お菓子づくり。心の手当て。
なんとなく心がざわざわして、眠れない日があります。
小説でも読もうかなぁ…、と思うのですが長いことばのつらなりが、すんなりと頭の中に入ってこない。
そんなときに決まって手にとるのが、午後さんの「眠れぬ夜はケーキを焼いて」です。
午後さんのイラストやことばにふれると、気持ちがやわらかくほどけていくような感じがします。
お菓子のレシピを参考にするため…というよりは、午後さんの心の動きをなぞりながら、自分の心と向き合うために読むことのほうが多いかもしれません。
過去の悲しかった出来事を思い出して、うろたえる。
自分自身の弱さに落ちこむ。
ひととわかりあえないことに傷つく。
毎日笑っていたいけれど、現実はそうもいかなくて。
午後さんと同じように、気持ちがくもってしまう日は、どうしてもあります。
そんな日に、台所に立ってお菓子をつくると、心に光がさすような気がするのです。
問題が解決するわけでも、心の傷が癒えるわけでもないのですが…、なんというか心の手当てをする感じ。
粉をふるってバターやたまごやお砂糖と混ぜ合わせて。
さっきまでとろんとしていた生地が、オーブンのなかでふくらんでいき、しだいに焼き色がついてきて、部屋の中が甘くて香ばしい香りにみちてくる。
お菓子が焼けていくすがたを見るたびに、魔法を目にしているような不思議な気持ちになります。
本のなかで午後さんが焼きあがったお菓子を口にして、うれしそうな表情をしているのを見ると、わたしも向かい合って座っているような感じがして、思わず"よかったね"って声に出してしまうことも。
うまくいかないことが多くても、とてもおいしいお菓子がつくれるのなら。
まあ、大丈夫だよね。なんとかなるでしょう。
そんなふうに思えます。
今年の夏は、"暑い日にミルフィーユ・レアチーズケーキを作る話"に出てきた、ビスケットケーキを作ろう。
読み返していて、そう考えました。
もちろん、ビスケットはわたしの大好きな、ココナッツサブレを使うのです。