まいにち易経_0711【飲食宴楽】雲の天に上るは需なり。君子もって飲食宴楽す。[05䷄水天需:象伝]
象曰。雲上於天需。君子以飲食宴樂。
需卦の卦象は、水(☵)が天上に集まって雲層となり、雲が天に満ちているがまだ雨が降らないので、待つ必要がある。君子はこの時、飲食を楽しみながら力を蓄える必要がある。
ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る
『水天需』の象徴は、雲が天に上る姿を示しています。つまり、天上に雲が集まり、もうすぐ雨が降るけれども、まだその時は来ていないという状態です。この状況をどう捉えるかがポイントです。
「需」という文字には「待つ」という意味があります。つまり、この卦は「待つことの大切さ」を教えてくれているのです。
皆さんは、待つことが苦手ではありませんか? 特に若い方々は、すぐに結果を求めがちです。でも、人生において、適切なタイミングを待つことはとても大切なスキルなのです。
皆さんは、未来のリーダーとしてこのような「待つ」瞬間にどう対応するかが非常に重要になります。
この卦の教えは、一言で言えば「準備と待機」です。天候が悪いときや経済が低迷しているときでも、冷静に準備を整え、来るべき時に備えておくことが重要だということです。例えば、企業経営においても、景気が悪いときにこそ次の成長に向けた準備をしっかりと行うことが求められます。
さて、この卦では「君子以て飲食宴楽す」とあります。これは単に飲み食いを楽しむという意味ではなく、余裕を持って状況に対処し、自分の力を蓄えておくことを指しています。現代のビジネスシーンにおいても、急な変化や困難に対応するためには、常に自分と組織の力を蓄えておくことが必要です。
一見すると、「楽しく飲み食いしていればいいんだ」と解釈されそうですが、そうではありません。ここでいう「飲食宴楽」とは、単なる宴会ではなく、もっと深い意味があるのです。
これは、待っている間の過ごし方について教えてくれています。ただ呆然と待つのではなく、その時間を有効に使うことが大切だというメッセージなのです。
例えば、皆さんが大きなプロジェクトの結果を待っているとしましょう。その間、ただボーっとしていては時間の無駄です。代わりに、新しいスキルを学んだり、人脈を広げたり、自己啓発に励んだりすることができますよね。これが「飲食宴楽」の本当の意味なのです。
また、この卦は「蓄え」の重要性も教えてくれています。雲が雨になるまでには時間がかかります。その間、地上の生き物たちは既存の水源で生き延びなければなりません。同様に、ビジネスや人生においても、良い時期だけでなく、困難な時期を乗り越えられるだけの「蓄え」が必要なのです。
これは財政的な意味だけではありません。知識、経験、人間関係など、あらゆる面での「蓄え」が大切です。皆さんは今、人生の春といえる時期にいます。この時期にしっかりと「蓄え」を作っておくことで、将来の「冬の時代」を乗り越えることができるのです。
ここで、歴史上の興味深い例を挙げてみましょう。古代エジプトのヨセフの話をご存知でしょうか? 彼は7年間の豊作の後に7年間の飢饉が来ると予言し、豊作の間に食糧を蓄えることを提案しました。その結果、エジプトは後の飢饉を乗り越えることができたのです。これは「水天需」の教えを実践した素晴らしい例といえるでしょう。
また、ビジネスの世界でも同様の例があります。アップル社は、スティーブ・ジョブズが CEO を追われた後の「冬の時期」を、既存の製品ラインと忠実な顧客ベースという「蓄え」によって乗り越えました。そして、ジョブズが戻ってきたとき、会社は新たな革新を起こす準備ができていたのです。
このように、「水天需」の教えは、古代から現代まで普遍的な wisdom として生き続けているのです。
さて、ここまでの話を整理してみましょう。「水天需」の卦が私たちに教えてくれることは、主に以下の3点です:
適切なタイミングを待つことの重要性
待っている間も有効に時間を使うこと
困難な時期に備えて「蓄え」を作ること
これらは、皆さんがこれからリーダーとして歩んでいく上で、非常に重要な指針となるでしょう。
待つことは、時として辛いものです。特に、若くてエネルギーに満ちあふれている皆さんにとっては、なおさらでしょう。しかし、適切なタイミングを待つことで、より大きな成功を手に入れることができるのです。
そして、待っている間も決して無駄にしてはいけません。新しい知識やスキルを学び、人間関係を深め、自己を磨く。そうすることで、チャンスが訪れたときに、最高の状態で挑むことができるのです。
最後に、「蓄え」の重要性。これは、ビジネスにおいても人生においても、非常に重要です。好調な時期こそ、将来の困難に備えて準備をすることが大切です。それは財政的な意味だけでなく、知識や経験、人間関係など、あらゆる面での「蓄え」を指します。
皆さんは、将来のリーダーとして大きな可能性を秘めています。しかし、成功への道のりは決して平坦ではありません。上り坂もあれば下り坂もあり、時には長い平坦な道が続くこともあるでしょう。そんなとき、この「水天需」の教えを思い出してください。
適切なタイミングを待ち、その間も自己研鑽を怠らず、常に将来に備えて「蓄え」を作る。これらを実践することで、皆さんは必ず素晴らしいリーダーになれると信じています。
参考出典
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