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まいにち易経_0913【絪縕の法則:天地が紡ぐ生命の交響曲】天地絪縕して万物化醇し、男女精を構せて、万物化生す。[繋辞下伝:第五章]

天地絪縕、萬物化醇。男女構精。萬物化生。易曰。三人行則損一人。一人行則得其友。言致一也。

天地絪縕して、万物化醇かじゅんす。男女、せいあわせて、万物化生かせいす。易に曰く、「三人行けば、すなわ一人いちにんらす。一人行けば、則ち其の友を」と。いつを致すを言うなり。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

絪縕いんうん」これは、目に見えない気が絡み合い、交わることを意味しています。そして「化醇かじゅん」これは、例えば日本酒が発酵して美味しくなっていくように、物事が変化して形を成すことを表しています。

これらの言葉が教えてくれるのは、世の中のあらゆるものは、異なる要素が交わり合って生まれるということです。天と地の気が交わって、私たちの住むこの世界のすべてのものが形作られる。男性と女性が出会い、愛し合うことで、新しい命が誕生する。
これらはすべて、「絪縕いんうん」と「化醇かじゅん」の過程なのです。

さて、ここで皆さんに考えていただきたいことがあります。私たちの社会や組織も、まさにこの原理で成り立っているのではないでしょうか?

例えば、会社を思い浮かべてみてください。営業部門と製造部門、財務部門と人事部門、それぞれが独自の「気」を持っています。これらの部門が交わり、互いの強みを活かし合うことで、会社全体が成長していくのです。

また、チームを率いるリーダーとしての皆さんの役割を考えてみましょう。チームメンバー一人一人が持つユニークな才能や個性、それらは皆さんにとっての「気」です。これらの「気」をうまく絡み合わせ、調和させることができれば、素晴らしいイノベーションや成果を生み出すことができるでしょう。

ここで、私の経験をお話しさせていただきます。私が若いころ、ある大きなプロジェクトを任されたことがありました。チームには、性格も能力も全く異なるメンバーがいました。最初は、この違いがストレスの原因になり、プロジェクトは難航しました。

しかし、あるとき「絪縕いんうん」と「化醇かじゅん」の考え方を思い出したのです。そこで、メンバーそれぞれの個性を「異なる気」として捉え直し、それらを上手く交わらせる方法を考えました。例えば、細部にこだわる慎重派のメンバーと、大胆なアイデアを出す冒険派のメンバーを同じタスクに割り当てたのです。

最初は衝突もありましたが、徐々にお互いの良さを認め合い、補い合うようになりました。結果として、慎重さと大胆さのバランスが取れた、革新的yet実現可能な提案を生み出すことができたのです。これこそが、「絪縕いんうん」と「化醇かじゅん」の実践だったと、今では確信しています。

さて、ここで易経の教えに戻りましょう。「陰陽ニ気の純粋な交わりほど大きな発展をするものはない」とあります。これは非常に重要な点です。

「陰陽」というのは、相反する性質を持つものの代表です。例えば、理論と実践、保守と革新、リスクと安定性などが挙げられるでしょう。これらは一見すると相容れないもののように見えます。しかし、この教えが示唆しているのは、むしろこのような異なる要素こそ、純粋に交わらせることで大きな発展が生まれるということなのです。

ビジネスの世界で言えば、新規事業と既存事業の関係がこれに当たるかもしれません。新規事業は革新的でリスクが高い一方、既存事業は安定していますが成長に限界があります。多くの企業がこの両立に苦心していますが、うまくバランスを取れた企業こそが、長期的に成功を収めているのです。

また、個人のスキルセットについても同じことが言えるでしょう。例えば、論理的思考とクリエイティブ思考は、一見すると相反するスキルのように思えます。しかし、この両方を高いレベルで持ち合わせている人こそが、複雑な問題解決や革新的なアイデア創出において、大きな力を発揮するのです。

ここで、皆さんに考えていただきたいことがあります。自分自身の中にある「陰陽ニ気」は何でしょうか?また、自分のチームや組織の中にある「陰陽ニ気」は何でしょうか?そして、それらをどのように「純粋に交わらせる」ことができるでしょうか?

これらの問いに答えを見出し、実践していくことが、皆さんがこれからリーダーとして成長していく上で、非常に重要になってくるはずです。

ただし、ここで注意しなければならないのは、「純粋な交わり」という点です。単に異なる要素を混ぜ合わせれば良いわけではありません。それぞれの本質を理解し、尊重しながら、最適な形で融合させていく必要があるのです。

これは、日本の伝統的な「和」の精神にも通じるものがあります。「和」は単なる調和や妥協ではなく、異なる要素がそれぞれの個性を保ちながら、より高次の統一を達成することを意味します。この「和」の精神こそ、「絪縕いんうん」と「化醇かじゅん」の現代的な解釈と言えるかもしれません。

最後に、この教えを日々の生活やビジネスにどのように活かせるか、具体的な例を挙げてみましょう。

  1. 多様性の重視:チーム編成の際、似た者同士ではなく、異なるバックグラウンドや専門性を持つメンバーを意図的に組み合わせてみましょう。

  2. 対立の建設的活用:意見の対立を避けるのではなく、それを新しいアイデアを生み出すチャンスと捉えましょう。

  3. バランスの追求:短期的な成果と長期的なビジョン、効率性と創造性など、相反する要素のバランスを常に意識しましょう。

  4. 自己成長:自分の得意分野だけでなく、苦手な分野にも積極的に挑戦し、バランスの取れた能力開発を目指しましょう。

  5. オープンマインド:異なる意見や新しい考え方に対して、常にオープンな姿勢を保ちましょう。

  6. 融合の促進:異なる部署や専門分野間のコラボレーションを積極的に推進しましょう。

  7. 反省と適応:成功も失敗も、異なる「気」が交わった結果と捉え、そこから学び、次の行動に活かしていきましょう。

いかがでしょうか。易経の「絪縕いんうん」と「化醇かじゅん」の教えは、何千年も前に生まれたものですが、現代のビジネスや人生においても非常に重要な示唆を与えてくれます。


参考出典

天地絪縕
絪縕いんうん」とは気がもつれ合い、交わること。
化醇かじゅん」は発酵して純粋な酒ができるように変化して形を為すこと。
天地の気が交じり合って万物はその形を成し、男女が相交わってはじめて生命が誕生する。
陰陽ニ気の純粋な交わりほど大きな発展をするものはない。

易経一日一言/竹村亞希子

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