気ままなお散歩、出町柳。
夜明け前、新聞を取りにおもてへ出る
澄んだ空気は冷たくて、
空を見上げればくっきりと見える星
"今日はお散歩日和になりそう"
朝ごはんを食べて
掃除や洗濯をすませたら出かけよう
柳の緑に誘われて
目指すは、"出町柳"
電車をおりたら、
まずはパン屋さんへ
柳月堂で
くるみパン
レーズンパン
あんパン
をお買い上げ
丸っこいパンが手さげかばんの中で
揺れるのを感じながら歩く河合橋
出町デルタの飛び石を渡る人を眺めるのが好き
出町橋を渡って右に折れると見えてくる
"COFFEE HOUSE maki"の看板
いつも賑わっているお店だけれど
今日は並ばずに入れてうれしくなる
賀茂街道に面した入口近くの席は
空と川沿いの樹々を眺められる
お気に入りの場所
久しぶりに食べるモーニングセットは
相変わらずの愛らしさ
コーヒーを飲みながら
長田弘さんの「私の好きな孤独」を開けば、
"ひとは一人でコーヒー屋にいって
一杯のコーヒーを飲む時間を一日にもたねばならない"
という一文に行き当たる
ひとりでいることは、寂しいことではない
深くものごとを考えるため
心と素直に向きあうため
ひとりになる時間は大切で
そんな時間には
コーヒーの香りと苦さがよく似合う
maki を後にして、桝形商店街へ
"出町ふたば"の行列を横目に見ながら
向かうのは古本屋さん
日に灼けて色褪せた本の色に
重ねてきた歳月の長さを感じる
黄色い表紙と目が合った
いしいしんじさんの「きんじよ」
"そういえば、いしいさんも京都にお住まいだったな"
ぱらぱらとページをめくると
見覚えのあるお店の名前や地名が目に入る
"これも何かのご縁"
そう思いながら支払いを済ませ
かばんの中に本を入れれば
うれしい重みが肩に加わり
足取りは軽くなる
駅に向かって賀茂大橋を歩くと
目の前には大文字
まだつよい陽射しのもとで
山の緑が濃い色を見せている
橋の上からでも見通せる川の底
きらきらと光る水面を見ながら
"思ったとおりのお散歩日和だったな"
と心の中で声に出した
糺の森にも行こうかと思ったけれど
なんだか贅沢すぎるような気がして
来週の楽しみにとっておこう、と考える
ひとりで気ままに歩く
こんな休日が好き。