まいにち易経_0927【自然治癒の智慧:過剰な介入を避ける方法】无妄の疾あり。薬することなくして喜びあり。[25䷘天雷无妄:九五]
九五。无妄之疾。勿藥有喜。 象曰。无妄之藥。不可試也。
ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る
易経では、病気は「不自然さが重なって起こるもの」だと言っています。これは、現代の医学でも認められている考え方です。例えば、不規則な生活や偏った食事、ストレスの蓄積などが重なると、体調を崩しやすくなりますよね。
そして、興味深いのは治療法についての考え方です。「薬を用いずとも自然治癒力を高めれば治る」と言っています。これは、体の中にある自然の力を信じることの大切さを教えてくれています。皆さんも、風邪をひいたときに、すぐに薬を飲むのではなく、十分な睡眠と栄養を取ることで回復した経験があるのではないでしょうか。これこそが、自然治癒力を信じることの例です。
しかし、ここで注意が必要です。「むやみに薬を用いるとかえって病を長引かせることがある」とも述べられています。これは、過剰な対処が逆効果になることがあるという、重要な指摘です。
例えば、軽い風邪なのに強い抗生物質を使うと、体内の良い細菌まで殺してしまい、かえって回復を遅らせることがあります。これは、医療の世界だけでなく、ビジネスや人間関係など、人生の様々な場面にも当てはまる考え方です。
ここで、ビジネスの世界での例を考えてみましょう。
会社の業績が少し落ちたとします。そのとき、すぐに大規模なリストラや事業の縮小を行うのは、「むやみに薬を用いる」ことに似ています。確かに、短期的には効果があるかもしれません。しかし、長期的に見ると、会社の体力を奪い、回復を遅らせる可能性があるのです。
代わりに、現状をよく分析し、社員のモチベーションを高め、効率化を図るなど、会社の「自然治癒力」を高める方策を取ることが、より賢明な選択かもしれません。
人間関係においても同様です。友人との間に少しの行き違いがあったとき、すぐに激しく詰問したり、関係を切ってしまったりするのは、「むやみに薬を用いる」ことに似ています。時には、相手の気持ちを理解しようと努め、時間をかけて自然に関係が修復されるのを待つことが、最良の解決策となることがあるのです。
易経は更に、「何か問題に対して、あれこれと手立てを加えることで裏目に出て、よけいに問題が大きくなることがある」と警告しています。これは、過剰な介入が事態を悪化させる可能性があることを示唆しています。
例えば、子育ての場面を考えてみましょう。子供が何か失敗をしたとき、親があまりにも細かく指示をしたり、過度に干渉したりすると、かえって子供の自主性や創造性を損なう可能性があります。時には、子供自身に考えさせ、解決策を見つけさせることが、より良い成長につながるのです。
ビジネスの世界でも同じです。新しいプロジェクトを立ち上げるとき、細部まで全てをコントロールしようとすると、チームメンバーの自由な発想や創意工夫を阻害してしまう可能性があります。適度な自由と責任を与え、チームの自然な力を引き出すことが、より良い結果につながることがあるのです。
そして最後に、易経は非常に重要なアドバイスを与えてくれています。「その場合は、自然の時にまかせて見守ることが一番の薬になる」というのです。
これは、時には何もしないことが最良の行動になり得るという、深い洞察です。しかし、これは単に手をこまねいて何もしないということではありません。状況を注意深く観察し、適切なタイミングを待つという、積極的な姿勢を意味しているのです。
例えば、投資の世界では、市場が乱高下しているときに慌てて売買するのではなく、冷静に状況を見守り、適切なタイミングを待つことが、しばしば最良の戦略となります。
また、人材育成の面でも同様です。若い社員が失敗をしたとき、すぐに叱責したり、細かい指示を出したりするのではなく、その社員自身が問題に気づき、解決策を見出すのを見守ることが、真の成長につながることがあります。
参考出典
#まいにち易経
#易経 #易学 #易占 #周易 #易 #本田濟 #易経一日一言 #竹村亞希子 #最近の学び #学び #私の学び直し #大人の学び #学び直し #四書五経 #中国古典 #安岡正篤 #人文学 #加藤大岳 #天雷无妄 #自然治癒 #自然治癒力
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?