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まいにち易経_0820【身の程知らずの安請け合い】徳薄くして位尊く、知小にして謀大に、力小にして任重ければ、及ばざること鮮し。[繋辞下伝:第五章]

子日。德薄而位尊。知小而謀大。力少而任重。鮮不及矣。

子曰く、徳薄くして位尊くらいたっとく、知小にしてはかりごと大に、力少ちからすくなくして任重にんおもし。及ばざることすくなし。

朱子『本義』では力小に作るが、唐の李氏『集解』では力少に作る。
『後漢書』周章伝賛の注、三国志』王脩伝注の引用では力少になっているし、
小だと上に知小とあるのと重複するので少のほうがよい(清の銭大昕『養新録』)。
知は智と同じ。

孔子はおっしゃった。「徳が薄いのに位が高く、知恵が乏しいのに大きな計画を立て、力が足りないのに重い責任を背負うと、災難が自分に降りかかるだろう」と。
『50䷱火風鼎』九四に「鼎の足が折れ、君主の御馳走がひっくり返り、鼎全体がずぶ濡れになる。凶」とあるが、これは、自分の能力を超えた責任を負い、その重荷に耐えられない状態を示している。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

易経の『繋辞下伝:第五章』に、こんな言葉があります。
「徳薄くして位尊く、知小にして謀大に、力少くして任重し。及ばざること鮮し。」

少し難しい言葉かもしれませんね。でも、心配いりません。一緒に紐解いていきましょう。

まず、この言葉が伝えようとしているのは、リーダーの位置にある人の心構えです。簡単に言えば、「実力も能力もないのに高い地位についていると、大抵の場合、問題が起きてしまいますよ」ということです。

具体的に見ていきましょう。この教えは三つの要素から成り立っています。

  1. 「徳薄くして位尊く」:徳が薄いのに地位が高い

  2. 「知小にして謀大に」:知恵が小さいのに大きな計画を立てる

  3. 「力少くして任重し」:力が少ないのに重い責任を負う

これらの状態になると、「及ばざること鮮し」、つまり「うまくいかないことがほとんど」だと言っているのです。

皆さんも、学校や部活動で似たような経験をしたことがあるかもしれません。例えば、勉強もスポーツも苦手なのに、なぜか学級委員長に選ばれてしまった。そして、運動会の企画を任されたけれど、うまくいかなかった...。そんな経験です。

では、なぜこのようなことが問題なのでしょうか?

まず、「徳薄くして位尊く」について考えてみましょう。徳というのは、簡単に言えば「人格」や「品性」のことです。高い地位にいる人が、自分の欲望だけを追求したり、部下をいじめたりしたら、どうなるでしょうか?組織全体の雰囲気が悪くなり、みんなのやる気が失せてしまいます。

これは、植物の世界で例えるとわかりやすいかもしれません。大きな木が周りの小さな植物の日光を奪ってしまうようなものです。その木自体は大きくても、周りの植物が育たなければ、森全体の生態系は崩れてしまいます。

次に、「知小にして謀大に」。これは、自分の能力以上のことを計画してしまうことです。例えば、料理の基本も知らないのに、いきなり高級レストランを開店しようとするようなものです。結果はどうなるでしょうか?おそらく、美味しい料理は作れず、お客さんは来なくなり、お店はすぐに潰れてしまうでしょう。

最後に、「力少くして任重し」。これは、自分の力量を超えた責任を負うことです。例えば、泳ぎが得意でもないのに、海で溺れている人を助けようとするようなものです。結果的に、自分も溺れてしまい、二人とも危険な目に遭うかもしれません。

これらの例から分かるように、リーダーの位置にある人が適切な能力や資質を持っていないと、自分だけでなく、周りの人々や組織全体に悪影響を及ぼす可能性があるのです。

では、どうすれば良いのでしょうか?

易経の教えは、単に「高い地位に就くな」と言っているわけではありません。むしろ、「高い地位に就くならば、それに見合う徳、知恵、力を身につけなさい」と教えているのです。

具体的には、以下のようなことが大切だと考えられます:

  1. 徳を磨く:他人への思いやりを持ち、公平・公正な判断ができるよう心がけましょう。自己研鑽を怠らず、常に謙虚な姿勢を保つことも大切です。

  2. 知恵を増やす:日々の学習や経験を通じて、幅広い知識と洞察力を身につけましょう。また、自分一人で考えるだけでなく、多様な意見を聞き、それを統合する能力も重要です。

  3. 力を蓄える:ここでいう「力」は、単に体力だけでなく、精神力や実行力も含まれます。困難な状況でも諦めずに取り組む忍耐力、周りの人々を巻き込んでいく統率力なども、リーダーにとって重要な「力」です。

これらは一朝一夕には身につきません。長い時間をかけて、少しずつ積み重ねていく必要があります。でも、焦る必要はありません。むしろ、今からゆっくりと、着実に自分を成長させていけばいいのです。

ここで、歴史上の人物を例に挙げてみましょう。

徳川家康は、若い頃から数々の苦難を経験し、それを乗り越えることで徳を磨き、知恵を蓄え、力を養いました。そして、60歳を過ぎてから天下人となり、その後の平和な江戸時代の礎を築きました。

また、リンカーン大統領も、貧しい家庭に生まれ、独学で法律を学び、何度も選挙に落選しながらも諦めずに政治家としての道を歩み続けました。そして、アメリカが最も困難な時期に大統領となり、国を導きました。

彼らの例が示すように、リーダーシップは一夜にして得られるものではありません。長い年月をかけて、自分自身を磨き続けることが重要なのです。

これからの人生、様々な困難に直面することもあるでしょう。でも、それらを乗り越えていく過程こそが、皆さんを真のリーダーへと成長させるのです。自信を持って、一歩一歩前に進んでいってください。

皆さんの未来に、大いに期待しています。頑張ってください!


参考出典

力小にして任重けれ
道徳が薄くて地位だけが高く、少しの智慧で大業を起こし、力が小さいのに責任が重ければ、たいてい禍が及ぶものである。及ばないのは稀であるといっている。
これは、国家でいえば大臣、会社組織でいえば重役の位置にある人についての言葉である。知(智慧)仁(徳)勇(力量)の徳は、どれ一つ欠けても任務を負えない必需の徳である。

易経一日一言/竹村亞希子

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