まいにち易経_1115【私心を手放す勇気が未来を拓く】憧憧として往来すれば、朋爾の思いに従う。[31䷞澤山咸:九四]
九四。貞吉悔亡。憧憧往來。朋從爾思。 象曰。貞吉悔亡。未感害也。憧憧往來。未光大也。
ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る
「憧憧往来」。なんだか難しそうに聞こえますが、実はとても身近な経験を表現しているんですよ。皆さんも、何かに迷ったり、心がウロウロしてしまうような経験はありませんか?そう、まさにそれなんです。
例えば、こんな場面を想像してみてください。大学生の太郎君が就職活動中です。IT企業に行きたいけど、親は公務員になってほしいと言っている。友達は外資系を勧めてくる。彼女は地元で働いてほしがっている。太郎君の心は、まさに「憧憧往来」の状態です。あっちに行ったり、こっちに行ったり。心が落ち着かず、どうしていいかわからない。
この「憧憧往来」の状態は、リーダーにとって大きな課題となります。なぜなら、リーダーは決断を下さなければならない立場にあるからです。でも、心が定まらなければ、適切な判断はできません。
ここで、易経は興味深いアドバイスをしてくれます。「朋爾の思いに従う」という言葉です。これは、周りの人々もそれぞれ自分の考えや感情で迷っているという意味です。つまり、あなただけじゃないんですよ。みんな迷っているんです。
古代ギリシャの哲学者ソクラテスは、「無知の知」という考え方を提唱しました。これは、自分が無知であることを知ることが真の知恵の始まりだという考え方です。「憧憧往来」の状態も同じかもしれません。自分が迷っていることを認識することが、問題解決の第一歩なのかもしれません。
では、どうすれば「憧憧往来」の状態から抜け出せるのでしょうか?易経は、その答えも教えてくれます。それは、「私心を捨てて感じ入るところがなければ、決して思いは定まらない」というものです。
ここで言う「私心」とは何でしょうか?それは、自分の欲望や偏見、先入観のことです。例えば、お金が欲しいから、名誉が欲しいから、楽をしたいから、といった思いです。これらの「私心」に惑わされると、物事の本質を見失ってしまいます。
リーダーにとって、この「私心を捨てる」という行為は非常に重要です。なぜなら、リーダーの決断は多くの人々に影響を与えるからです。自分の利益だけを考えて決断を下せば、組織全体に悪影響を及ぼす可能性があります。
スティーブ・ジョブズは、アップル社を率いる際、常に「顧客に最高の体験を提供する」ことを目標としていました。彼は自分の利益や名声ではなく、製品の品質と顧客満足度にこだわりました。これは、まさに「私心を捨てて」物事の本質を見極めた例と言えるでしょう。
しかし、「私心を捨てる」というのは、簡単なことではありません。人間である以上、完全に私心を捨てることは難しいでしょう。でも、少なくともそれを意識することはできます。自分の決断が私心に基づいていないか、常に自問自答することが大切です。
そして、「感じ入る」ということも重要です。これは、物事の本質を深く理解し、心から納得するということです。表面的な理解ではなく、本当の意味でその物事の価値や意義を感じ取ることです。
リーダーにとって、この「感じ入る」能力は非常に重要です。なぜなら、リーダーは常に新しい情報や課題に直面するからです。それらを表面的に理解するだけでなく、深く感じ入ることで、より適切な判断や行動につながるのです。
稲盛和夫さんは、「動機善なりや、私心なかりしか」という言葉を大切にしていました。これは、自分の行動の動機が善であるか、私心がないかを常に問い直すという意味です。これは、まさに易経の教えと通じるものがありますね。
ここまでの話をまとめてみましょう。
「憧憧往来」の状態、つまり心が迷っている状態は誰にでもあります。
しかし、特にリーダーにとっては、この状態から抜け出すことが重要です。
そのためには、「私心を捨てる」こと、そして物事に「感じ入る」ことが大切です。
これは簡単なことではありませんが、常に意識し、努力することで改善できます。
皆さんは、将来のリーダーとして期待されている方々です。きっと、様々な場面で「憧憧往来」の状態に陥ることがあるでしょう。そんな時は、この易経の教えを思い出してください。私心を捨てて、物事の本質に迫る。そして、深く感じ入る。これらを実践することで、きっと皆さんの心は定まり、より良い判断ができるようになるはずです。
そして、最後に一つ付け加えたいことがあります。それは、この過程を楽しむということです。心が迷うこと、それ自体は決して悪いことではありません。むしろ、それは成長の証かもしれません。新しい課題に直面し、悩み、考え抜くこと。それこそが、リーダーとしての成長につながるのです。
ですから、「憧憧往来」の状態になったとしても、焦らないでください。それを成長の機会だと捉え、じっくりと向き合ってみてください。そうすることで、きっと皆さんは素晴らしいリーダーに成長していくことでしょう。
参考出典
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