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まいにち易経_0125【水のように、信念を貫け】水は流れて盈たず、険を行きてその信を失わざるなり。[29䷜坎為水:彖伝]

彖曰。習坎。重險也。水流而不盈。行險而不失其信。維心亨。乃以剛中也。行有尚。往有功也。天險不可升也。地險山川丘陵也。王公設險以守其國。險之時用大矣哉。

彖に曰く、習坎は、重険ちょうけんなり。水は流れてたず、険を行きてその信を失わず。れ心とおるは、乃ち剛中を以てなり。行けばたっとぶことあり、往くときは功あるなり。天の険はのぼるべからざるなり。地の険は山川丘陵さんせんきゅうりょうなり。王公は険を設けて以てその国を守る。険の時用大じようおおいなる哉。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

坎為水かんいすい」難しそうに聞こえるかもしれません。でも、本当は私たちの身近にある水の性質から、人生の大切な教訓を学ぶことができるんですよ。

まず、水のことを少し考えてみましょう。水って、どんな特徴がありますか?そうですね、流れますよね。川を思い浮かべてみてください。山から海まで、ずっと流れ続けています。途中で大きな岩にぶつかっても、急な崖があっても、水は決して止まりません。上から下へ、細い隙間を見つけては流れていきます。

これ、実は私たちの人生にそっくりなんです。

人生も、水の流れのように、常に変化し続けます。順調な時もあれば、困難な時もある。でも、水が流れ続けるように、私たちも前に進み続けなければいけません。

ここで、ちょっとした豆知識をお話しします。皆さんは「水」という漢字の成り立ちをご存じでしょうか?「水」の字は、もともと川の流れを表していたそうです。中央の一本の線が川の流れ、両側の点が川の両岸を表しているんです。つまり、「水」という字自体が、絶え間ない流れを意味しているんですね。

さて、この「坎為水」の教えで特に大切なのは「信」という概念です。これは「信じる力」のことです。どんなに困難な状況に陥っても、必ずそこから抜け出せると信じる力。そして、今の状況をありのまま受け入れ、それでも前に進もうとする力。これが「水」の本質なんです。

ここで、ビジネスの世界の例を挙げてみましょう。皆さんも知っているかもしれませんが、世界的な企業、アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズは、一度自分で立ち上げた会社から追放されるという経験をしています。普通の人なら、そこで諦めてしまうかもしれません。でも、ジョブズは違いました。彼は自分の能力を信じ、新しいチャレンジに挑戦し続けました。そして最終的に、アップルに復帰し、世界を変えるような製品を次々と生み出したんです。
これこそが、「坎為水」の教えが示す「信じる力」の実践だと言えるでしょう。

では、この教えを私たちの日常生活にどう活かせばいいのでしょうか?
まず、困難に直面した時、それを単なる「障害」としてではなく、「成長の機会」として捉えてみてはどうでしょうか。水が岩にぶつかっても新しい道を見つけるように、私たちも困難を乗り越える新しい方法を見つける機会だと考えるのです。

次に、自分自身の可能性を信じることです。水が最終的に海にたどり着くことを知っているように、私たちも自分の目標に到達できると信じることが大切です。自信がないときは、これまでの小さな成功体験を思い出してみるのもいいかもしれません。

そして、柔軟性を持つことです。水は形を変えて器に馴染むように、私たちも状況に応じて自分を変化させる勇気が必要です。ただし、水が本質的な性質を失わないように、私たちも自分の核となる価値観は守り続けることが大切です。

最後に、継続することの重要性です。水は絶え間なく流れ続けます。たとえ今は小さな一歩でも、それを続けることで大きな変化を生み出せるのです。

皆さんは「水滴石を穿つ」という言葉を聞いたことがありますか?これは、柔らかい水滴でも、絶え間なく同じ場所に落ち続ければ、やがて固い石に穴を開けることができる、という意味です。つまり、小さな努力でも、それを継続することで大きな成果を生み出せるということなんです。
この「水滴石を穿つ」の精神こそ、「坎為水」の教えそのものだと言えるでしょう。

さて、ここまでのお話を聞いて、皆さんはどう感じましたか?人生には様々な困難が待ち受けているでしょう。でも、それらは皆さんを止めるためではなく、より強くするために存在しているのです。

水が流れるように、皆さんも自分の道を進んでいってください。たとえ大きな岩にぶつかっても、必ず道は開けると信じてください。そして、その過程で自分自身の強さと可能性を発見してほしいと思います。

最後に、こんな言葉を贈りたいと思います。「人生は川の流れのようなもの。時に穏やかに、時に激しく流れる。でも、常に前に進んでいる。」

皆さんの人生が、豊かで力強い大河のようになることを願っています。そして、困難という岩にぶつかったとき、この「坎為水」の教えを思い出してください。必ず乗り越えられると信じて、前に進んでいってください。


参考出典

信じる力
水の性質は流れるところがあれば流れ、常に動いて止まることがない。岩にぶつかろうが、険しくとも流れ、状況がどうであれ、その本質を失うことがない。
坎為水の卦は険難が度重なる時、その険難から脱する術を説く。
どんな困難の中にあろうとも、必ず脱することができると信じる力、状況を真に受け入れて前に進もうとする力が「水」の本質、「信」である。

易経一日一言/竹村亞希子

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