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まいにち易経_0119【志を一つに、広がる野へ:協同の力で世界を変える】同人野においてす。亨る。[13䷌天火同人:彖伝]

彖曰。同人。柔得位得中而應乎乾。曰同人。(同人曰)同人于野。亨。利渉大川。乾行也。文明以健。中正而應。君子正也。唯君子爲能通天下之志。

彖に曰く、同人は、柔くらいを得ちゅうを得て乾に応ずるを、同人と曰う。同人おいてす、亨る。大川を渉るに利ありとは、乾のこうなり。文明は以てけん、中正にして応ず、君子の正なり。ただ君子のみく天下の志しを通ずと為す。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

今日は、皆さんに「天火同人」という卦について話をしようと思います。これは、易経の中でも「協力」や「共に力を合わせる」ということに深く関係している部分です。私が長年のビジネス経験で感じたことも交えながら、皆さんがリーダーとして成長するためのヒントを一緒に考えていければと思っています。

まず、この「同人」という言葉について説明しましょう。「同人」という言葉、現代ではアニメや漫画の世界でよく使われる「同人誌」などの言葉からイメージするかもしれませんね。しかし、易経の「同人」はもっと深い意味を持っています。心を一つにして、多くの人が協力して大きな志を達成する、そういう意味が込められています。皆さんも、リーダーとして組織やチームを率いていく中で、単独ではなく、仲間と協力することが大切だという場面に直面するでしょう。

私もかつて、大企業の経営をしていた時に、困難な状況に直面しました。その時、自分一人では到底解決できない課題がいくつも出てきました。例えば、ある国際的なプロジェクトでは、文化や言語が異なるチームをまとめる必要がありました。その時に学んだのは、「自分の考えだけに固執してはいけない」ということです。様々な意見を受け入れ、全体としてどのように協力して目標を達成するかを考える姿勢が、結果的に成功への道を開いたのです。

「天火同人」の「野」という言葉には、多くの意味があります。例えば、「野原」や「隠し立てのない公の場」、または「日常から遠く離れた場所」といった解釈があります。この「野」という概念を、リーダーシップにどう応用できるかを一緒に考えてみましょう。

リーダーとして成功するためには、自分の慣れ親しんだ日常領域から飛び出して、外部の世界に目を向けなければならない時が来るでしょう。つまり、「野」に立つということです。野原に立つというのは、一見すると不安定で守るものがない状況に感じるかもしれません。でも、そこには「公平の場」もあるんです。日常のしがらみや慣れ親しんだルールを一度捨てて、広い視野で物事を見て判断する必要があるということですね。

私が経営者として経験した中で、特に国際的な取引や異文化の交流に関わるプロジェクトは、「野」に立つ経験そのものでした。異なる文化背景を持つパートナーたちと協力するには、自分の慣れた環境や考え方に固執していてはうまくいきません。むしろ、相手の文化や価値観を理解し、共通の目標に向けて協力することが重要でした。それこそが「同人」の考え方なのです。

リーダーとして成功するためには、自分自身の経験や考えだけでなく、多くの人々の知識や経験を活かすことが求められます。そして、それを実現するためには、皆さん自身がまず「野」に出て、さまざまな人々と公平な立場で接する姿勢が必要です。これを簡単な例で言えば、普段の自分の環境にいるだけでは得られない新しいアイデアや知識を、外部の人々と交流することで得るということです。

また、皆さんがリーダーとして活動していく中で、協力が必要だと感じる場面も多くなるでしょう。ここで大切なのは、「自分が中心」という発想を捨てることです。リーダーは決して一人で成功するわけではなく、チーム全体が成功するための橋渡し役であるべきです。これが「同人」の精神に通じるものです。

「野」という言葉のイメージは、実は西洋のリーダーシップ理論にも通じるところがあります。例えば、リーダーが「コンフォートゾーン(安心領域)」を出て新しい挑戦に取り組むという考え方は、ビジネスや自己啓発の世界でもよく言われることです。これはまさに「野に立つ」姿勢と同じです。自分の居心地の良い場所を離れて、新しい環境や未知の領域に踏み出すことが、成長に不可欠だというわけです。

「天火同人」の教えは、リーダーが自らの殻を破り、他者との協力を通じて大きな志を達成する道筋を示しています。私自身も、何度もこの教えに助けられてきました。特に大きなプロジェクトや難局に直面したとき、この卦の教えを思い出し、自分一人で戦うのではなく、他者と力を合わせることが成功の鍵だと感じました。

最後に、皆さんがこれからリーダーとして歩んでいく中で、「同人」の考え方をぜひ大切にしてほしいと思います。時には、自分の考えが絶対だと思える瞬間もあるでしょう。しかし、周りの意見を取り入れ、協力し合うことで、さらに大きな成果が得られるということを忘れないでください。リーダーとしての道のりは決して平坦ではないでしょうが、仲間と共に歩むことで、その道が少しでも楽になるはずです。

「天火同人」という卦は、私たちに人と人との繋がりや協力の大切さを教えてくれます。リーダーは孤独だと思われがちですが、実際には協力が不可欠です。皆さんも、この教えを胸に刻み、将来のリーダーとしての歩みを進めてほしいと心から願っています。


参考出典

公に立って行う①
同人どうじん」は同人誌の「同人」の語源で、心を一つにし、多数が協力すること。それにより、一つの大きな志を達成できる。
」には多くの意味がある。「朝野ちょうや」といえば朝廷・政府と民間。他にも、野原、隠し立てのない公の場、日常から遠く離れた場所、世界の果て、などの意味がある。
志を成し遂げるため、人と協同して行おうとする時は、自分の日常領域から出て、公平の場である「野」に立たなければならないと教える言葉である。

易経一日一言/竹村亞希子

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