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ぽるぽの乗車文章
2021年8月15日 20:01
高層ビルの48階、大きな窓から見えるのは規則正しく並んだビル群と、どんよりとした曇り空のパノラマだ。蒸し暑い外とは違い、冷房で快適な温度が保たれたここは、オフィスの会議室である。 そこでは1人の女性社員が机の上のノートパソコンのキーボードをたたき、データをまとめている。首からは『ATNコーポレーション』、『横山』と書かれた社員証をさげていた。 コの字型に机が並んだ会議室の床には、男物の革靴が
2021年5月16日 15:12
鬱蒼とした森を越え、太い茨に覆われた道を切り開き、高く険しい岩壁をよじ登ると現れるのは濃い霧に包まれた石の城。その城の空にはいつも、重たい積乱雲が固まったかのように存在し、雷の音が常に聞こえる。民たちは言う、あの城には世にも恐ろしい魔王が住んでいると。遥か昔からそう伝わっていると。「我輩は魔王!この世の全てに破壊の雨を降らす者。我にかかれば、世界を牛耳るのもちょろいもの。人間共よ、恐怖に震え
2021年4月30日 12:10
暗闇の世界に、学生服の少年が倒れ込んでいる。ただただ一人、ぽつんと仰向けに寝ていた。 やがてその少年に向かって光がさす。何もない真っ暗闇に現れたその一直線の光は、太陽のようなやさしい光ではなく、人工的で冷たい。 その眩しさからか、少年は開いていない瞼をぎゅうっと閉め、それから恐る恐る開けた。眼球は状況を把握しようと力強くぎょろぎょろ右へ左へ動く。ぼうっとしていた頭がその異常な世界をとらえた