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【読書ノート】『太陽の座る場所』

『太陽の座る場所』
辻村深月著


地方のある高校の同窓生の物語。
有名な女優(キヨウコ)が同窓生にいるので、同窓会(クラス会)の幹事は毎年のように、同窓会を開く。

高校時代を振り返りながら、生徒一人ひとりが、自分の物語を語って行く。

天照大神が岩戸に隠れる物語に少し引っ掛けている当たりも興味を惹かれた。

ビデオも見たのだけど、なかなかわかりにくかった背景が、小説では、細かく書かれていて、いろいらふに落ちたと思った。

キーワードを挙げてみる。

①「太陽が座る」
1. 太陽は多くの文化において中心的な存在とされ、宇宙の中での安定した力を象徴する。太陽が座ることは、存在の中心にある普遍的な真理や価値観を示唆しているとも考えられる。

2. 太陽は生命の源であり、光とエネルギーを提供する。この観点から、太陽が座ることは、知識や真理の源泉を象徴し、個々の存在がどのようにして成り立っているか、または成長していくかを探求することを指す。

3. 太陽の動きは時間の流れを示し、日々の変化を象徴する。この変化が人間の存在や経験にどのように影響するか、または変化の中での恒常性の探求を考えるきっかけとなる。

4. 太陽は内なる光や自己認識の象徴でもある。太陽が座ることは、自己の本質や真実を見つめ直し、内面的な成長や悟りを求める過程を示唆する。

②岩戸に隠れるアマテラス神話
1. 自己の内面と向き合うことを象徴する。外部の世界との関係に疲れ、自己を見つめ直す必要性を感じること。

2. 社会が直面する孤独や疎外感、またはリーダーシップの欠如を反映している。この状況は、人々にとっての真実や光の欠如を意味する。

3. 隠れることは、世界のバランスが崩れた状態を象徴する。天照大神が岩戸に隠れることで、自然界や人間社会における調和が失われ、暗闇が広がる。このことは、調和の重要性や、光と闇の相互作用、そしてそれらのバランスを保つことの必要性を示唆する。

4. 岩戸からの再登場は、再生の象徴となる。苦難や困難な状況からの復活、成長の過程を示し、暗闇から光への移行が人間の経験においてどれほど重要であるかを示す。

物語の主題は何か?
社会の中で、一人ひとりに役割が与えられる。主役を演じるひとがいれば、脇役を演じるひともいる。

ひとが集まればどうしても、序列のようなものができてしまう。
響子は、クラスの中では、太陽のような存在で、いわゆる、主役を担うべきもの。響子中心で保たれていた平和が、もう一人のキヨウコの登場によって、響子という太陽は陰る。そして、政権が崩壊するように、響子を頂点とした序列は崩れる。

何故にあっけなく、体制が崩れてしまうのか?
コンプレックスによって、自滅してしまうということなのだと理解した。

太陽が頂点で居続けることは、許されないわけで、夜は、月に役割を渡して、穏やかな時間を、迎えることが大切なのだと思った。

そうはいっても、登場人物は、それぞれが、主役の世界で太陽として、人生を演じているわけで、それぞれが抱える栄枯盛衰が面白いと思った。

登場人物の心理描写が巧みで面白い。

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