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あたす。のエッセイ

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ちょっと変わった私の家族の本当にあったうそみたいなおはなし。
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2022年5月の記事一覧

ハードボイルドおばあちゃん

ハードボイルドおばあちゃん

私のおばあちゃんは昭和3年生まれ。
戦争の始まりと終わりを生きた。
そんなおばあちゃんは田舎の小さな村で昔ながらの家屋に住み、古き良き日本の暮らしをしていた。

おばあちゃんちのお風呂は、となりのトトロに出てくるような、薪で沸かす五右衛門風呂。家の前の畑には四季折々の野菜を育て、春には筍や山菜を採りに山へ行き、夏には山ほどのスイカを収穫し、秋には栗を拾い、冬には白菜や大根のお漬物をつけたりしていた

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読めない妹

読めない妹

2つ下の妹と私は何もかも正反対だ。
彼女は人見知りで、内弁慶。周りに流されやすいのにマイペース。

小さい頃からボーイッシュなものを好む姉の私とは違い、女子ど真ん中ストレートなものを通過していく妹は、小学生でピチレモンとなかよしを購読し、サンリオ柄のデカいペンケースの中に可愛い数種類のカラーペンやその他可愛い文房具の数々を所有し、高校生でeggとPopteenのダブル読みのおかげでいつのまにか当時

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巻き込まれるお母さん

巻き込まれるお母さん

お母さんは世界中のお人好しを足して、お人好しで割った様な人だ。

厄介な頼まれごとを引き受けるのは日常茶飯事で、怪しげな新聞をつきあいで定期購読したり、知人の離婚問題の親権争いに東奔西走したり、友人の旦那の浮気現場を押さえるのに同行したり。

挙げ句の果てには、何十年も前に離婚した元夫(まぁいわゆる私の父)の亡骸を遠く離れた地まで引き取りに行ったり、(前記事:消えるお父さん参照)
その母親であるか

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消えるお父さん

消えるお父さん

「タバコ買いに行ってくるわ。」
と言ったままお父さんは消えた。

小学4年の秋、駄菓子屋で私と友達がたくさんお菓子を買ってもらった日のことだった。

放浪癖のあるお父さんは、私が物心つく前からちょこちょこ消えていた。
けれど数日ないし数ヶ月後にはふらっと帰ってきていた。

だからあの時も「いってらっしゃい!」と元気よく見送った。

しかしあの時のお父さんは違ったようだ。
お父さんがタバコを買いに行

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