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まいにち易経_0516【障がいを越え、着実に本質を極めよ】剛健篤実にして輝光日に新たなり。[26䷙山天大畜:彖伝]

彖曰。大畜。剛健篤實。輝光日新。其徳剛上而尚賢。能止健。大正也。不家食吉。養賢也。利渉大川。應矣天也。
彖に曰く、大畜は剛健篤実(ごうけんとくじつ)にして、輝光(きこう)日に新たなり。その徳剛上(のぼ)りて賢(けん)を尚(たっと)ぶ。能く健を止(とど)む。大正なり。家食せずして吉なるは、賢を養えばなり。大川を渉るに利あるは、天に応ずればなり。

山天大畜(さんてんたいちく)
ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

今日は、易経の六十四卦の一つ『山天大畜』の彖伝(たんでん)の言葉をとりあげてお話ししたいと思います。

この『山天大畜』という卦(か)は、山のように堅実に德を蓄え、天のように光り輝く人間となることを説いています。皆さんは、これから社会の中核を担う存在です。どんな困難に遭遇しても、粘り強く前に進み、着実に自らを鍛え上げていくことが重要なのです。

例えば、ある企業が大規模な事業再編に直面した際、社長は一時の業績不振に動揺することなく、従業員一人ひとりの力を結集し、長期的な視点で改革に取り組みました。そうした地道な努力の積み重ねにより、ついに業績は立ち直り、会社は新たな飛躍を遂げることができたのです。これは山のように堅実に德を蓄えた結果、天のように輝く成果が得られた好例と言えるでしょう。

また、この卦は「剛健篤実」、つまり強く健全で篤実であることの重要性を説いています。社会にはさまざまな誘惑や歪んだ価値観がはびこっています。しかし、リーダーとなる皆さんは、健全な心身と正しい判断力を持ち続けなければなりません。

皆さんがプロジェクトを進めているとしましょう。障害が現れるたびに諦めてしまうのではなく、その障害を乗り越えるためにどうすればよいかを考え、行動することが重要です。これが「剛健」の精神です。
「篤実」とは、単に努力するだけではなく、その努力がしっかりと実を結ぶように、内面的な成長や実質的な価値を蓄積することを指します。例えば、ある分野での専門知識を深めるために、毎日少しずつ勉強を続けることが「篤実」です。

次に「輝光日新」という言葉について考えてみましょう。これは、努力を重ねることで、その成果が日々新たに現れることを意味します。例えば、スポーツ選手が毎日のトレーニングを通じて技術を向上させ、試合でその成果を発揮する様子を思い浮かべてみてください。このように、日々の努力は必ず外に現れ、周囲の人々にも影響を与えます。

『山天大畜』の教えでは、賢者を尊重し、その知恵を取り入れることが強調されています。これは、リーダーシップにおいて非常に重要な要素です。優れたリーダーは、自分一人で全てを解決しようとせず、他人の知恵や経験を積極的に取り入れることができる人です。

例えば、歴史的な偉人たちも、常に賢者を傍に置き、その助言を聞いていました。これにより、彼らはより広い視野で物事を判断し、適切な決断を下すことができました。ですから、皆さんも自分の周りにいる賢明な人々の意見を大切にし、学ぶ姿勢を持ち続けてください。

「家食せずして吉」これは、自分のためだけでなく、社会全体のために貢献することが重要だという意味です。例えば、ボランティア活動やコミュニティサービスに参加することで、自分だけでなく多くの人々に恩恵をもたらすことができます。
また、企業経営においても、ただ利益を追求するだけでなく、社会的な責任を果たすことが求められます。環境保護活動や地域社会への貢献など、企業としての社会的責任を果たすことで、長期的な信頼と支持を得ることができます。

「大川を渉るに利」これは、大きな挑戦に直面したときこそ、果敢に挑むことが重要だという意味です。例えば、皆さんが新しい市場に進出しようとしているとしましょう。その市場には多くの未知のリスクが伴いますが、しっかりと準備し、計画を立てて挑むことで、大きな成果を得ることができるでしょう。

私が営々と経営に携わっていた頃、当時の社長は部下思いで知られていました。経営判断については熱心に社員の意見を聞き、適切なアドバイスをしてくれる重鎮も重用していました。おかげでチームワークが生まれ、会社は大きく発展することができました。リーダーは自分の力だけでは限界があります。上位の賢者の助言を求め、部下の力を結集することが肝心なのです。

以上が『山天大畜』の教えを基にしたリーダーシップの要点です。皆さんはこれからの社会を担う重要な存在です。困難に直面したときには、この教えを思い出し、粘り強く努力を続け、他人の知恵を尊重し、社会全体のために貢献することを忘れないでください。

最後に一つ、私の経験から言えることは、リーダーシップとは単なる役職や権力ではなく、人々に影響を与え、共に目標を達成するための信頼と尊敬に基づくものだということです。皆さんが素晴らしいリーダーとなり、未来を切り開いていくことを心から願っています。ありがとうございました。


参考出典

「剛健篤実」は障害があっても粘り強く、日々進み、何事も手厚く取り組み、中味と実質を蓄えること。
「輝光」とは力強い光。努力を重ね、日々新たに成長するならば、圧力や障害があっても、必ずその光(徳)は輝いて外に漏れ出ると教えている。
山天大畜は、山が天の養分(徳)を蓄える時。すそ野広く、高く蓄積する「大いなる蓄積」を説く卦である。

易経一日一言/竹村亞希子

大蓄は下卦が乾、剛健の徳がある。上卦艮は止まる、止まるべきところに止まるから、篤実の徳がある。
剛健篤実の美徳ある故に、その徳の輝きは日に日に新たとなる。それで大畜と名づける。卦の徳としては、もと五にいた陽剛が上位に昇って上九となったもので、これは六五の君が賢者を尊んでいることを示す。外卦は止(とど)む。下卦が健で、過度な勢いで昇進して来るのを、しかと止めることができる。これも賢を尊ぶのも、皆な大いに正しい道である。

易(朝日選書)/本田濟

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