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まいにち易経_0120【オープンな協力が未来を切り開く:同族主義からの脱却】同人宗においてす。吝なり。[13䷌天火同人:六二]

六二。同人于宗。吝。 象曰。同人于宗。吝道也。

六二は、人に同じうするにそうおいてす。りんなり。 象に曰く、人に同じうするに宗においてす、吝の道なり。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

今日お話しするのは、『天火同人』六二についてです。これは、志を同じくする者たちが手を取り合い、協力して物事を成し遂げるための教訓が詰まった内容です。皆さんがこれからリーダーシップを発揮し、仲間を導く上で、非常に参考になるポイントが多いとおもいます。

まず、この卦の核心部分にあるのは「協力」と「公正さ」です。リーダーシップというものは、ただ単にチームをまとめるだけでは不十分で、目的を達成するために全員が心を一つにする必要があります。そして、その協力が成り立つための土台となるのが「公の場」での行動です。つまり、オープンで公平な姿勢が求められます。

一つの例として、皆さんもよく耳にする「同族経営の失敗」という話を少ししてみましょう。企業を家族や親戚だけで固めてしまい、外部の意見を受け入れないというのは、まさにこの『天火同人』の六二で警鐘を鳴らしている状況に非常に近いです。同じ血縁や親しい関係の中だけで物事を進めると、客観性が失われ、偏狭な視点に陥りがちです。この状態は「同人宗においてす」と表現されていますが、宗というのは親族や身内を指す言葉です。つまり、身内だけで固まってしまうと、外の世界から孤立してしまうということです。

実際に、成功した企業と失敗した企業の違いを見てみると、多くの場合、失敗した企業は外部の視点や批判に対して耳を閉ざし、身内だけの小さな世界に閉じこもってしまっていることが多いです。例えば、創業当初は家族だけで経営してうまくいっていた会社でも、規模が大きくなるにつれてその同族的な体制が足かせになり、外部からの新しい知恵や意見を取り入れられなくなることがあります。これが原因で、成長が止まったり、最悪の場合、倒産に至ることもあるのです。

皆さんも将来、リーダーとして何かをまとめる立場に立つでしょう。そのときに大切なのは、志を同じくする人たちと協力し合いながら、公の場で透明性を保ち、公正な判断を下すことです。閉ざされた環境で偏った判断をしてしまうと、自分では気づかないうちに大きな間違いを犯してしまうことがあります。これは歴史的にも繰り返し見られることであり、多くの組織やリーダーがその失敗を経験しています。

例えば、古代中国では一族の中での結束が強調されすぎた結果、外部の敵に対する防御力が弱くなり、国家全体の崩壊に至った事例も少なくありません。外の世界を拒むことで、結果的には自らの身を危険に晒すことになったわけです。これは企業や組織にも同じことが言えます。つまり、内輪で固めすぎてしまうと、外部の変化に対応できなくなり、最終的には競争に負けてしまうのです。

では、どうすれば良いかというと、「外部の意見を取り入れること」を忘れないことです。特にリーダーとしては、自分の意見だけに固執せず、他者の視点を尊重し、異なる意見を受け入れる姿勢が必要です。この姿勢がなければ、組織は成長を続けることができず、やがて衰退してしまいます。だからこそ、『天火同人』の六二が教えているように、リーダーは公正でオープンな場で物事を進めることが求められているのです。

また、面白い話として、オープンな場での協力がいかに重要かを示す例として、自然界の「共生関係」を挙げることができます。例えば、サンゴ礁とその周りに住む魚たちは、互いに助け合いながら共存しています。サンゴは魚に住処を提供し、魚はサンゴを掃除しながら保護します。この関係は、どちらかが自己中心的な行動を取ることなく、互いに協力し合うことで成り立っているのです。このような共生関係は、リーダーシップの世界でも大いに学べるものがあります。自分だけの利益を追求するのではなく、チーム全体の利益を考えながら協力し合うことが成功への鍵となります。

ここで少し易経の話に戻りましょう。『天火同人』の六二は、「協力し合う」というテーマを通して、リーダーに対して非常に重要なメッセージを送っています。それは、リーダーとしての役割は、自分の周りの人々と協力し合い、公正さと透明性をもって行動することである、ということです。これを怠ると、チームの中に不和が生まれ、最終的には目標を達成できなくなってしまいます。

皆さんがこれからリーダーシップを発揮していく中で、忘れないでほしいのは「協力」と「公正さ」です。公の場でオープンに物事を進め、外部からの意見を積極的に取り入れることが、皆さんが成功するための大切なステップになるでしょう。そして、その姿勢がチーム全体に広がり、全員が心を一つにして目標に向かって進むことができるようになります。『天火同人』の六二が教えているように、リーダーとは、一人で成し遂げるのではなく、チーム全体で協力し合って成し遂げるものなのです。

最後にもう一度強調したいのは、どんなに優れたリーダーでも、一人では限界があるということです。周りの人々と共に、公正さを保ちながら協力し合うことで、初めて大きな成功を手にすることができるのです。皆さんが将来、そのようなリーダーとして成長していくことを心から期待しています。


参考出典

公に立って行う②
人と志を同じくして協力し合い、一つの物事をなすためには、公の場に立って行わなくてはいけない。公でオープンな場ではなく、身びいきや、同族以外を顧みない偏狭な姿勢で行えば、決して物事をなし遂げることはできない。
そう」は親戚、身内、同族であり、私的で親密な関係の集まりをいう。
同族会社が失敗する要因は、まさにこの「同人宗においてす」で、身内ばかりを遇する偏狭さにあるといえるだろう。

易経一日一言/竹村亞希子

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