眠りにつくまえに、食卓の香りに満ちた詩集を。
梅雨もまだ明けていないというのに、真夏のような暑さになる日もある今日この頃、仕事から帰宅するとふだんよりも疲れているような気がします。
とにかく、無理をしないこと、体を冷やしすぎないようにすることを意識して、食事もいつも以上にゆっくりと味わうようにする。
そんな小さなことの積み重ねで、夏をすこやかに乗りこえられるようにしていきたいと考えているのです。
夜、眠るまえに本を読む時間が好きなのですが、体が疲れているせいなのか、この季節は文章を目で追っているとすぐに眠気に誘われてしまいます。
なので最近は、眠る前に読む本として、一編が短めのエッセイか、詩集を選ぶようになりました。
ろうそくの炎を見つめているときのように、心がおだやかになるような一冊を。
そういう気持ちでこの頃よく手に取るのが、長田弘さん
の「食卓一期一会」です。
何年も前に買った本なのですが、この本を手に取ったときのことは今でもよく覚えています。
題名に心を惹かれてそっと棚から抜き出し、目次を眺めただけで、なんとも美味しそうな香りが漂ってきました。
その頃は、詩に対して"なんだか難しそう…"という印象を抱いていて、詩集を買うことがあまりなかったのですが、"この詩集なら楽しく読めそう"と思えたのです。
noteで文章を書くようになってからあらためて読み返すと、上にあげたような一節にふれて、はっとすることが多くなりました。
言葉で自分を表現するって、どういうことなのだろう?
その問いに対する考え方のヒントが、詩の中にちりばめられていると感じられるから、なのでしょうか。
"食べることは生きること"とはよく目にする言葉ですが、詩人もまた、食べものについてうたいながら、"この世界で生きるとはどういうことか"、について語りかけているように思えます。
やさしい語り口のなかに、ふと白刃のひらめきを思わせるような一節が現れるとき、削ぎ落とされた言葉でしか表現できない凄みのようなものも感じるのです。
繰り返し読んで、そのたびに"良いなぁ"と思える詩集が手元にあるというのは、とてもしあわせなこと。
この詩集の単行本が刊行されたのは1987年で、わたしが生まれる前のことなのですよね。
素敵な作品はいつまでも色褪せない魅力を持ち続けるのだ、と思うと、手元にある一冊がより愛おしく感じられます。
疲れていたり、ちょっと落ち込むことがあったりしても、寝しなにこの詩集のページを開き、食卓に満ちる豊かな香りや、言葉に向き合う詩人の真摯な想いにふれると、"今日も良い一日だったなぁ"と思いながら眠りにつくことができるのでした。
最後まで読んで下さり、ありがとうございます。 あなたの毎日が、素敵なものでありますように☺️