まいにち易経_1113【一時の喜びが招く結末~瞬間の衝動、未来への代償】終わりを永くし敝るるを知る。[54䷵雷澤帰妹:象伝]
象曰。澤上有雷歸妹。君子以永終知敝。
ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る
今日は「雷沢帰妹」の象伝についてお話します。
名前からして「雷」と「沢」という自然のイメージが浮かびますが、これは私たちが人生で学ぶべき大切な教訓を含んでいるのです。易経には、こうした自然の力を通して人間関係や生き方の知恵が描かれています。
さて、「雷沢帰妹」は「若い女性が自ら求めて嫁ぐ」姿を描いています。少し想像してみてください。まだ人生経験が浅い若い女性が一時的な感情に突き動かされて結婚を選ぶという状況です。易経では、このように短期的な感情に従って動いた結果は、長く続かずに破れることが多い、と教えています。
この話は結婚だけに限らないんですね。むしろ、この教えは人生のあらゆる選択や行動に通じるものです。瞬間的な喜びや一時の感情に突き動かされることは、人間として自然なことです。しかし、それだけで物事を判断して行動すると、後に問題が生じやすくなるのです。
例えば、ビジネスでもそうでしょう。初めての成功に浮かれて、勢いに任せて新しいプロジェクトに次々と手を出す。しかし、それがきちんと計画されていなかったり、周囲と足並みを揃えずに突き進んでしまうと、後から綻びが出てしまいます。ビジネスの世界でも、若いリーダーたちがやりがちなのが、初期の成功に酔いしれて短期的な利益を追い求め、長期的な計画や持続可能な成長を見落としてしまうことです。
もちろん、情熱をもって行動することは素晴らしいことです。しかし、その情熱に飲み込まれて全体を見失わないようにすることもまた重要です。冷静に「これは本当に長く続くことなのか?」「これは本当に必要なことなのか?」と問いかけることで、浮ついた感情や短期的な喜びに流されることを防げるのです。
ところで、皆さん、人生で「破れる」という経験をされたことはあるでしょうか?失敗を経験することは痛みを伴いますが、それは決して無駄なことではありません。むしろ、破れることを通じて、真に大切なものを学ぶ機会が生まれるんです。 ある若手リーダーの話ですが、彼は初めて大きなプロジェクトを任されたときに、あまりに勢いに任せてプロジェクトを進めてしまった結果、チームは分裂し、プロジェクトも失敗に終わりました。
しかし、その経験を通じて、彼は人をまとめることの難しさ、全体の調整の重要性、そして冷静さの大切さを学びました。この失敗が、彼を成長させたのです。つまり、破れることは、新しい気づきと成長の機会でもあるのです。
では、どうすれば一時の感情に流されず、長く続けられるものを見極められるのでしょうか?それには、まず冷静になることが大切です。皆さんも、何か大きな決断をする前に、少し立ち止まってみてください。その瞬間の喜びや、ワクワクする気持ちに飛びつく前に、深呼吸をして「これは本当に必要なのか」「この決断がもたらす未来はどうなのか」と、自分に問いかけるのです。 私も長い間、経営の世界で多くの決断をしてきましたが、やはり冷静な判断力が重要だと痛感しています。目の前の利益だけに囚われるのではなく、どれだけ遠くまで見据えられるか、そこがリーダーとしての力量を問われる部分でしょう。
では、「雷沢帰妹」の「雷」と「沢」についても少し触れておきましょう。雷は大きなエネルギーを持ち、物事を一気に動かす力を象徴しています。一方で、沢はゆったりとした水の流れを意味し、物事を養い育てていく力を象徴しています。この二つの要素は、一見対照的ですが、実はバランスが重要です。雷のように情熱を持って物事を推し進める一方で、沢のように冷静さと持続可能な視点を持って、成長を支えていくことが必要なのです。
皆さんには、これから数多くの決断をし、何度も自分を試すような場面がやってくるでしょう。その中で、短期的な成功や一時の感情に飲み込まれそうになることもあるかもしれません。ですが、そのときこそ「雷沢帰妹」の教えを思い出してください。情熱と冷静さ、そのバランスを保ちながら、周りの人々を引き連れていくリーダーシップが求められるでしょう。 短期的な成功は、いつか破れるものです。しかし、そこから学び、立ち上がり、成長することで、本当に価値のあるリーダーになれるのだと、私は信じています。
参考出典
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