過去への旅「過去の私」
私は催眠にかかりやすいのか、過去の私の体の中にすっぽり入り
完全に、一体化してしまいました。
私の着ていた着物は薄い桃色で、ひどく汚れていました。
足も裸足で、泥だらけ、傷だらけでした。
セラピストの問いかけで、私がどんな人物か、だんだんわかってきました。
過去の私は、戦国時代の城主の娘で、名前を「ゆき」と言いました。
私の着物が汚れていて、なぜ裸足だったのか…。
それがわかる所まで、時間を巻き戻していきました。
戦になり、私は数名の侍女と城を出て逃げました。
逃げているうちに、侍女が一人ずついなくなりました。
彼女たちは、私をかばって敵に打たれたのです。
そして、城が見える山まで来た時、
城も村も、炎に包まれているのが見えました。
私と残った侍女は、森の中を必死で走って逃げました。
敵は、森の中までしつこく追ってきます。
最後まで供をしてくれた侍女も、いなくなってしまいました。
一人になった私は、それでも、森の中を奥へ奥へと逃げて行きました。
私を追ってくる、馬のいななきと大きな足音、地響きが迫ってきます。
私は重い足を引きずりながら、髪を振り乱し
手は助けを求めるように虚空を掴み、必死で走りました。
その時でした。
背中に鋭い痛みを感じました。
私は振り返りました。
馬上の武士は、私の愛する人だったのです。
薄暗い森の中でしたが、兜の下に見えていた顔は
まぎれもなく、その人でした。
その人は、これまで私が見たことのないような冷たく、
とても恐ろしい顔をしていました。
その顔を見ながら、私は草むらに倒れこみました。
そして、しだいに息ができなくなり…。
私は深い森の中で、死んでしまいました…。
また次回へ、つづきます。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
💗感謝💗 天海瑠璃