は私たちに試練を与えますが、それは同時に成長のチャンスでもあります。易経が教えるように、変化がなければ発展はありません。だからこそ、皆さんがこれからのリーダーとして成長していくためには、困難に直面したとき、それを乗り越える力を持つことが大切です。
また、私がもう一つ強調したいのは、変化に応じる柔軟さです。
易経は「進退を決し、応じていくことが大切である」と教えています。これはつまり、状況に応じて、時には前に進み、時には一歩引いて考えることが重要だということです。私たちは常に前進し続けることが求められるわけではありません。時には立ち止まり、自分自身を見つめ直し、次の一歩を慎重に選ぶことが必要です。
このような考え方は、リーダーとしての資質にも通じます。リーダーは常に先頭に立って進むだけでなく、状況を冷静に見極め、適切なタイミングで決断を下すことが求められます。そのためには、変化に敏感であり、柔軟に対応できる心構えが必要です。これこそが、易経が私たちに教えてくれるリーダーシップの本質なのです。
「剥」の時にこそ、自分の内面を強く持つことの重要性です。
外的な状況がどれだけ厳しくても、自分自身の信念や価値観をしっかりと持ち続けることが、逆境を乗り越えるための鍵となります。そして、それが結果として、皆さんを次のレベルへと引き上げる原動力になるのです。
たとえば、ある企業が経済危機に直面した時、その企業のリーダーがどのような信念を持って行動するかによって、企業の運命が大きく左右されることがあります。信念が揺るがないリーダーは、どんな逆風にも耐え抜き、社員を導くことができるでしょう。しかし、信念を失ったリーダーは、すぐに迷い、組織全体が混乱に陥る可能性が高いのです。これは、ビジネスだけでなく、私たちの人生においても同じことが言えます。
最後に、皆さんに伝えたいのは、人生の中で直面する「剥」の時期を恐れないでほしいということです。それは、皆さんが次に進むための大きなチャンスであり、変化を受け入れ、自分を成長させるための機会なのです。そして、その過程で、自分自身の内なる強さを見つけ出し、将来のリーダーとしての素質を磨いていってほしいと思います。
今日お話しした「山地剥」と「消息盈虚」の教えが、皆さんがこれからの人生で直面するさまざまな困難を乗り越える助けとなることを願っています。そして、皆さんが素晴らしいリーダーへと成長していくことを心から期待しています。これからの未来は、皆さんの手にかかっています。一歩一歩、着実に前に進んでいきましょう。
参考出典
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