まいにち易経_0616【土台を築く】上はもって下を厚くし宅を安んず。[23䷖山地剥:象伝]
上以厚下安宅。
上以て下を厚くし宅を安んず。
リーダーは自分を節約し、部下にはしっかりと報いて、自分の地位を安定させるべきである。リーダーが成功するためには、自己節制を心がけ、部下に対しては厚遇することが重要だ。部下が安心して働ける環境を提供することで、リーダー自身の立場も揺るぎないものとなる。
ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る
『山地剝(さんちはく)』という卦についてお話しします。これは非常に重要な教訓を含んでいます。『山地剝』は、簡単に言うと「高い山が土台から崩れる」という象徴です。この象が何を意味するかというと、特に高い地位にある人々に対する警告です。
具体的な教えとして、「上以厚下安宅」という一節があります。これを現代のリーダーシップに置き換えて考えてみましょう。
この一節は、リーダーが質素倹約を心がけ、部下に対しては厚く報いるべきだという教えです。皆さんがリーダーとして成功するためには、まず自分自身を節制することが大切です。贅沢や無駄遣いを避け、自己管理を徹底することで、部下に対する信頼感が生まれます。
一方で、部下に対しては厚遇することが求められます。部下が安心して働ける環境を提供することで、彼らのモチベーションやパフォーマンスは向上し、ひいては組織全体の成功につながります。
リーダーになってしまえば、権力に酔い、部下を押し付ける者も出てきます。しかし、そうした上から目線の態度は、組織の足元を掘り崩すことになります。易経には「山地剥」という卦象があり、これは高い地位の者が追放される危険性を表しています。組織の基盤が崩れれば、どんなに偉い地位でも簡単に転がり落ちてしまうのです。
リーダーが自分の地位を安定させるためには、部下との信頼関係を築くことが不可欠です。信頼は一朝一夕に築けるものではありません。日々の積み重ねが重要です。上の立場になる前から、質素で倹約な生活を送ることが大切です。自分を律し、欲望を抑えることで、人々から信頼を得られるのです。
かつて私が経営していた会社で、ある若手社員が斬新なアイデアを提案してくれました。最初はそのアイデアが成功するかどうか疑問でしたが、彼の熱意と努力を信じて支援しました。その結果、そのプロジェクトは大成功し、会社全体の成長に大きく貢献しました。これは、信頼と厚遇がもたらした成果です。
『山地剝』の象徴するところは、基盤がしっかりしていなければ、高い地位も保てないということです。リーダーが自己中心的になり、部下の声を無視したり、彼らを大切にしなければ、その組織はやがて崩れてしまいます。まさに「高い山が土台から崩れる」という状態です。
歴史には、りっぱな君主が次々と追放された例が数多くあります。例えば、ロマノフ王朝のニコライ2世は、自らの暮らしに何の倹約も望まず、国民の疲弊に全く目を向けませんでした。そして第一次世界大戦の失敗で、ついには革命で追放されてしまいました。権力の座につき、民の暮らしを無視すれば、このように滅びるのが常であります。
古代中国の「井戸」の話をしましょう。井戸は、どれだけ深く掘り下げても、水が出なければ何の役にも立ちません。しかし、水が出る井戸は、どんなに小さくても地域の人々にとってなくてはならない存在です。リーダーも同じです。どれだけ高い地位にいても、部下との信頼がなければ、その地位は無価値です。リーダーとしての成功は、自分を節制し、部下に厚く報いることから始まります。信頼を築き、部下が安心して働ける環境を提供することで、組織全体の安定と成長が実現します。
皆さんは、まだこれから活躍の場を求める時期です。今こそ質素な生活を心がけ、人々に施しの心を示す良い機会なのです。そうすることで、確かな基盤を築き上げ、将来リーダーとなった時にも、組織を安定させ繁栄に導くことができるでしょう。
易経の教えは、古くから伝わる人生の知恵です。皆さんの前に広がる人生の道のりは決して平坦ではありません。しかし、この教えを胸に刻み、人々に対する思いやりの心を忘れずにいれば、必ずや素晴らしいリーダーとなれるはずです。皆さんの活躍を、心から期待しています。
参考出典
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