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まいにち易経_1218【時を味方に:自然のリズムに調和する力】晦に嚮えば入りて宴息す。[17䷐澤雷随:象伝]

象曰。澤中有雷隨。君子以嚮晦入宴息。

象に曰く。沢中に雷あるは随なり。君子以てくらきにむかって入りて宴息えんそくす。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

今日は「沢雷随たくらいずい」という易経の卦についてお話ししたいと思います。この「沢雷随」というのは、将来のリーダーとしてみなさんが直面するであろう多くの課題に対して、非常に示唆に富んだ教えを持っています。少し難しいかもしれませんが、できるだけわかりやすく、そして皆さんの今後の人生やキャリアに役立つ形でお伝えしたいと思います。

まず、「時に随う」という言葉について考えてみましょう。これは、「状況に応じて柔軟に対応する」という意味です。私たちは、日々の生活や仕事の中で、様々な状況に直面します。時には、物事がうまく進む時もあれば、なかなか前に進まない時もあるでしょう。特に、リーダーとしての役割を担う皆さんにとっては、順調な時と逆風に立ち向かう時の両方があるでしょう。
例えば、仕事が順調に進んでいる時には、どんどん先に進めるでしょう。しかし、逆に状況が厳しくなり、勢いが失われてきた時に無理に物事を進めようとすると、かえって失敗してしまうことがあります。易経の「沢雷随」の教えは、まさにこの点にあります。時に逆らわず、その流れに従うことが大切だと説いているのです。

ここで少し、興味深い話をしたいと思います。
昔の船乗りたちは、風を読むことがとても上手でした。風向きや海の流れを見極め、それに合わせて帆を調整することで、目的地にたどり着くことができたのです。もし、風が逆に吹いているのに無理に進もうとすると、船は進むどころか、風に押し戻されてしまいますね。これと同じように、私たちも状況に応じて適切な判断を下し、無理をせずに流れに乗ることが必要なのです。

「沢雷随」の教えは、リーダーシップにおいても非常に重要です。リーダーとしての役割は、常に最前線で物事を進めることだけではありません。時には、状況を冷静に見極め、チームや組織のために最適なタイミングを選ぶことが求められます。これが「時に随う」ことの本質です。例えば、経営判断においても、投資のタイミングや新規プロジェクトの開始時期を慎重に選ぶことが成功への鍵となります。また、この「時に随う」という考え方は、個人の成長やキャリア形成にも応用できます。皆さんは、今後多くのチャンスや挑戦を迎えるでしょう。しかし、すべてのチャンスがすぐに掴むべきものではありません。時には、自分のスキルや経験を積み重ねるために、慎重に時を待つことも大切です。逆に、時が来たと感じたら、その時には迷わず行動することが求められます。このように、時の流れに逆らわず、最適なタイミングで行動することが、成功への道を切り開くのです。

もう一つ、興味深い例え話をしましょう。古代中国の戦略家、孫子は「兵法」において、戦いの時には「敵が疲れ果てるまで待て」と述べています。これは、無駄な戦いを避け、敵が自ら崩れる瞬間を見計らうという戦略です。これもまた、時に随うという考え方に通じるものがあります。焦らず、時が熟すのを待つことが、勝利への鍵となるのです。

ここまでお話ししてきたように、「沢雷随」の教えは、リーダーとしての皆さんにとって非常に価値のあるものです。状況に応じて柔軟に対応し、無理をせずに最適なタイミングで行動することが、長期的な成功をもたらすでしょう。皆さんが今後のキャリアにおいて、どのような状況に直面しても、この教えを思い出し、冷静な判断と行動を心がけていただければと思います。

最後に、人生は波のようなものです。高く舞い上がる時もあれば、低く沈む時もあるでしょう。しかし、その波のリズムを読み取り、自然と調和しながら進むことで、皆さんはきっと大きな成果を手にすることができるでしょう。私たちが求めるべきものは、時の流れを感じ取り、それに従いながら自らの道を切り開く力です。この「沢雷随」の教えを、ぜひ心に留めておいてください。


参考出典

時にしたが
日が落ちて暗くなった時は家に入って休息せよ、といっている。
時にしたがうとは、自然の時に逆らわないこと。勢いが弱くなってきた時に強引に事を進めても阻まれるだけである。
しかし、時に随えば、時を味方にできる。そして、時を味方にできれば、いずれ時を用いることができるようになるのである。
このように、沢雷随の卦は時に随うことを教えている。

易経一日一言/竹村亞希子

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