まいにち易経_1204【信頼で築く未来:リーダーシップの三原則】君子はその身を安くして而る後に動き、その心を易くして而る後に語り、その交を定めて而る後に求む。[繋辞下伝:第五章]
子日。君子安其身而後動。易其心而後語。定其交而後求。
君子脩此三者。故全也。危以動。則民不與也。懼以語。則民不應也。无交而求。則民不與也。莫之與。則傷之者至矣。
易日。莫益之。或擊之。立心勿恆。凶。
ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る
今日は、優れたリーダーが持つべき三つの能力についてお話ししたいと思います。私が今日お伝えしたいのは、単なる理論ではなく、私が長年の経験を通じて感じたことでもあります。皆さんが将来リーダーとして活躍する時に、この教えが少しでも役立つことを願っています。
1. 危ない時には動かない
まず、優れたリーダーは「危ない時には動かない」ということです。これは非常に重要な考え方です。人は、困難な状況に直面すると、何とかしようと焦ってしまうことがあります。しかし、冷静に考えてみてください。無理に行動を起こして、事態を悪化させることが本当に賢明でしょうか?
私がまだ若かった頃、ある大きなプロジェクトに関わっていました。そのプロジェクトは予想外のトラブルに見舞われ、状況は非常に厳しくなりました。多くの人が焦り、次々と対策を提案しましたが、結局どれも奏功せず、事態はさらに悪化しました。私はその時、焦って行動するよりも、一度立ち止まって状況を見極めることが重要だと学びました。そして、しばらく経ってから、冷静に対策を練り直し、最終的には成功を収めることができました。
「負ける喧嘩はしない」という言葉がありますが、これはまさにこのことを指しています。自分にとって不利な状況では、無理に動くのではなく、じっと我慢して好機を待つことが大切です。嵐が過ぎ去るまで待つというのは、時にリーダーとして最も賢明な選択となるのです。
2. よく考え、確信を持ってから語る
次に、「よく考え、確信を持ってから平易な言葉で語る」という能力です。思いつきで話をすると、信頼を失うだけでなく、組織全体に混乱を招くことがあります。ですから、リーダーは常に冷静であり、自分の言葉に責任を持つべきです。
例えば、スティーブ・ジョブズが製品発表を行う時、彼は決して即興で話をすることはありませんでした。彼は細部にまでこだわり、何度もリハーサルを重ねた上で、シンプルで分かりやすい言葉でメッセージを伝えました。ジョブズの話は、誰もが理解できるように工夫されていたため、多くの人々の心に深く響いたのです。
また、確信を持って話すということは、ただ強く言い切ることではありません。むしろ、自分の中で十分に考え抜いた上で、相手に伝わるように話すことです。これは、リーダーがメッセージを発信する際に、非常に重要な要素となります。リーダーの言葉がしっかりと組織に浸透すれば、その組織は一つにまとまり、大きな力を発揮するでしょう。
3. 親しく交際し、信頼を深める
最後に、「人とは親しく交際し、その信頼を深めてから物事を求める」ということです。リーダーシップは、信頼の上に成り立っています。信頼がなければ、どんなに素晴らしいビジョンや戦略があっても、それを実現することは難しいでしょう。
皆さんもご存知の通り、ビジネスの世界では「ネットワーキング」が非常に重要視されています。しかし、単なる表面的な繋がりではなく、真の意味での信頼関係を築くことが求められます。これには時間がかかることもありますが、じっくりと信頼を築いていくことが、最終的には大きな成果を生むのです。
私はかつて、あるパートナー企業との間で大きなプロジェクトを進めていました。初めはお互いに探り合うような関係でしたが、時間をかけて信頼関係を築いていくうちに、相手の考えや価値観を理解し合えるようになりました。その結果、私たちは非常に良好な関係を築き上げ、プロジェクトも成功に導くことができました。信頼があったからこそ、難しい局面でもお互いを支え合うことができたのです。
今日お話しした三つの能力、「危ない時には動かない」、「よく考え、確信を持ってから語る」、「親しく交際し、信頼を深める」、これらはリーダーとして成功するために非常に重要です。
皆さんがこれからリーダーとしての道を歩む中で、何度も困難に直面するでしょう。その時こそ、この三つの教えを思い出してほしいと思います。そして、冷静さと信頼を持って行動することで、多くの人々を導くリーダーへと成長していってください。
最後に一つ、お伝えしたいことがあります。古代のリーダーたちは、ただ単に戦いに勝つことだけがリーダーシップだと考えていませんでした。むしろ、いかにして民衆の心を掴み、彼らと共に平和な社会を築くかを重視していました。現代でも同じことが言えます。力で押し通すのではなく、共感と信頼によって人々を導くことこそが、真のリーダーシップなのです。
参考出典
#まいにち易経
#易経 #易学 #易占 #周易 #易 #本田濟 #易経一日一言 #竹村亞希子 #最近の学び #学び #私の学び直し #大人の学び #学び直し #四書五経 #中国古典 #安岡正篤 #人文学 #加藤大岳 #繋辞下伝