『大きな翼を持った老人』(『エレンディラ』より)
『大きな翼を持った老人』(『エレンディラ』より)
ガルシア・マルケス著
本作品は、短編小説集『エレンディラ』に収録されている。
一言で、言うと、海岸で衰弱した老人を見つける。その老人には、翼が付いていて、墜落した天使として、鶏小屋に入れられてしまう。次期に墜落した天使は、翼を入れ替えて、飛び立っていくと言う話。
よくわからない話なので、キーワードを探って見る。
①『堕落した天使』
:キリスト教の伝統では、悪魔(サタン)はかつては天使であり、天使の指導者であるルシファーとして知られていた。しかし、自身が神よりも優れているとの誤った自尊心から神に対して反乱を起こし、その結果、天国から追放された。これが「堕落した天使」の原型。本書では、正体不明の翼を持った老人にすぎない。
②『蜘蛛に変えられた女性の物語』
:ギリシャ神話のアラクネの物語。
アラクネは、織り物の技術に優れていたのだけど、自分の技術を自慢しすぎて、蜘蛛に変えられてしまった。という物語。本書では、両親の言いつけを守らなかったから、神様に蜘蛛に変えられてしまったことになっている。
③『(墜落した天使は、)結局、茄子の入ったパン粥しか食べなかった』
* 謙虚さとシンプルさ:パン粥は一見貧弱に見えるかもしれないけれど、それは謙虚さやシンプルさへの賛美
* サステイナビリティ:無駄を避け、資源を尊重し、全てのものが価値を持つという視点。
* 多様性と包容性:違うものを受け入れて包含することで、全体としての価値が高まるという多様性と包容性を表す。
* 創造性:茄子が入ったパン粥は、創造性を奨励し、既存の枠にとらわれない柔軟な思考を促す。
ここから見えてきたこと。
翼を持った老人と蜘蛛に変えられてしまった女という、不思議な存在に対して、老人は、無視され、女は社会に受け入れられる。
その違いは何か?ということなのかと思った。
蜘蛛にされた女には、人々が、理解できるストーリーがあった。これに対して、老人に翼があることには、ストーリーが、見えてこない。
人間は、自分の理解を超えたものを受け入れることが、できないということなのかも知れない。
墜落した天使は、本当に天使だったのかも知れないのだけどね。天使は密かに、翼を手入れして、逃げていった。
信仰を持つということは、難しいことなのかも知れない。日々の物語りに翻弄されて、天使の存在、悪魔の存在、神の存在を見失ってしまう。
まあ、不思議な物語だなあというのが、正直な感想だ。
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