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【読書ノート】『いちご畑が永遠につづいてゆくのだから』(『愛の夢とか』より)
『いちご畑が永遠につづいてゆくのだから』(『愛の夢とか』より)
川上未映子著
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小説というよりも、詩のような印象を受けた。パラグラフごとに、一つの単語から、マインドマップ的に言葉が、広がって、こだましていく。
一言で言うと、恋愛の終わりを迎えるこころの動きが、ポツンポツンと語られている。
そもそもすべてが、キーワードで構成されている物語なのだけど、いくつか印象的な言葉を上げてみる。
①タイトルに入っている「いちご畑」とは何を象徴しているか?
いちご畑は、生命のサイクル、再生、成長、そして自然の豊かさを象徴する。また、一生懸命働き、成果を享受する、つまり「果実を収穫する」ことの喜びや満足感を表すメタファーとして使われる。
②冷蔵庫
時間と不可逆性: 冷蔵庫は食品の劣化や腐敗のプロセスを遅らせることで、時間の不可逆性や劣化への試みや抵抗の象徴となる。
③寝室
寝室はプライバシーと自己瞑想の場所で、自己認識と内省のための空間。それは内面世界の象徴であり、安全性と安心感を提供し、日々の生活からの避難所となる。ります。また、寝室は無意識と夢との接点であり、無意識の世界への入り口とも言える。
④夜の底
暗い状況や困難な経験を表し、人間の苦悩や孤独、絶望を指すメタファー。"夜の底"を通じて成長や覚醒が可能であり、新たな理解や啓示を得ることができるとも言われます。
⑤「いちごをつぶす」ことは?
「物事はいつも変わっていく」ということを受け入れること。
キーワードから、見えてくること。
同棲していたカップルに破局が訪れる。こころが、離れてしまった彼との生活の辛さ。修復を試みるも、距離は、一方的に、どんどん離れてしまう。そして、最後は、その変化を受け入れざるを得なくなる。
主題は何か?
生きている限り、出逢いと別れの連続なわけで、時間の経過と共にすべての物事は変化していくということ。儚さの中に、希望があったりして、その繰り返しが、生きること、愛することということだと理解した。
stella jang