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探偵神宮寺マキヒコ、セーター殺人事件
解剖の結果、山口氏の死因は何らかのショックによる心臓麻痺だと分かった。これは事件ではなく事故だ。しかし神宮寺には少し引っかかる点があった。それは現場に落ちていた女物のセーターであった。
大胆に背中が露出し胸元が開いたデザインの、ネットでは『童貞を殺すセーター』などと呼ばれているセーターだった。山口氏は34歳であったが、失礼ながらおよそ女性にはモテそうもない風貌をしており、親しい知人の証言によると
あとがき(または世界で最も愚かなミステリー作家の述懐)
確か小学校低学年の頃だったと思う。短いお話を書いてみんなに発表しましょうという授業があった。今思えば、あの時書いたものが、私が初めて書いた小説だったかもしれない。どんな話だったかもほぼ覚えていないが、タイトルだけははっきりと覚えている。『桃金いっすんかぐやで浦島さんとうさぎと亀の鬼退治』というお話だった。
タイトルのまま、桃太郎と金太郎と一寸法師とかぐや姫と浦島太郎とうさぎと亀が鬼退治に行くお話
探偵神宮寺マキヒコ、三日月荘の怪
神宮寺の探偵事務所に怪しい招待状が届いたのは4月のことだった。三日月荘という別荘でゴールデンウィークを過ごされませんかという招きで、集合場所と日時のみが記されており、差出人の名前は書かれていなかった。きっと何かがあるに違いないと踏んだ神宮寺は、その誘いに乗ることにした。それが恐ろしいゴールデンウィークの始まりだった。
待ち合わせ場所に神宮寺が到着すると、そこには同じように招待状を受けたらしい男女
探偵神宮寺マキヒコ、スケッチブックの君
探偵なんて仕事をやっていると時々よく分からない依頼が来ることがあるものだが、その日神宮寺のところに舞い込んできた依頼はとりわけ変なものだった。亡くなった旦那の遺品であるスケッチブック、そこに繰り返し描かれている女性が誰なのかを調べて欲しい、という依頼であった。
依頼人は吉田ヨシエ67歳。亡くなった旦那のヨシオは大学時代のひとつ上の先輩で、3年前に病で亡くなった時は65歳だった。吉田は小さな部品工