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まいにち易経_0809【時を畏れよ:一瞬の選択が未来を決める】故に乾乾す。その時に因りて惕る。[01乾為天/文言伝:第二節(人事)九三]

故乾乾。因其時而惕、雖危而无咎矣。

故に乾乾す。その時にりておそるれば、危うしといえども咎なきなり。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

この教えの核心は何でしょうか。それは「時間の大切さ」と「畏敬の念」です。

まず、時間の大切さについて考えてみましょう。皆さんは、一日24時間、誰にでも平等に与えられた時間を、どのように使っていますか? スマートフォンでSNSをチェックしたり、テレビを見たりする時間は、意外と多いのではないでしょうか。

私が若い頃、ある先輩から面白い話を聞きました。「人生は、コーヒーカップのようなものだ」と。最初は意味がわかりませんでしたが、こう続けられました。「カップの中には、大きな石や小石、砂、そして最後に注ぐコーヒーがある。これらは人生の中で大切なものを表している。大きな石は家族や健康など最も重要なもの。小石は仕事やキャリアなど。砂は些細な日常のこと。そしてコーヒーは、人生の楽しみだ。」

そして先輩は言いました。「もし砂から入れ始めたら、大きな石や小石を入れる余地がなくなってしまう。大切なものから順番に入れていくことが、充実した人生を送るコツなんだ。」

この話は、時間の使い方にも当てはまります。私たちには限られた時間しかありません。その中で、本当に大切なことから優先的に取り組むことが重要です。易経の教えは、まさにこのことを説いているのです。

次に、「畏れ謹む」という姿勢について考えてみましょう。これは、単に怖がるということではありません。自然の力や、自分を取り巻く環境、そして時間の流れに対して、深い敬意を持つということです。

例えば、皆さんは富士山を見たことがありますか? その雄大さに圧倒されたことはないでしょうか。あるいは、満天の星空を見上げて、宇宙の広大さに思いを馳せたことは? このような経験は、私たちに「畏敬の念」を抱かせます。

同じように、時間に対しても畏敬の念を持つことが大切です。時間は誰にも平等に与えられていますが、一度過ぎ去ったら二度と戻ってきません。だからこそ、一瞬一瞬を大切にする必要があるのです。

ここで、もう一つ面白い例え話をしましょう。「時間の銀行」というものです。想像してみてください。毎朝、あなたの口座に86,400円が入金されます。ただし、使わなかったお金は、その日の終わりにすべて没収されてしまいます。翌日には、また新たに86,400円が入金されます。さて、あなたならこのお金をどう使いますか?

実は、これは一日の秒数なのです。86,400秒。私たちは毎日、この「時間」という通貨を与えられています。使わなければ失われ、貯めることもできません。だからこそ、一秒一秒を大切に使う必要があるのです。

では、具体的にどうすれば良いのでしょうか。易経は「今、何をすべきか、その時々に徹して、今という時を活かしきることが大切である」と教えています。つまり、「今」に集中することが重要なのです。

例えば、仕事中はしっかりと仕事に集中する。家族と過ごす時間は、スマートフォンを離れて、家族との対話に集中する。自己啓発の時間は、本当に自分を高められるような活動に集中する。このように、その瞬間瞬間に全力を注ぐことが、時間を最大限に活かすことにつながるのです。

ここで、皆さんに問いかけてみたいと思います。昨日一日、皆さんはどのように過ごしましたか? 一日の終わりに、「今日は充実した一日だった」と感じられましたか? もし、そう感じられなかったとしたら、何が足りなかったのでしょうか?

易経の教えは、私たちに自問自答を促します。「今、自分は何をすべきか」「この時間を最大限に活かせているか」と。

しかし、ここで注意しなければならないのは、ただ忙しくすることが目的ではないということです。「勤勉に努力する」というのは、単に長時間労働をすることではありません。効率的に、そして意味のある形で時間を使うことが重要です。

例えば、アイゼンハワー大統領は、タスクの優先順位づけに「アイゼンハワー・マトリックス」というものを使っていたそうです。これは、タスクを「重要度」と「緊急度」の2軸で分類するものです。「重要かつ緊急」なものを最優先し、「重要だが緊急ではない」ものにも時間を割き、「重要でも緊急でもない」ものは思い切って削除する。このような考え方も、時間を効果的に使う一つの方法です。

また、「畏れ謹む」という姿勢は、単に時間だけでなく、周囲の人々や環境に対しても持つべきものです。例えば、先輩や上司の経験から学ぶ姿勢、同僚との協力関係を大切にする姿勢、部下の成長を支援する姿勢など、これらすべてが「畏れ謹む」という態度につながっています。

そして、忘れてはならないのが、自分自身に対する「畏れ謹む」姿勢です。自分の可能性を信じ、それを最大限に引き出すために努力する。同時に、自分の限界も理解し、適切な休息を取る。これも、自分自身に対する畏敬の念の表れと言えるでしょう。

最後に、この教えを日々の生活に取り入れる方法について、具体的な提案をさせていただきます。

  1. 毎朝、その日の目標を設定する。大きなものでなくても構いません。「今日は30分読書をする」「今日は同僚に感謝の言葉を伝える」など、小さな目標から始めてみましょう。

  2. 定期的に自己評価の時間を設ける。例えば、週末に「今週はどうだったか」と振り返る時間を作ってみてはどうでしょうか。

  3. 「今」に集中する練習をする。瞑想やマインドフルネスの実践が役立つかもしれません。

  4. 時間の使い方を記録してみる。一週間でも構いません。自分の時間がどこに使われているのか、客観的に見つめ直してみましょう。

  5. 感謝の気持ちを持つ。毎日、感謝できることを3つ挙げてみる。これは、日々の生活に対する畏敬の念を育むのに役立ちます。

皆さん、易経の教えは何千年も前のものですが、現代にも十分通用する深い智慧を含んでいます。時間を大切にし、謙虚さを忘れず、そして今この瞬間に全力を注ぐ。これらの姿勢は、皆さんが将来、優れたリーダーになるための基礎となるでしょう。

しかし、完璧を求めすぎる必要はありません。時には失敗することもあるでしょう。大切なのは、その失敗から学び、次に活かすことです。一歩一歩、着実に前進していく。そんな姿勢こそが、真のリーダーシップにつながるのだと私は信じています。

皆さんの前途は洋々としています。この易経の教えを胸に刻み、素晴らしい未来を切り開いていってください。私は皆さんの成長を、心から楽しみにしています。


参考出典

時を畏れる
終日勤勉に努力する。いかなる時も畏れ謹むことを忘れない。
無駄に時が過ぎるのを惜しみ、今、何をすべきか、その時々に徹して、今という時を活かしきることが大切である。
過ぎてしまった時は二度と戻ってこない。一瞬たりとも無駄にしないために大切なのが、時を畏れるという姿勢である。

易経一日一言/竹村亞希子

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