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まいにち易経_0226【陰の美学:未来を築くリーダーシップの真髄】牝馬の貞に利ろし。牝馬は地の類、地を行くこと彊なし。[02䷁坤為地:彖伝]

彖曰、至哉坤元、萬物資生。乃順承天。坤厚載物、徳合无疆、含弘光大、品物咸亨。牝馬地類、行地无疆。柔順利貞、君子攸行。先迷失道、後順得常。西南得朋、乃與類行。東北喪朋、乃終有慶。安貞之吉、應地无疆。

彖に曰く、至れるかな坤元こんげん、万物りて生ず。乃ち天に順承じゅんしょうす。坤厚くして物を載す、徳无疆むきょうに合う。含弘光大がんこうこうだいにして、品物ひんぶつことごとく亨る。牝馬は地の類、地を行くこと无疆むきょうなり。柔順利貞、君子の行うところなり。先んずれば迷いて道を失い、後るればしたがって常を。西南にともを得、すなわち類と行くなり。東北に朋を喪う、乃ち終に慶びあるなり。安貞あんていの吉は、地の无疆むきょうなるに応ず。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

こんは地、つまり大地を象徴しています。大地は広大で、すべてのものを包み込み、支えています。私たちが生きているこの地球も、自然の力や環境、そして人々の生活を受け入れて支えてくれる、まさに大地そのものです。では、『坤為地』の中で語られている「陰の徳」とは何でしょうか。陰陽思想では、陽が積極的で創造的な力を象徴するのに対して、陰は受容的で、柔軟な力を象徴します。この陰の徳を理解することは、リーダーとしての新しい視点を持つために非常に重要です。

牝馬の象徴
『坤為地』の彖伝では、「陰の徳」を象徴するものとして牝馬ひんばが取り上げられています。牝馬とは、メスの馬のことですが、ここでは単に動物の種類を指しているだけではありません。牝馬は「従順」の象徴として描かれています。従順と聞くと、ただ言われたことをそのままやる、受け身なイメージを持つかもしれません。しかし、ここでの従順とは、単に指示に従うという意味ではなく、状況や相手の意図を深く理解し、それに合わせて自分を柔軟に変えることを指しています。
牝馬は牡馬に比べて従順であり、その従順さが彼女の力強さとなります。例えば、皆さんがチームを率いるリーダーとしての立場に立った時、ただ指示を出すだけではなく、チームメンバーの意見や考えを受け入れ、その上で最適な方向に導いていくことが求められます。これが「陰の徳」の本質です。

「貞に利ろし」の意味
次に、「貞に利ろし」という言葉に触れてみましょう。この言葉は、正しいと信じたことには徹底的に従い、それを貫くことの重要性を示しています。現代社会では、時には流れに逆らうことも必要ですが、ここで言われている「従う」という行為は、自己の信念や価値観を持ちながらも、状況に応じて柔軟に対応する姿勢を持つことです。
たとえば、ビジネスの世界でも、従来の方法に固執することなく、新しいアイデアや方法を受け入れる柔軟さが求められます。しかし、その柔軟さはただ流されるだけではなく、しっかりとした自分の基準や信念を持ちながら、状況に応じて変化していくことが重要です。

面従腹背と諂うことの違い
『坤為地』では、見せかけだけで従う「面従腹背」や、強い者に媚びへつらう「諂うこと」は、陰の徳ではないとされています。これは非常に大切なポイントです。表面的には従っているように見えても、心の中では反発していたり、媚びへつらってただ利益を得ようとしているだけでは、真のリーダーシップを発揮することはできません。
リーダーとは、時に部下や同僚に対して厳しい決断を下さなければならないこともありますが、その決断がどれだけ正当であっても、真の理解と信頼を得ることができなければ、チーム全体の力を引き出すことはできません。だからこそ、真のリーダーシップには「誠実さ」が求められるのです。

陰の徳の現代的解釈
さて、この陰の徳を現代のリーダーシップにどう活かせるか、少し考えてみましょう。現代のビジネス社会では、リーダーシップとは単に指示を出し、部下に従わせることではありません。むしろ、リーダーはチームの一員として、メンバーの力を最大限に引き出し、彼らが自らの力を発揮できる環境を整えることが求められます。
たとえば、大企業のCEOやプロジェクトリーダーがチームを率いる時、彼らは単に自分の意見を押し付けるのではなく、メンバーの意見を聞き、理解し、時にはそれを取り入れていくことが求められます。このような柔軟な姿勢こそが、陰の徳を体現していると言えるでしょう。

馬の象徴とリーダーシップ
古代中国では、馬は非常に重要な動物であり、その扱いには特別な注意が払われていました。特に戦場では、馬は戦士にとって欠かせない存在であり、そのため馬の調教や管理は非常に重視されていたのです。馬は単に乗り物ではなく、戦友であり、パートナーでありました。その馬をリーダーがどのように扱うかが、そのリーダーの資質を示すとも言われています。
この話は、リーダーが部下や同僚をどのように扱うかに通じるものがあります。リーダーが部下をただの道具としてではなく、共に戦う仲間として尊重し、信頼を築くことができれば、そのチームはより強力で、一体感を持って目標に向かうことができるでしょう。


参考出典

陰の徳
陰陽の徳を象徴する生き物のうち、陽は天を翔る龍により表される。それに対して、地を行く牝馬は陰の徳である「従順」の象徴となる。牝馬は牡馬よりずっと従順である。「貞に利ろし」とは従うべき時は正しく、堅く徹底的に従うこと。そうすることで限りない力が発揮できる。見せかけの面従めんじゅう腹背ふくはいや、強い者にへつらうことは陰の徳ではない。

易経一日一言/竹村亞希子

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