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まいにち易経_0208【変化を見極める力 ー 固定観念を超越せよ】剛柔相易わり、典要となすべからず、ただ変の適くところのままなり。[繋辞下伝:第八章]

易之爲書也不可遠。爲道也屢遷。變動不居。周流六虚。上下无常。剛柔相易。不可爲典要。唯變所適。

易の書たるや遠くすべからず。道たるや屢々しばしばうつる。変動して居らず、六虚りくきょ周流しゅうりゅうす。上下つね無く、剛柔相ごうじゅうあかわる。典要てんようを為すべからず、へんところのままにす。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

易経には「剛柔」という概念があります。これは陰と陽のことを指しています。また、「典要」という言葉もあります。これは日常生活の中で当たり前とされているルールや約束事のことです。

ここで皆さんに考えていただきたいのは、この世界は常に変化しているということです。たとえば、昔は良いとされていたことが、今では悪いと考えられることもあります。逆に、昔は悪いとされていたことが、今では良いと評価されることもあるでしょう。

これは、ビジネスの世界でもよく見られる現象です。例えば、かつては終身雇用制度が日本の強みだと言われていました。しかし、グローバル化が進む中で、その考え方も少しずつ変わってきています。固定観念にとらわれすぎると、こういった変化に対応できなくなってしまうかもしれません。

では、どうすれば良いのでしょうか。易経は私たちに「固定観念を捨てる」ことの大切さを教えてくれています。これは言い換えれば、「柔軟な思考を持つ」ということです。

皆さんは料理をするとき、レシピ通りに作ることから始めると思います。でも、本当に美味しい料理を作るシェフは、レシピに縛られすぎず、その時々の食材の状態や食べる人の好みに合わせて、臨機応変に調整できる人です。これと同じように、ビジネスの世界でも、状況に応じて柔軟に対応できる人が求められているのです。

ここで、私が若い頃に経験した失敗談をお話ししましょう。新製品の開発プロジェクトを任されたときのことです。私は当時の業界の常識に従って製品を設計しました。しかし、完成した製品は市場のニーズとずれていて、結果的に大失敗に終わってしまいました。

この経験から学んだのは、「常識」や「当たり前」と思っていることを、時には疑ってみることの大切さです。もし当時、業界の常識にとらわれず、顧客の声に真摯に耳を傾けていたら、もっと良い製品が作れたかもしれません。

易経が教えてくれているのは、まさにこのことです。物事の変化や動向を正しく見極めるためには、まず「良い」「悪い」といった固定観念を一度脇に置いて、目の前の状況をありのままに観察することが大切なのです。

これは簡単なことではありません。人間は誰しも、自分の経験や知識に基づいて物事を判断しがちです。でも、それだけでは見落としてしまうものがたくさんあるのです。

例えば、自然界を見てみましょう。カメレオンは周囲の環境に合わせて体の色を変えます。これは生き残るための戦略です。ビジネスの世界も同じです。環境の変化に適応できる企業が生き残り、成長していくのです。

また、歴史を振り返ってみても、固定観念を打ち破った人々が大きな変革を起こしてきました。例えば、ガリレオ・ガリレイは、当時の常識であった天動説に疑問を持ち、地動説を唱えました。彼の考えは最初は受け入れられませんでしたが、後の科学の発展に大きな影響を与えました。

皆さんも、将来のリーダーとして、このような柔軟な思考を持つことが求められるでしょう。それは、単に「昔のやり方」を否定することではありません。過去の知恵や経験を尊重しつつ、新しい状況に適応していく力が必要なのです。

具体的にどうすれば良いのでしょうか。まず、日々の生活の中で「なぜ」という問いかけを自分自身にしてみてください。「なぜこの方法でやっているのか」「他にもっと良いやり方はないだろうか」といった具合です。

また、異なる背景や経験を持つ人々の意見に耳を傾けることも大切です。多様な視点を取り入れることで、自分一人では気づかなかった新しい可能性が見えてくるかもしれません。

さらに、失敗を恐れないことも重要です。新しいことに挑戦すれば、必ず失敗はつきものです。でも、その失敗から学ぶことで、より良い結果につながることがあります。失敗を恐れるあまり、挑戦しないことの方が危険なのです。

易経の教えは、何千年も前のものですが、現代のビジネス社会にも通じる普遍的な知恵を含んでいます。変化の激しい現代社会では、固定観念にとらわれず、柔軟に対応できる力が何より大切です。

皆さんには、これからさまざまな経験を積んでいってほしいと思います。その過程で、時には困難に直面することもあるでしょう。でも、そんなときこそ、易経の教えを思い出してください。固定観念を捨て、状況をありのままに見つめる。そうすることで、新たな可能性が見えてくるはずです。


参考出典

固定観念を捨てる
「剛柔」は陰陽。「典要」は常なる約束事、常の規則。
陰陽は常一定でなく、時に転化するものである。ある時は良いとされるものが、ある時は悪いとされる。
だから物事の変化動向を正しく見極めるには、まず一度、良し悪しの固定観念を捨てて、混沌とした変化をそのまま見つめることが大切なのである。

易経一日一言/竹村亞希子

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