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【読書ノート】『ある男』

『ある男』
平野啓一郎著


故郷に戻ったシングルマザーの里枝が、林業をやっている谷口大祐と再婚する。新たに娘も生まれて平和な日々を送っていたある日大祐が事故で亡くなった。大祐の兄がお焼香に現れて、遺影の男は、谷口大祐ではなく、謎の男“X”として、物語が始まる。

「X」という正体不明の男は、複数の名前を持ち、戸籍交換を繰り返し他人に成り代わって生きてきた。彼は父の犯罪により「小林」姓を捨て、母側の「原」姓を名乗り始めたが、その過去から逃れることはできず。そして、自らの名前を捨て、新たな人生を歩む決意をした。

物語の主題は何か?
ラベルやスティグマに縛られることなく、個々の人間として尊重すべきだというメッセージなのだと理解した。

自分のIDというと、免許証、マイナンバーカード、パスポートとか、いろいろあると思うのだけど、いずれも、物理的には偽装が可能なわけで、自分が、自分であるということを証明することもけっこう難しいのかもしれないと思った。逆に、そういったIDや戸籍に誤りがあったりしたら、戸籍上存在しないはずの人間ができたりするのだろうなあ。そういう意味では、日常的な関係性の中で、はじめて自分が存在していることを確認することができるということなのかもしれない。

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