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まいにち易経_0810【時機を見極める洞察力~躍龍の時代】或いは躍りて淵に在り。咎なし。[01䷀乾為天:九四]

九四。或躍在淵。无咎。

九四は、あるいはおどりてふちにあり。咎なし。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

『乾為天』の九四では、「躍龍」という言葉が出てきます。これは、今まさに大空へ飛び立とうとしている龍のことを指しています。龍が空を飛ぶということは、皆さんが目標を達成することに例えられるのです。

龍が空を飛ぶ、つまり目標を達成するためには、いくつかの重要な要素があります。

まず一つ目は、「飛躍を試みること」です。これは、チャンスが来たときに勇気を持って前に進むことを意味します。例えば、新しいプロジェクトのリーダーに抜擢されたとき、不安はあるかもしれませんが、その機会を掴むことが大切です。

二つ目は、「深い淵に退いて内観すること」です。これは、時には立ち止まって自分自身を振り返ることの大切さを教えています。忙しい日々の中で、自分の目標や価値観を見失わないように気をつける必要があるのです。

ここで、私の経験をお話しさせていただきます。私が若いころ、会社の海外進出プロジェクトに携わることになりました。当初は順調に進んでいましたが、ある時点で行き詰まりを感じました。そのとき、一度立ち止まって考える時間を取りました。静かな場所で瞑想をし、なぜこのプロジェクトを始めたのか、何を達成したいのかを深く考えました。その結果、新たなアイデアが浮かび、プロジェクトを成功に導くことができたのです。
このように、前に進むことと立ち止まること、両方のバランスが大切なのです。

さて、目標達成のために必要な要素をさらに見ていきましょう。
まず、「志を立てること」です。これは皆さんの人生の目標や、仕事での具体的な目標を明確にすることです。例えば、「5年以内に新規事業を立ち上げる」や「10年後には国際的な企業のCEOになる」というような具体的な目標を持つことが大切です。

次に、「学び努力して培った実力と経験」です。目標に向かって日々努力を重ね、必要なスキルや知識を身につけていくことが重要です。例えば、語学力を磨いたり、財務や法律の知識を深めたりすることが挙げられるでしょう。また、様々な経験を積むことも大切です。失敗も含めて、多くの経験が皆さんを成長させてくれるのです。

そして最後に、「タイミングを観る洞察力」です。これは非常に重要な要素で、しばしば成功の鍵となります。ビジネスの世界では、絶好のタイミングというものがあります。それを見逃さない力が必要なのです。

ここで、タイミングの重要性を示す興味深い例をお話しします。1975年、若き日のビル・ゲイツとポール・アレンは、当時まだあまり普及していなかったパーソナルコンピューターの将来性に気づきました。彼らは、コンピューターにはソフトウェアが必要になると予測し、マイクロソフト社を設立しました。その洞察力と行動力が、後の巨大企業の礎となったのです。
このように、チャンスを見抜く力、そしてそれに対して迅速に行動する力が、ビジネスの世界では非常に重要になってきます。

では、どうすればこの「タイミングを観る洞察力」を養えるのでしょうか。
まず、常に情報をアップデートし続けることが大切です。自分の専門分野だけでなく、幅広い分野の知識を持つことで、新たな機会に気づきやすくなります。例えば、テクノロジーの最新トレンドや、社会の変化、経済の動向などに常にアンテナを張っておくとよいでしょう。

次に、直感を大切にすることです。データや分析も重要ですが、時には「何かが起こりそうだ」という直感も大切にしてください。この直感は、実は皆さんの無意識下での情報処理の結果かもしれません。

そして、失敗を恐れないことです。タイミングを見極めるには、実際に行動してみることが大切です。すべてが成功するわけではありませんが、その経験が次のチャンスを掴むための糧となります。

ここで、私の失敗談をお話しします。かつて、ある新規事業の立ち上げのチャンスがありました。しかし、リスクを恐れて躊躇してしまい、結局その機会を逃してしまいました。後になって、あのとき行動していれば大きな成功を収められたかもしれないと後悔しました。この経験から、チャンスだと感じたら、たとえ不安があっても一歩踏み出す勇気が必要だと学びました。

さて、ここまでの話をまとめてみましょう。
易経の『乾為天』九四の教えは、目標達成のために必要な要素を示しています。それは、

  1. 志を立てること

  2. 学び努力して実力と経験を積むこと

  3. タイミングを観る洞察力を養うこと

これらの要素が揃ったとき、皆さんは大空を飛ぶ龍のように、目標に向かって飛躍することができるのです。

しかし、忘れてはいけないのは、時には立ち止まって自分自身を振り返ることの大切さです。目標に向かって突き進むだけでなく、時には深い内省の時間を持つことで、本当に自分が望む方向に進んでいるかを確認することができます。


参考出典

機を捉える~躍龍の時代
今まさに大空に舞い上がろうとする龍を「躍龍」という。龍が空を飛ぶことは、物事の達成を意味する。そのために、時には飛躍を試み、時には深い淵に退いて初志をたがえていないかと内観する。
物事の達成には、志を立て、学び努力して培った実力と経験に加え、タイミングを観る洞察力が必要となる。勝負の世界では一瞬の機を捉えられるかどうかが勝敗の分かれ目。事業にもビジネスチャンスがあり、兆しを察する力が必要である。

易経一日一言/竹村亞希子

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