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読書感想文 『海と毒薬』

【海と毒薬】


◽︎新潮社文学賞
◽︎毎日出版文化賞



九州大学生体解剖事件が題材。



この小説が戦争や権力闘争メインだけの小説だったらこれ程までに心が虚ろになることはなかった。



風変わりな町医者の過去を回想すればするほど周りの空気が澱むような感覚になる陰鬱な小説。話が良いとか悪いとかではなく、それだけ生々しい。

勝呂(すぐろ)という人物の負の感情が読み手に文章から感染してくるかのよう。



生体解剖実験
人を助けるためではない、実験としての手術をすることの残忍さで読み進めるのがしんどくなる。
人をモノとしてみたならば恐らくこんな感じだろう。
勝呂のように中途半端な判断で参加してしまったらそれこそ一生この時を背負い続けるしかないだろう。



ただ、こんなにも凄惨な小説でありながら長く読み続けられているのは、これを題材にした実験が行われていた事実があり、それを小説として評価されている現実があるから。


これからもこの小説は読み継がれて、人のタブーをタブーとして残るように継承していくんだろう。



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