見出し画像

まいにち易経_1229【終着点は一つ:心の羅針盤に従え】天下帰を同じくして塗を殊にし、致を一にして慮を百にす。[繋辞下伝:第五章]

易日。憧憧往來。朋從爾思。子日。天下何思何慮。天下同歸而殊塗。一致而百慮。天下何思。

易に曰く、憧憧しょうしょうとして往来おうらいすれば、朋爾ともなんじの思いに従うと。曰く、天下何を思い何をおもんぱからん。天下は帰を同じうしてみちことにし、一致にして百慮ひゃくりょする。天下何を思い何を慮らんと。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

人生という旅路を歩む中で、私たちはしばしば「自分の道はこれで正しいのか」と悩んだり、迷ったりすることがあります。特に、リーダーとしての責任が増してくると、その迷いはさらに大きくなるでしょう。
しかし、今日の話を聞いて、少しでもその迷いが和らげばと思います。

易経には「みち」という言葉が出てきます。これは道や帰途を意味し、私たちが歩むべき道を象徴しています。易経の教えによれば、天下のすべてのことは、最終的には同じところに帰着するのだと言います。つまり、どの道を選んだとしても、結局たどり着く場所は一つであり、そこに至る過程が少し違うだけだということです。

皆さんもこれまでに、様々な選択を迫られた経験があるでしょう。大学を選ぶ時、就職先を決める時、さらには日々の仕事の中でも、無数の選択肢の中で最善の道を選ぼうと努力してきたと思います。その努力は非常に大切であり、決して無駄にはなりません。しかし、時には「これで良かったのか」と思い悩むこともあるでしょう。

私がこの歳になって感じるのは、どんな道を選んだとしても、結局は自分なりの正解にたどり着くのだということです。もちろん、時には遠回りをしたり、道を外れてしまったりすることもあります。しかし、それらの経験が最終的には自分を成長させ、強くしてくれるのです。

私自身、経営者として多くの困難な選択をしてきました。その中には失敗も多くありました。しかし、その失敗があったからこそ、次に進むべき道が見えたのです。成功だけが人を成長させるのではなく、むしろ失敗から得られる教訓こそが、私たちを真に成長させてくれるのだと実感しています。

「千里の道も一歩から」という言葉がありますが、この言葉が表しているのは、どんなに長い道のりでも、一歩一歩が積み重なって成し遂げられるということです。易経の教えと共通する点は、最終的な目的地にたどり着くためには、一歩一歩を大切にしながら歩むことが重要だということです。

しかし、私たちが忘れてはならないのは、その一歩一歩がどのようなものであれ、最終的に自分を導いてくれる道は一つだということです。だからこそ、何かに悩んで立ち止まるのではなく、「今、この瞬間にできる最善のことをする」という心持ちで進んでいくことが大切なのです。

そして、もう一つ重要なことがあります。それは、自然の流れに身を任せるということです。易経は「自然の成り行きに則した道を進むことが一番である」と教えています。これは、自分の力だけで何とかしようと無理をするのではなく、時には状況に身を任せることも必要だということです。

例えば、リーダーとしての皆さんは、チームを引っ張っていく責任を感じるでしょう。ですが、時にはチームメンバーに任せてみることも必要です。彼らが持っている力を信じ、自然に任せることで、驚くべき成果が生まれることもあるのです。

私が経営者として学んだ最も大きな教訓の一つは、すべてをコントロールしようとするのではなく、信頼できる人々に任せることで、自分も周りもより良い結果を得られるということです。これは皆さんがリーダーとして成長する上で、ぜひ心に留めておいてほしいポイントです。

また、人生には予定通りに進まないことが多々あります。それでも、そうした出来事も自然の成り行きの一部として受け入れることができれば、心に余裕が生まれます。そして、その余裕こそがリーダーとしての判断力を高め、より良い選択を導いてくれるのです。

皆さんに伝えたいのは、人生の道は一つだけではないということです。いくつもの道があり、それぞれに困難や喜びが待っています。しかし、どの道を選んでも、最後には皆さんにとっての正しい場所にたどり着くでしょう。それを信じて、自分自身を信じて、これからの道を進んでください。

どんな道を選んでも、迷ったり悩んだりすることはありますが、それは自然なことです。大切なのは、その迷いや悩みから逃げるのではなく、しっかりと向き合い、その上で一歩を踏み出すことです。そして、その一歩一歩が、皆さんを素晴らしいリーダーへと成長させるでしょう。


参考出典

致を一にして慮を百にす
みち」は途、帰途。天下のことは帰するところは同じであるが、人は殊更にそれぞれの道を行き、あれこれと苦慮している。
人の人生も道は幾通りもある。しかし、どんな境遇を経ても至るところは一つであると考えれば、何を思い煩うことがあるだろう。
いたずらに思い煩えば、遠回りになり、また道を外し迷ってしまう。自然の成り行きに則した道を進むことが一番である。

易経一日一言/竹村亞希子

#まいにち易経
#易経 #易学 #易占 #周易 #易 #本田濟 #易経一日一言 #竹村亞希子 #最近の学び #学び #私の学び直し #大人の学び #学び直し #四書五経 #中国古典 #安岡正篤 #人文学 #加藤大岳 #繋辞下伝

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集