【読書ノート】『泥濘』(『檸檬』より)
『泥濘』(『檸檬』より)
梶井基次郎著
主人公の奎吉は、実家から送られてきた為替を現金に替えるため、雪の中、本郷に向かうところから、物語は始まる。
本郷への道のりは、泥の沼にでもはまっているかのようで、嫌な妄想が不意に「自分」の頭を擡もたげてくる。そして、妄想は「自分」を弱く惨みじめにする。
泥濘(でいねい)とは?
雨や雪解けなどで地面がぬかっている状態を指す。人生の困難や苦悩、精神的な停滞や混乱を表しているのだと理解した。人が障害や試練に直面した時、そしてそれらを乗り越える過程の中で自分を見失ってしまうような状況なのだということ。
物語の主題は何か?
人が自己実現や成長を目指す道のりは、しばしば予期せぬ障害や困難によって遮られてしまうのだけど、そんな時、当然、「自分」としては、目標に向かって歩いているつもりになっているのだけど、自分に見えたものは、自分の影が、困難にもがいている姿だった。
そんなことに気づいた時というか、客観的に自分をみることが出来た時、人生の困難から解放されていくことを感じとったのだと理解した。
梶井基次郎は、人の心の奥深い部分を繊細に描き出し、考えさせられる。